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■目次
1.わが国産業をとりまく環境変化
2.原油高の産業企業への影響
3.金融引き締めのインパクト
4.逆風下の不動産業界
5.経営環境が悪化したノンバンク
6.業種別の動向
■要旨
わが国経済は現在もなお内需主導による拡大を続けているものの、金利上昇、原油高騰など産業をとりまく環境が急速に変化しつつある。
このうち原油価絡の高騰は、現状の価格を円ベースに換算し物価水準で実質化すると、過去2度の石油危機当時よりも相当に低い水準となっている。また産業企業の石油消費原単位の低下もあって、現状近辺にとどまる限り全体的にみれば直接的な影響はさほど大きくない。
しかし金利上昇(金融引締め)の産業に及ぼす影響はかなり大きなものとなろう。これまでの長期にわたる金融緩和期に、中小企業と非製造業大企業は積極的に有利子負債を増加させて事業拡大を図ってきたが、今回の金融引締めにより、資金的余裕度を急速に低下させている。製造業大企業はこれまでの資本市場からの調達により借入金を純減させており、全体的に資金的余裕度が高いが、繊維・紙パルプ・窯業・石油精製などの資金的余裕度が潤沢ではない産業では資金面から設備投資に慎重姿勢が生じてこよう。また収益面でも、支払利息のほか人件費、減価償却費等の固定費増加が売上が伸び悩む中で収益圧迫要因となってきており、サービス業・電力・海運などの業種の収益を悪化させよう。
不動産業界は、金利上昇の収益圧迫に加え、融資規制と株安が特に中小不動産会社に資金繰りの逼迫をもたらしている。'90年初からの中古マンション価格の下落は近畿圏から今後首都圏に波及する可能性があり、新規マンションの販売率は低下しよう。また、地価の沈静化傾向は'91年も都心商業地を除いて続き、特に実需以上に上げ足の早かった地域で下落に向かうと思われる。このため、財務体質の脆弱な中小不動産会社にとっては厳しい環境となろう。
信販・リースなどのノンバンクも金融環境の激変に揺れている。急激な資金コストの上昇と資金の量的確保難により取扱高や収益拡大に急ブレーキがかかりつつある。今後は大幅減益が予想される他、業態によっては不動産や担保価値の下落による影響が懸念される。
一方、建設・造船・大型小売・レジャーは引き続き好調が予想され、全般的にも年度後半以降は再び環境好転に向かうものと思われるが、上記のような金敏・不動産関連の非製造業、素材産業および借入金の多い中小企業の不振により、全体的に企業業績の伸びは大幅に鈍化しよう。
(1991年03月01日「調査月報」)
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