1993年02月01日

経済の動き

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<米国経済>

92年7~9月期の実質GDP(確定値)は個人消費が前期(ゼロ成長)の反動から増加に転じたことを主因として、前期比年率3.4%と14四半期振りに3%を超える伸びとなった。直近の月次指標をみても改善を示すものが増えており、景気は緩やかな回復基調にある。なお、12月22日にNBER(全米経済研究所)は「90年7月から始まった今回の景気後退は91年3月に終了した」と正式に宣言した。これは92年7から9月期の実質GDPがリセッション前のピーク(90年4~6月期)を超えたことにより、景気の波はひと区切りついたとの判断による。

生産関係の月次指標をみると、11月の鉱工業生産は前月比0.4%と2カ月連続で増加した。ただし、(1)稼働率が依然として80%を下回ること、(2)設備投資の先行指標の一つとされる耐久財新規受注が11月に前月比▲1.9%となったこと―を勘案すると、生産増が設備投資増加につながるにはなお時間がかかるとみられる。今後、2月中旬頃までに発表が予怨される一般・予算両教書の内容、特に投資減税の内容・規模が注目されよう。家計部門の指標では、11月の実質消費支出は前月比0.3%増となった。11月の小売売上高をみても、同0.4%増と消費は増加基調にある。個人所得・消費については、9~11月にかけて、台風や農業補助金等の一時的要因が重なり、数字の振れが大きかったものの、所得は基調として増加している。また、11~12月にかけて消費者センチメントが大幅に改善しており、今後の消費動向にプラスの効果をもたらすと予想される。ただし、11月の貯蓄率は4.2%と2年ぶりの低水準にあり、雇用・所得水準の改善テンポも弱いことから、依然として力強い消費拡大は見込みにくい。

住宅関連の指標については、11月の着工件数は1.5%増となった。新規一戸建販売件数は2カ月連続でマイナスとなる一方、中古一戸建住宅販売は同5.8%増と大幅な伸びとなっている。新規が不振の中、最近までの長期金利低下を受けて、中古住宅の回復が明確になっている。

物価動向については、11月の消費者物価は総合で前月比0.2%(エネルギーと食料品を除くコア部分も同0.3%)と低い伸びにとどまっている。景気が持続的に潜在成長率を上回って推移することが難しいと予想されることから、今後も物価は安定的に推移しよう。

金融政策については、(1)足もとの景気が着実な回復基調にあること、(2)マネーサプライ、消費者信用残高、商業銀行の対商工業向け貸出等、金融関連の指標のなかにもわずかではあるが増加に転じたものがある等―から、一段の金融緩和の可能性は低下している。金融政策は当面、現状横這いで推移しよう。



<日本経済>

日本経済では、先の総合経済対策による公共投資の増加、ならびに外需面の増加はみられるものの、需要項目の大半を占める消費と設備投資の不振は予想を上回り、依然として景気の底入れが確認できない状況にある。

企業収益面をみても、最近公表された92年7-9月期の法人企業統計季報では、全産業の売上高は前年同期比▲2.0%の減少、経常利益は同▲24.1%の減少となり、2四半期連続の減収減益(減益は9四半期連続)となった。特に、今回は、非製造業にまで売上の不振が及び、34年振りの減収減益(売上高は同▲0.7%、経常利益は同▲14.6%)となっている。

生産面でも、減産が続くにもかかわらず、在庫調整の進展は非常に緩慢である。92年7-9月期の鉱工業生産は前期比0.3%とわずかにプラスに転じたが、10、11月は、前月比▲2.9%、同▲1.9%と2カ月連続の減少となり、12月の製造工業生産予測指数も同▲0.1%の低下がみこまれている。一方で、11月の製品在庫指数は、同0.8%増、製品在庫率指数も同4.0%と増加した。在庫の内訳では、高水準にあった耐久消費財でやや低下がみられるが、調整が進んでいた建設財をはじめ資本財や生産財と各方面で積み上がりがみられた。

主な需要項目に関して足もとの月次指標をみると、個人消費関連指標は、依然弱含みの推移をしている。10月の家計調査では、実質消費支出(全世帯)が前年同月比▲0.8%と減少した。形態別には、尉久財(実質)の減少幅が縮小(同▲6.4%)し、商品(同)への支出が同1.0%と増加した一方で、サービス支出(同▲4.0%)がマイナスに転じている。大型小売店販売(店舗調整済)は、11月は同▲3.2%、92年6月以降6か月連続で減少している。

雇用・所得面では、有効求人倍率が10月(0.96倍)に引き続き11月も0.93倍と前月比マイナス。11月の所定外労働時間指数(事業所規模30人以上、調査計)でも前年同月比▲18.1%と依然二桁のマイナスが続いている。同月の雇用者数も同2.6%増賃金指数(現金給与総額、事業所規模30人以上)は同1.0%と伸び幅が一段と縮小した。

次に、設備投資の動向をみると、先行指標の機械受注(船舶・電力を徐く民需)は、中間決算対策の影響もあり、8、9月と増加したが、10月には前年同月比▲30.7%と大幅な落ち込みとなった。11月の民間建設受注(大手50社)も同▲9.0%減とマイナスが続いている。

住宅投資については先行的に回復を示していたが、新設住宅着工戸数をみると、9月以降、年率換算140万戸(季調値)前後でやや一服した推移となっている(11月同141.1万戸)。

最後に最近の金融情勢をみると、長短金利とも利下げ予想が一進一退する中、やや低下基調の推移となってきている。11月のマネーサプライは、9月以降3カ月連続で前年水準を下回った(前年同月比▲0.5%)。



<ドイツ経済>

西独では、高金利による内需の低迷にマルク高・EMSの混乱による外需の不振が重なり景気は急速に悪化している。92年7-9月期の実質GNP成長率は前期比▲1.3%と前期(同▲0.2%)に引き続きマイナス成長となった。また7-9月期の雇用者数も約9年振りに2四半期連続の減少となった。物価面では、生産者物価は引き続き落ち着いた動きをしているものの、消費者物価はサービス関連を中心に高い伸びが続いている。特に9月以降は前年同月比でみて3%台後半の推移が続いており、同2%台を目指すドイツ連銀にとって不満足な水準にある。ドイツ連銀は12月10日の理事会で、93年のマネー・サプライ(M3)目標増加率(92年10-12月期から年率伸び率)を4.5%-6.5%と決定した。これは92年の目標(3.5%-5.5%)を1%ポイント上回っているものの、前提条件(ドイツ全体の潜在成長力:3%、目標インフレ率:2%、通貨流通速度の鈍化率:1%)を考慮すると、ややきつめの目標といえよう。国際収支については、世界景気の不振から輸出は伸び悩んでいるものの、内需の低迷から輸入も鈍化しているため、貿易収支、経常収支ともにやや改善しつつある。



<イギリス経済>

イギリスでは、90年末からの景気後退局面が続いている。足もとの生産、消費関連の指標をみると、これまでの減少傾向から脱しつつあるものの、依然まだら模様の展開となっている。CBI(英産業連盟)の景気動向調査も悪化傾向が続いている。物価面についてみると、小売物価上昇率はこれまでの需要の低迷を背景に落ち着いた推移が続いている。特に9月以降は政府のインフレ率のターゲット(小売物価から「モーゲージ金利支払い」項目を除いた「コア部分」で年率1%~4%)内に収まっている。ただ、生産者投入物価をみると、9月以降のポンド安の影響から上昇率が高まりつつあり、小売物価への今後の影響が懸念される。国際収支にいては、輸出を上回るテンポでの輸入の増加により、貿易収支、経常収支ともに赤字傾向が続いている。9月以降のポンド安の影響から、輸入価格が大幅に上昇していることも輸入拡大の要因となっている模様。

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