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- 金融環境の変化と企業資金調達
1991年10月01日
<要旨>
- 1990年の株価の大幅な下落は企業のエクィティーファイナンスを困難にし、金融機関からの借入依存を高めている。このような企業金融の変化は一時的なものなのだろうか。
- 日本の株式市場の最大の特色は、利益の伸び以上に株価が上昇し、株式投資の収益率が非常に高く、かつ安定的だったことである。この要因は、金融機関を中心とする安定的な株式保有構造と配当性向の傾向的な低下に求められるところが大きい。エクィティーファイナンスのコストが安く見えたのも、この安定的な保有構造と関連している。
- 株式の安定的な保有構造は揺らいでいる。たとえば銀行は、株価の下落による含み益の減少にともない、BISの自己資本比率規制の達成が厳しい状況になっている。また将来の企業の資金需要を十分に満たせるかどうかも微妙である。この結果、収益率の低い株式の保有を限定する動きが表面化する可能性がある。
損保の株式保有占率は規制上の上限に達しており、新規投資が困難である。
生保もまた続制上の上限に接近している。さらに生命保険契約に対する安定的な付利水準を勘案すると、理論的にも現在の株式保有は過大であると考えられる。 - 株式の安定的な保有構造が崩れると、利益の伸びよりも株価の上昇が低くなるという、従来と逆の株価形成が一つの帰結となる。もちろん、安定的な保有構造が急速に崩れるとは考え難い。しかし、もしもエクィティーファイナンスが従来の規模で行われるとすれば、構造変化の速度は早まるだろう。企業としては、エクィティーファイナンス以外の多様な資金調達手段を積極的に求めて行く必要性に迫られている。それは資金調達コストの認識を新たにする必要性でもある。同時に、投資家や発行仲介者も資金コストに対する認識を新たにする必要があろう。
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川北 英隆
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