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米国に8年振りに新政権が誕生したことに象徴されるように、戦後の政治経済情勢の局面は、大きな変革と新たな時代への突入を告げているようにみえる。
世界政治の上では、米ソという軍事大国の角逐が大きな転機を迎え、欧州およびアジアに対する中距離核配備の全廃は、新しい軍事的均衡への大きな挑戦であるとともに、その空白を埋めてゆくことへの緊急性も要求している。そのことは通常兵力増強を含めた新たな安全保障体制確立への努力を各国に強いるものとなるため、核軍縮が一部の人が言うごとく、軍事費の削減に結びつかない可能性があり、軍事費負担の軽減については楽観を許さないと思われる。
また、経済面では、ECの1992年に向けての統合が大きく動き出し、それに呼応するがごとく米加自由貿易協定締結があり、世界は新たな地域主義の台頭の危機を感じつつある。その中で、NIESと言う名のもとに拡大の一途を辿っているアジア諸国や日本の国際貿易における地位も大きな転換期を迎えようとしている。言うまでもなく、自由貿易体制が国の経済的繁栄の根幹となっているこれらの国々にとって、新しいウルグアイラウンドの成功は、経済発展のための必須の前提となる。しかしながら、地域主義への流れをいかにして抑制するか、またNIES諸国や日本にとって厳しい条件となる農業保護の見直し、知的所有権の尊重、サービス貿易の自由化等の問題をいかに解決してゆくかということは、今まで輸出と製造工業中心に発展を遂げてきたアジア諸国、日本にとって容易な道ではないと思われる。
時あたかも、ブッシュ新政権が誕生した米国についてみても、様々の問題が予想される。まず、いわゆる双子の赤字、財政赤字と貿易赤字を克服するにはとらざるを得ない手立てと思われる増税は、今のところ望み薄であるため両赤字改善のはっきりした見通しは立たず、結果として世界経済、金融上の不安は当分除去されないであろう。また、ブッシュ政権は反保護主義を旗印としているが、貿易収支の改善が顕著でなく、ことに輸出拡大について生産能力の限界があるということであれば、民主党優勢の議会の圧力によって新しい301条の保護主義的運用、すなわち輸入抑制に動かないという保証はない。保護貿易主義の抑制と為替レートの安定の政策を米国政府にとりつづけさせるとすれば、米国なりのメリットを与えなければならないであろうが、そのメリットとは貿易相手国からの政策協調とバードンシェアリングであろう。この点我が国としてもそれ相応の覚悟が必要と思われる。
以上のように、新しい局面が生まれつつあり、日本としてもどのように対処してゆくのか早急に準備しておかねばならない時期と立場にあると思う。
(1988年12月01日「調査月報」)
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