1990年03月01日

戒厳令後の中国-膨張する内外債務とその財政負担-

柳田 幸男

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■見出し

はじめに
1.膨れ上がる内外債務
2.財政赤字脱却を目指して
3.財政支援の役割が期待される生命保険事業

■はじめに

昨年5月20日以来、約8ヵ月間に亘り施行されていた中国・北京市中心部の戒厳令は今年1月11日付けで解徐された。戒厳令解除を自ら発表した李鵬首相は、「首都及び全国の情勢が安定し、社会秩序が回復した」旨を強調したが、これに対する日本・西側諸国の見方は、戒厳令解除を切り札として昨年6月の天安門事件以来冷え切っていた西側諸国との外交関係の回復および長期に及ぶ対中制裁により深刻化した経済的ダメージの修復をはかるものとするのが一般的である。中国の現状は天安門事件以降の観光業の落ちこみやさらに強化された保守的な経済引き締め策の行過ぎにより、雇用、生産、建設等国内経済の各側面で失速状態に陥っている。中国政府はこのような苦境を打開する有効かつ速効性のある手段として、各種社会資本整備に欠かせない世界銀行融資や日本の第三次円借款(8,100億円、'90~95年度)など西側の公的資金協力を強く求めており、加えてこれら公的資金に追随して投下されるであろう海外民間資本を期待している。党・政府・軍部中枢内での権力闘争がいまだに囁かれ、東欧の民主化の動きに対して固いガードを執るべき内憂外患のこの時期に、戒厳令解除に踏み切らざるを得なかったのは、いかに中国経済が危機に瀕しているかの証左ではなかろうかと考える。

本稿では西側経済制裁による中国の対外債務問題、国内においては国債の大量発行に象徴される財政問題等に絞り考察するとともに、近年財政の安定的な収入源として有力視されている生命保険業務についても簡単に紹介したい。

(1990年03月01日「調査月報」)

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