2007年03月26日

村上ファンドの投資行動と役割 -標的となった企業の特徴に関して-

京都大学経営管理大学院 川北 英隆

宮野 玲

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本稿での分析は、村上ファンドが投資対象としたすべての企業、135 社を出発点とした。そのうえで、村上ファンドの投資スタイルから得られた示唆(村上ファンドの投資スタイルがワンパターンではないとの結論)に基づき、投資対象企業が上場した年と、村上ファンドの最大保有比率の2つを選別基準に用い、最終的な分析対象企業を絞り込んだ。最終的には46 社が分析対象となった。
この46 社について、村上ファンドが活動を開始した1999 年度以降から消滅する寸前の2005 年度までの7年間について、資産・財務構造、利益率、PBR を分析した。分析の方法は、資産・財務構造、利益率、PBR に関する46 社の指標について、上場企業の平均値からの差異値を求め、その差異値に有意性があるのかどうかを検定する方法である。
この分析により、46 社の特徴として、次の結果が得られた。すなわち、豊富な資産(現預金、有価証券、土地)を保有していること。有利子負債の割合が低いこと(同じことだが、株主資本比率が高いこと)。利益率が高くなく、最近では上場企業の平均値に比べて明らかに見劣りすること。PBR が低く、安値に放置されていることである。
スティール・パートナーズをはじめとする村上ファンド類似の投資家の台頭や企業買収の頻発に対し、防衛策を講じる企業が多くなっている。しかし、企業側が意識すべきは、究極の防衛策が非公開化だとの事実である。この究極の防衛策を選ばない場合、資産の圧縮、有利子負債の活用、ひいては事業展開の工夫を考える必要がある。さらにいえば、資本コストに見合った利益率の達成に向け、経営努力が求められる。村上ファンドの最大の功績をあえて指摘するのなら、資本コストに見合った利益率の達成を上場企業に迫ったことだろう。
本稿は、宮野玲「投資ファンドが関与した企業の経営と価値――村上ファンドの事例――」(京都大学経済学研究科修士課程終了論文)で用いられたデータと分析結果をベースに、川北が分析を追加し、それに基づいて執筆したものである。

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