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- 日本経済の中期見通し -深刻な調整局面からの脱却を目指して
1994年03月01日
<要旨>
○不確定要素は多いが、以下は日本経済の今後の中期的動向について、一つの十分ありうるシナリオとして提示するものである。
- 日本経済は大規模なストック調整、バブル崩壊下のバランスシー卜悪化問題等を背景に、91年5月より景気後退が続いており、深刻な状況にある。景気後退の長さは戦後最長、実質GDO成長率も93年度▲0.4%と戦後最低と、戦後でもっとも厳しい状況となる恐れが強い。
- 潜在成長率は、95~2000年度は年率2.7%、2000~2005年度は同2.3%、2005~2010年度は同2.1%-と試算される。(1)人口高齢化に伴う労働力人口のピークアウト、(2)高齢化による貯蓄率の低下・資本蓄積率の鈍化-から潜在成長率は趨勢的に低下するものの、90年代後半に急激に鈍化する状況にはない。当面のポイントは、「潜在成長カの問題ではなく、民間部門の調整が進展して、どのように需要が回復するか」にある。
- 問題は、(1)過剰設備ストックを抱え、資本効率・収益率の低下が顕著、(2)資産価格下落、過剰投資に起因するバランスシート悪化問題から金融機関・企業のリスク許容度が低下し、貸出、投資が抑制的、(3)アジア諸国の追い上げ、米国の再生等の中、日本の対外競争力が相対的に後退-等であり、これらが成長制約要因となろう。
- こうした情勢の中、経済政策は景気の現状が厳しく、雇用調整圧力の増加も予想されるため、当面、景気支持的スタンスを持続する必要がある。財政政策は、(1)94年度から6兆円の所得税・住民税減税実施、(2)消費税率は景気回復定着が予想される97年度に3%引き上げ(3%→6%、ほぼ減税額相当)、(3)公共投資はその97年度に高めの伸び(430兆円の公共投資基本計画は100兆円上積み)-と想定した。金融政策は景気の弱さ、バランスシー卜問題の中、基調的には緩和スタンスが維持されよう。公定歩合は93年度末までに1.25%に引き下げ後、96年度に1.75%、98年度に2.25%に引き上げられるとの想定を行った。
- 景気は、(1)減税による消費拡大、(2)ストック調整進展等による設備投資のマイナス幅縮小、(3)公共投資による景気下支え-から95年度に底入れし、その後、緩慢な回復傾向をたどろう。2000年度頃には潜在成長率並みの2%台後半となろう。5年間平均の実質成長率としては、90年代前半は0.9%と戦後の統計開始来、最低であり、90年代後半も、設備投資・消費が弱い中で、外需が減少することから、2.4%とそれに次ぐ低さとなろう。労働需給は緩和傾向で失業率は4%程度まで上昇しよう。賃金上昇率は低水準で、物価も安定傾向となろう。対外黒字はドルベースで実額、名目GDP比とも、やや低下しよう。
○民間部門はリストラ・体質強化の努力、政府部門は高齢化社会に備えた年金制度改革・行政改革・税制改革、社会資本整備計画の見直し等の長期ビジョンの検討と確立が望まれる。
(1994年03月01日「調査月報」)
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