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- チェーンストアにおけるドミナント出店戦略の経済分析
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1.
チェーンストアでは、特定の地域に店舗を集中させ、高い市場シェアの獲得を狙う「ドミナント」出店が行われることが多い。ドミナント出店は、店舗の集中立地に伴う、(1)コスト削減効果、(2)販売促進効果、(3)独占的利益効果、(4)労務管理効果、(5)新規参入阻止効果によって促されていると考えられる。ただ、出店政策の違いや、地盤とする地域経済の違いなどから、ドミナント化の程度は企業間でかなりのバラツキがみられる。
2.
食品スーパー26社について、実際の店舗配置を基に、「市場シェア」と「店舗集中度」から構成されるドミナント度を算出し、企業収益に与える影響を分析してみると次のような結果が得られる。
(1)市場シェアと店舗集中度のいずれもが、企業収益に有意にプラスの影響を与えており、ドミナント出店戦略の推進が高収益率をもたらしている。
(2)規制緩和や消費者の品揃えの豊富さに対するニーズが強まる中で、店舗面積1,000㎡未満の小型店舗を数多く抱えている企業ほど収益性は低い。
(3)自己資本比率の高い企業ほど収益性は高く、自己資本比率が何らかの経営上の優位性を反映している可能性が大きい。
3.
2企業(A企業とB企業)が2地域(地域1と地域2)に出店を計画している理論モデルを構築し、需要条件、企業コスト条件、出店総数の制約が各企業の地域別店舗配置に与える影響を検討すると、以下のような結論が得られる。
(1)地域需要が拡大すると、両企業とも需要が拡大した地域での店舗集中度を高める。市場シェアについては、需要が拡大した地域ではシェアは均等化する方向に向かうが、需要が拡大していない地域では逆にシェア格差は拡大する。
(2)A企業は地域1にコスト優位性を持ち、B企業は地域2にコスト優位性を持つといったように、地域によって企業のコスト構造が異なっていると、各企業はコスト優位性を持つ地域でドミナント化を進める。
(3)両企業とも出店総数が増加すると、市場シェアは均等化していく。店舗集中度についても、両地域の需要条件が同一であると均等化していく。
実際にわが国の最近の動きをみると、出店規模の大幅な緩和、消費者のライフスタイルの変化等もあって、食品スーパー各社は順調に業容を拡大してきた。これら変化は、これまでの出店総数の制約を緩めるものであり、今後は、各企業のドミナント化(特に市場シェア)の程度は徐々に低下し、各企業間の競合度は高まっていくと予想される。
(1997年09月25日「ニッセイ基礎研所報」)
小本 恵照
小本 恵照のレポート
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