1993年07月01日

1.2%成長、年度下期に景気底入れへ -1993年度改定経済見通し-

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<要旨>

以下は、「93年度改定経済見通し(3月10日発表)」について、その後、策定された新総合経済対策等も考慮し、見直しを行ったものである。


I.海外経済

  1. 米国経済は93年上期に、(1)悪天候等の特殊要因、(2)外需の弱さ-から成長率がやや鈍化しているが、基調的には金融緩和効果等を背景に拡大局面が続いている。景気底入れ(谷:91年3月)の後、2年経過したものの、回復ペースの弱さから設備稼働率・住宅投資等のレベルは低く、依然、拡大の初期局面にある。このため、景気の自律的、循環的側面からは住宅投資、設備投資中心に拡大が続こう。クリントン政権の政策に関しては修正が迫られており、支持率・信任も低下してきている。(1)短期的な景気刺激策は失業保険給付の延長分を除いてほぼゼロに圧縮、(2)設備投資減税も規模が大幅縮小、(3)増税は10-12月期から実施-とみられ、93年への影響はほぼゼロ(▲0.1%)となろう。実質成長率は92年2.1%が93年2.7%(前回予測3.0%)と予測される。なお、94会計年度以降の歳出削減や増税案等にも修正の可能性は残るが、ほぼ予算教書通りの赤字削減措置がとられれば、クリントノミクスは94年の実質GDPに対して▲0.7%程度のデフレ効果を持つことになろう。
  2. 欧州では景気の跛行性が目立ってきている。ドイツ(旧西独)は深刻な景気後退局面にある。住宅不足等から建設投資は底堅いが、高金利・ストック調整等を背景に設備投資は不振であり、マルク高等から輸出も落ち込みが避けられない。景気低迷は続き、実質成長率は92年1.1%が93年▲2.4%(前回予測▲1.3%)と11年振りのマイナスとなろう。一方、英国は金融緩和の効果等から92年4-6月期に底入れし、緩やかな回復過程にある。住宅マーケットの底入れ、失業率の頭打ち等を背景とした消費者マインド改善による民間消費拡大、金利低下等による固定投資増加-から、実質成長率は91年▲2.1%、92年▲0.6%が93年1.8%(前回予測1.2%)と3年振りのプラスに転じよう。
  3. 原油価格は、世界景気の回復力が弱い中、OPECが枠を上回る生産を実施していることから、弱含み傾向にある。日本の通関入着価格(バレル当たり)は92年度19.3ドルが93年度18.5ドル(前回予測20.3ドル)となろう。

II.日本経済

  1. 超短期予測(5月18日付け)によれば、実質GNP成長率は、(1)93年1-3月期は前期比0.3%、(2)92年度全体では0.8%(前回予測0.9%)と第一次石油危機時の74年度(▲O.2%)以来の低成長-に終わったと推定される。
  2. 93年1-3月期の景気指標に改善を示すものが増えたこと等から、「景気底入れ」論議が盛んである。指標好転には、累積的利下げと昨年度の総合経済対策(事業規模10.7兆円)の効果等の傾向的な面もあるが、年度末決算をにらんだ一時的・特殊要因による面も強い。1-3月期に「景気底入れ(=谷)」となったとはみられない。
  3. 今後の景気に関しては、(1)設備投資、雇用面でのリストラによる縮小均衡圧力の持続、(2)円高進行による輸出面を通じた景気下押し圧力の増加-のマイナス要因はあるが、他方で、(1)政策効果(92年度までの累積的利下げと総合経済対策、さらに4月に策定された新総合経済対策)、(2)バブル崩壊の影響の緩和(直近の株価は92年度平均の17189円より高め、地価の下落テンポに縮小傾向の兆し)、(3)在庫調整の進展-のプラス要因もあることから、弱々しいながらも93年度下期には「景気底入れ」となろう。ただし、「景気底入れ」とその後の回復をより着実なものとするため、一層の追加対策が望まれる。当予測では、(1)年末の所得税減税2兆円、(2)上期末までの第7次利下げ0.5%-を想定した。追加対策は93年度の実質GNPを0.3%押し上げる効果を持とう。
    追加対策を織り込んでも、93年度の実質成長率は1.2%(前回予測1.5%)と92年度に続き低成長にとどまろう。ただし、内容的には、(1)年度内成長率(年度ベースの成長率のうち、いわゆるゲタ以外)が92年度の▲O.3%から93年度は1.0%に上昇、(2)実質GNPの半期ベースの前期比年率成長率は92年度下期ゼロから93年度下期2%に上昇、(3)国内民間需要が93年度下期に4半期振りに前期比プラスに転換-と景気回復への「底固め」と位置づけしうる年となろう。
    なお、93年度実質成長率の下方修正(▲O.3%)は、新総合経済対策の効果は予想以上であったが、景気実勢の弱さと円高進展によるデフレ効果を考慮したもの。
  4. 経常収支黒字は、(1)円高等を背景とした輸出価格上昇による輸出の高めの伸び、(2)国内需要低成長による輸入の低迷、(3)投資収益収支の黒字幅拡大等による貿易外収支の黒字転換-から、92年度1261億ドル(名目GNP比3.3%)が93年度1590億ドル(同3.6%:前回予測1350億ドル、3.3%)となろう。為替相場は日本の高水準の対外黒字を背景に円高基調が続き、92年度平均125円が93年度平均110円(前回予測116円)と見込んだ。

今後の懸念要因としては、国内景気の弱さ・雇用情勢の悪化傾向、並びに米国の最近の管理貿易的な動きがある。追加景気対策とガット・ウルグアイ・ラウンド推進に向けた積極貢献が望まれる。

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