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ついに波瀾に富んだ昭和の幕も閉じた。考えようによっては、昭和一代を生きたということは通常の三世代にも相当する激変の時代を経験したことになろう。18世紀には100年を単位として、19世紀には50年を単位として世の中は動くといわれたが、20世紀の現在では、20年から30年の周期で変わりつつあり、昭和はまさにその通りの展開であったと言えよう。
従来、産業技術文明の進展はゆっくりとしており、また、いったん産業技術面での優位性を獲得すれば、80年から100年の長きにわたってその地位を保持できたわけであるが、第二次大戦を境にして現在の社会においては、技術の優位性や産業の独占的競争力というものは、非常に短期間に、また簡単に打ち壊されるといった文字通りの競争の時代に入っていると思われる。戦後の日本は、幸運にもこの急速な技術革新の時代に欧米先進国の技術水準に追いつき、逆に分野によっては今や世界をリードする先進技術国と言われる程になった。経済的には、このことが日本の繁栄を支える大きな要因になったわけであり、そうでなければ戦後の廃墟の中から僅か40年で現在のような社会、産業を築くことはできなかったであろう。そのような意味では、昭和の前半の第二次大戦に突入までの軍事力の時代から、戦後の産業復興、発展、繁栄に至る道程は、歴史上前例のない飛躍を経験した時であったと思われる。
しかしながら、先端技術も簡単に陳腐化し、新技術に取って代わられる時代に入っているだけに、昭和の成果を維持し世界文明の先頭を走り続けることは、さほど容易なことではない。慢心や怠惰の風が生ずれば、このような繁栄は一朝にして潰いえ去ると思われる。昭和に築き上げた我々の成果が大きなものであっただけに、新しい平成の時代に、それらを維持し発展させてゆく責務は、重くなることはあっても軽くなることはないであろう。
また、経済、産業分野ばかりでなく、世界の政治、外交、軍事の分野においても、新しい展開が急激に起こりつつあり、我々はその面においても世界の主要国の一員として、内外の難問に対して立ち向かい克服してゆかねばならない。
新しい平成の時代に、昭和の繁栄と国の安全を保持し発展させてゆくことについて、更に新たな覚悟と真剣な努力が必要であると思われる。
(1989年02月01日「調査月報」)
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細見 卓
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