2012年11月20日

大学乱立で、問われる大学経営 - IRの現状~戦略的リスク計量手法の一提案

  大山 篤之
  小原 一仁

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■introduction

昨今、大学の乱立に疑問が投げかけられ、大学等の設置認可の厳格化が俎上に載った。しかし、たとえこれ以上に大学が増えることがなくとも、少子社会が進む中、今後、日本の大学における競争がより一層激化することは明らかであろう。0歳~17歳世代が18歳を迎える局面を概観すると、2012年度から2018年度にかけては118万人から123万人を推移する18歳人口も、2019年から2022年度にかけ毎年1万人の規模で減少し、2023年度から2024年度では4万人減少し105万に達する。大山・小原・西原(2011)によると、この間、約570大学ある私立大学のうち約350大学(約60%)が定員割れを起こす可能性がある。一方で、補助金制度の見直しや促進、更なる国の介入が、大学経営改革を後押しするものであっても、妨げとなってしまう事態は何としても避けなくてはならない。

本来各大学がすべきことは、自大学の立場を明確に示し、現状を公開し、同時に、将来的な展望に向けて邁進するための素地を構築することである。つまり、まず自大学についてどこまで状況を把握できるかが、今後の大学淘汰の競争を生き残る経営戦略の中核となり、それが更なる大学の経営改革につながる。この過程で、闇雲な大学の設置や学部の増設、定員の増大も自然と抑止されるのではないか。

そして、自大学の状況をしっかりと把握するためにも、高等教育機関としての教育と運営にかんする情報収集、並びに調査研究結果の集約を政策立案や意思決定に結び付けるInstitutional Research (以降、IRと呼ぶ)という概念とその具体的手法がより効果的なものになるよう取り組む必要がある。

本文では、先行研究に加えて、IRの実践経験の長い米国にて実施した大学IR部門への面談調査の結果を事例として報告することで、まず、現在のIRの国内及び世界的な定義の双方を明示する。これにより、国内外におけるIRに関する解釈の齟齬と、国内におけるIRに関する議論が未成熟であることがわかる。また、大きな問題点は、IRの具体的な手法が明らかにされておらず、場当たり的な取り組みとなってしまっている点である。そこで、経営面に特化したIRに焦点を絞り、信用リスク管理に用いられる金融統計モデルをベースに、情報を活かし政策策定の意思決定プロセスに結びつける手法を一つ、ここに提案したい。今回提案する戦略的リスク計量手法は、一つの手法に過ぎないであろうが、今後色々な手法が提案され、IRが体系化していくための一助となるものと考えている。

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大山 篤之

小原 一仁

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