- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 財政・税制 >
- 人的資本投資としてのベーシック・インカムの可能性について
人的資本投資としてのベーシック・インカムの可能性について

遅澤 秀一
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1
最近、すべての個人に対して無条件かつ定期的に所得を給付するベーシック・インカム(基本所得)が注目を集めている。日本ではシビル・ミニマムを保障する政策として生活保護等がある。しかし日本の制度は受給者に対しては比較的手厚いが、受給者の範囲が狭く貧困家庭の捕捉漏れがあるとの批判がかねてよりあった。雇用形態の変化やワーキング・プア問題が顕在化し、従来の制度の綻びが目立つようになってきたことが、ベーシック・インカムが注目されている背景にある。
2
ベーシック・インカムの歴史は長いため、政治思想的側面だけでなく制度論としても議論されてきた。従来からある批判の主だったものは、「働かざるもの食うべからず」「何もしないでも金がもらえるのならば誰も働かなくなる」「なぜ金持ちにまで支給するのか」「莫大な財源が必要で非現実的だ」といった根源的なものが多い。しかし、このような基本的問題に関しては議論されてきたものの、政治的立場が異なる人達を完全に納得させるには至っていない。
3
本稿では、従来の議論では副次的効果とされてきた生き方や働き方の多様化を前面に出し、低所得層への生活支援を反射的効果とすることによって、人的資本投資の観点からベーシック・インカムの再構築を行い、イデオロギー色を薄めることを試みた。さらに、ベーシック・インカムの難点と言える財源問題についても、人的資本投資としての位置付けと整合性を保ちつつ、定率所得税と死亡時一括払い世代別人頭税の併用によって、非現実的と批判を浴びがちだった従来の議論に見られた高率の所得税率や消費税率を回避できる可能性を示唆した。
(2010年11月11日「基礎研Research Paper」)
遅澤 秀一
遅澤 秀一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2014/05/07 | バリュー株ファンドのパフォーマンスの相違と要因分解について | 遅澤 秀一 | ニッセイ年金ストラテジー |
2013/12/02 | クール・ジャパン戦略について - われわれは失われた20年間に何を得たのか - | 遅澤 秀一 | 研究員の眼 |
2013/08/05 | 日本株式市場のバブル局面を比較する | 遅澤 秀一 | ニッセイ年金ストラテジー |
2013/07/17 | なぜ昔の製造業の現場は力があったのか | 遅澤 秀一 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月09日
下落時の分配金の是非~2025年4月の投信動向~ -
2025年05月09日
グローバル株式市場動向(2025年4月)-トランプ関税への各国の対応が注目される -
2025年05月09日
英国金融政策(5月MPC公表)-トランプ関税が利下げを後押し -
2025年05月09日
官民連携「EVカーシェア」の現状-GXと地方創生の交差点で進むモビリティ変革の芽 -
2025年05月09日
ESGからサステナビリティへ~ESGは目的達成のための手段である~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【人的資本投資としてのベーシック・インカムの可能性について】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
人的資本投資としてのベーシック・インカムの可能性についてのレポート Topへ