1991年07月01日

最低価値保証付き資産配分法 ― ダイナミック・アセット・アロケーションの展開 ―

矢島 邦昭

広瀬 毅彦

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<要旨>

  1. 株価下落による損失をコントロールしながら、株価の上昇にも追随する運用方法は最低価値保証付き資産配分法と呼ばれる。今回こうした分類に属するTIPP、CPPIおよびOBPI運用のメカニズムを示し、シミュレーション分析を試みた。
  2. これらの運用手法の大きな違いは、守るべきポートフォリオの価値を表すフ口アーの水準・形状で示される。すなわち、TIPPのフ口アーは、ポートフォリオの過去最高水準に依存して設定される。CPPIのフ口アーは、期初に決めたある価値水準が安全利子率で増大するものとして設定され、ポートフォリオの価値の上昇下落に関係なく時間の経過につれて増大する。これに対して、OBPIのフロアー水準は、運用期間を通して初期投資額の一定割合に固定されている。
  3. 株価変化の特徴的なケースを3期間設定し、日経平均株価指数先物と短期金融資産を用いて上記運用手法のシミュレーション分析を行った。その3期間は、株価単調上昇期間、株価が上昇後下落した期間、そして株価下落期間である。
    株価上昇期における追随性では、OBPIとCPPIが優れ、両者は同程度のパフォーマンスとなっている。一方、TIPPの追随性は劣っている。前半で株価が上昇しその後下落た場合では、TIPPのパフォーマンスは優れている。そしてCPPIとOBPIでは、期初に想定されたフ口アー水準近傍のパフォーマンスとなっている。スター卜から株価が下落した期間では、各手法でのパフォーマンスは期初に想定される各々のフロアー水準の近傍となった。
  4. '90年初のようにボラティリティ(変動性)を増しながら株価が下落する局面では、オプションを使用するOBPI運用は期初に想定した損失水準以下になる、いわゆるフロアー割れとなる。これに対してTIPP及びCPPIでは、こうした問題点が少なく、想定フロアーをほぼ守れている。このことはTIPPとCPPIは株価の下落リスクをコントロールするには適した運用方法であると言えよう。
  5. これらの運用方法は、先物の売買執行が常に可能であることを前提としている。しかし、実際にはストップ高・安などで売買不能の日もあることからその影響について検討を行った。その結果、少なくとも日経平均株価指数先物が上場開始された以降においては、その影響は小さかった。
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