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国際金融関係の諸問題を議論する年一回の祭典と称すべきIMF・世銀総会が、先般、国際都市ベルリンで開催され、小職も出席したので感じたことを若干述べてみたい。
最大の議題である当面の国際金融情勢については、幸いに為替相場も比較的安定し国際協調の成果が実現している状況であるので、関係者は一様にこの小康状態に満足の意を表していた。勿論、国際収支赤字国については、赤字の克服、黒字国については、その内需拡大による世界経済の牽引が繰り返し強調されていたが、一般の楽観的ムードの中では、それほど強く響くものではなかった。ただ、国際収支の調整はいよいよ構造改革の側面の段階に至っており、その実現には困難な課題があるとして、更なる貿易の自由化、金融資本市場の規制緩和の必要が強調されていた。
累積債務問題については、日本の提案、所謂宮沢構想を除き特に新しい解決策が発表されたわけではなく、ケースバイケースの基本戦略に従って市場指向型の解決策が強く称揚された。所謂メニュー方式、つまり国毎に、また困難度に応じて色々な方法、債務の猶予から債務の証券化に至る様々の手段を採用して、できるだけ債務負担の軽減を図る要があると強調された。日本の提案した宮沢構想については、三方一両損的な考え方で、債権者である民間銀行、債務国、更には債権国や国際機関も各々が応分の負担と貢献を要請するものであって、基本的には関係者の誰もが異議を唱えるものではないと言われている。しかしながら、関係者には色々の思惑もあってすんなりと合意に至らなかったのは残念であった。だが、この考え方はやがて関係者が採用を余儀なくされるものであると私には思えた。
この宮沢構想といい、あるいは国際金融に取り組む日本の態度といい、それらが積極的であるという印象を関係者は強く持ったようであり、米国が、大統領選挙とか新任早々の財務長官であったという理由で積極的指導的役割を果たすことが出来なかったこともあって、日本の積極性はことのほか印象深いものとなった。
このことは、日本の態度というものが世界の注目を受けるようになったことが明確になるとともに、世界最大の債権国になった日本にとって、世界の通商金融に関する問題を傍観視するわけにはいかなくなったことも象徴している。その意味では、世界経済運営による日本の役割が新たな段階に来たことを強く印象つけられるIMF・世銀総会であった。
(1988年11月01日「調査月報」)
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