1989年05月01日

アメリカにおける金融制度改革の動き

松尾 匡

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■見出し

1.はじめに
2.金利の自由化
3.州際業務の自由化
4.業務の自由化
5.おわりに

■はじめに

アメリカの金融自由化は、1970年代後半以降の規制金利商品からの預金流出(disinterrnediation)、累積債務を中心とした銀行の不良債権増大等を引き金に、金利規制、州際業務規制、業務規制の緩和を三本柱とした「規制緩和」の動きの中で進展してきた。現在までに金利規制、州際規制の緩和については目処がついており、今後の焦点は、「業務規制の緩和」に絞られて来ている。

従来より、金融規制緩和法案が提出されては廃案となっていた連邦議会では、1987年11月、グラス・スティーガル法の一部撤廃、銀行持株会社による証券子会社の保有の認可等を骨子とした「金融近代化法案」が上院銀行委員会に提出され、業務規制の見直し論議が再燃した。その後、同法案は上院本会議を通過したものの、下院審議で行詰まり、1988年10月の第100議会閉会とともに、期限切れで廃案となった。また、1989年1月より開かれている第101議会においても、金融規制緩和法案は、大きな社会問題にまで発展した貯蓄金融機関救済問題の陰に隠れて、現在手付かずの状態にある。

これに対して、1987年4月、連邦準備制度理事会(FRB)が大手銀行持株会社の証券子会社に特定証券の引受・売買業務を認可して以来、「FRBの認可、裁判所の追認」という形で、現行法解釈の範囲内で「銀行持株会社の証券子会社」に新たな業務を認める万法が定着しつつある。

このような状況を踏まえて、本稿では、まず、「金利自由化」、「州際業務の自由化」を概観したうえで、当面の焦点となっている「業務自由化」を中心としたアメリカの金融制度改革の現状についてまとめてみたい。

(1989年05月01日「調査月報」)

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