コラム
2008年06月11日

買収合戦と株主総会

  新田 敬祐

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今年も6月となり、株主総会シーズン入りした。これに先立って開催されたアデランスホールディングスの株主総会(5月29日開催)では、社長を含めた取締役7名の再任案が否決された。現職の取締役9名のうち、再任されたのは社外取締役の2名のみで、それまでの経営方針が株主から完全に否定されたことになる。取締役選任案が、このような形で否決された事例は過去にほとんどなく、衝撃的な出来事であった。

この否決の原動力になったのが、米投資ファンドのスティール・パートナーズである。同ファンドは、昨年にも、ブルドックソースと買収合戦を繰り広げており、現経営陣に対して敵対的な行動をとるアクティビスト・ファンドとして知られている。同ファンドはアデランスホールディングス株を29%保有しており、これに大株主である他の海外機関投資家等も同調した結果、会社提案が否決となった模様である。

約1年前の2007年3月末時点で確認したところ、こうしたアクティビスト・ファンドを大株主に抱える上場企業は150社を超えていた。2004年3月末時点では60社程度であったから、その活動の規模も影響力も急速に拡大していることがわかる。とくに、アデランスホールディングスの件では、彼らが事実上、取締役人事の決定権を握っているだけに、今後の動向が注目される。

企業の経営支配権は、現行法制度の下では、取締役の選解任を決議する能力によって決定される。すなわち、株主総会における多数決をコントロールできれば、経営支配権を獲得できるのである。しかし、これは効率的な結果を保証する仕組みだろうか。確かに多数決は、社会的選択において参加者の合意を形成するための有力な手段ではある。その決定は、参加者に一定の納得感をもたらすだろう。しかし、企業は厳しい市場競争にさらされているので、株主にとって重要なのは、納得感よりも、どちらの提案が優れているかである。多数決に納得できても、投資先がその企業価値を劣化させてしまったら元も子もない。

経営支配権に争いがある場合、株主による多数決で、より優れた提案が選択されることになるのだろうか。残念ながら、それは簡単ではなさそうだ。一般に、戦略的優位性に関する情報は、ごく限られた人たちしか保有していないからである。効率的な結果に近づくには、一般株主が、現経営陣と買収者が開示する情報から、どちらの提案がより優れているかを読み解く必要がある。このことは、その時点の株主の質と情報開示のあり方が、その後の企業経営に重大な影響を及ぼす可能性を示唆しており、たいへん興味深い。

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