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■見出し
はじめに――カナダ建国125周年に
1.カナダ移民動向概観
2.移民政策の変遷
3.現行移民制度
4.カナダ移民の特徴
おわりに
■はじめに――カナダ建国125周年に
カナダはこの7月、建国125周年(1867年の連邦結成から起算)を迎えた。その記念すべき年に、カナダの特色を示す二つの事柄が新聞の一面を飾った。
まず、'91年国勢調査速報がまとめられ、40年振りにカナダの人口が増加に転じたと発表されたことである。人口増加と国家発展、この問題はカナダ建国当初からの中心的課題であったし、今も人々の大きな関心事となっていることに変わりはない。その一つの解決策として、積極的な移民受入れ政策が採られてきたことは、国内外でも広く知られ、カナダのイメージの一部にもなっている。
そしてもう一つは、そうした移民で成り立つ国カナダが、今直面している課題の一端を示す事件である。去る4月29日、アメリカ・ロサンジェルスで起きた黒人暴動は、日本においても各種マスメディアを通して目の当たりにするところとなったため、多くの人々にとって記憶に新しいところであろう。しかし同様の暴動が、5日後の5月4日夜、カナダ・トロントにも飛火したことは、あまり知られていないようである。この暴動は、人種差別に抗議する黒人の整然たるデモから発展し、市内目抜き通り商店街のガラスが割られたり、一部商品が持ち去られたりする騒ぎが、約5時間続いたものである。騒ぎは、警官37人負傷、30人の逮捕者を出して鎮圧された。ロスでの一件に比し、その規模自体は小さかったものの、人種差別問題が米国ほど顕在化していないカナダでの暴動だけに、カナダ人に与えた衝撃は非常に大きいものとなっている。今回の事件の背景については、米国・カナダという世界有数の移民大国社会に深く広く横たわっている歪みが、長引くリセッションの中で暴発したとみることもできる。
カナダは、もともと移民によってできた国であり、カナダ国民は極めて多様な民族集団によって構成されている。(政府が公認している民族集団だけでも34種あり、実際にはその数100種を超えている。)カナダが多民族国家であるということは、カナダの社会や文化を語る場合には避けて通ることのできない基本的な性格であり、カナダを構成する民族の多様性とそのありかたこそが、カナダを特色づけている条件なのである。けれどもこうしたカナタ社会の民族的多様性は、一挙に出来上がったものではなく、17世紀の初頭から始まるヨーロッパからの移民を中心にして次第に作りあげられてきたものである。
そこで、建国125周年というカナダの節目の年にあたり、移民の国としてのイメージは強いもののその実情はあまり知られていないカナダ移民事情の一端を、以下紹介してみたい。
(1992年07月01日「調査月報」)
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