コラム
2003年09月22日

取引先の大幅な削減が促すもの

  小本 恵照

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1.相次ぐ取引先の大幅削減

企業間の資材・部品取引は事業活動を支える重要な活動であるが、今年に入りその取引内容に注目される動きがみられる。それは、電機機械メーカーを中心に、部品や素材などの調達先をドラスチックに削減する動きが広がっていることである。ソニーは、今後3年間で現在約4,700社ある調達先を1,000社程度に絞り込む。松下電器産業も、来年3月までに約3,000社を2,000社程度に減少させる。大手部品メーカーでも同様の動きがみられ、アルプス電気やタムラ製作所は、今年初めから1年間で取引先をほぼ半減する取り組みを進めている。また、いすゞ自動車が今年度1年間で25%削減することを発表するなど、取引先を大幅に削減する動きは電気機械メーカー以外でもみられる。取引先を本格的に絞り込む取り組みは、日産自動車が1999年秋に発表した経営再建計画「リバイバルプラン」の柱として打ち出されたのが嚆矢と考えられるが、最近になって他の日本企業にも急速に広がっているのである。
 

 
2.取引先削減の効果と背景

調達先削減の最大の効果は、受注メーカー1社当りの受注量が増えることで生じる量産効果による調達価格の低下である。また、調達先が絞り込まれることで、発注者と受注者間のコミュニケーションがより緊密となり、共同で事業を展開すること等が容易となることもメリットとして指摘できる。
こうしたメリットがあるにもかかわらず、日本企業が永らく多数の部品メーカーと取引を続けてきたのは、取引関係をドライに解消することに心理的な抵抗があったことや、日本企業の経営に余裕が残っていたことが大きい。しかし、最近では、海外企業との競争が厳しさを増す中で、経営上の余裕がなくなってきた。また、取引関係を維持するための、量産化や設計の見直しなどの努力による調達コスト削減にも限界が見えてきた。さらに、他社に先駆けて大胆な取引先の見直しを進めた日産自動車が、計画を上回るペースで調達コストの削減を実現した。これらのことが相まって、日本企業としても調達先の大幅な削減に踏み切らざるを得なくなったのである。
 
3.取引先削減の影響

取引先削減の影響は、産業レベルと個社レベルに分けて考えることができる。
産業レベルでみると、下請けの中小企業の集約化による事業規模の拡大を通じて、生産性を上昇させると考えられる。また、取引先が少数化されることにより、発注者と受注者の緊密度が高まり、提携を通じたグループ化が進むことも予想される。これは、大手企業の下に多数の中小企業が下請企業として存在するという産業構造から、大手企業と有力な中堅企業群が共同して事業を遂行する産業構造に移行するきっかけになると考えられる。
個社レベルでみると、納入メーカーにとっては、取引の解消というリスクが高まる一方で、事業拡大の機会が広がることを意味する。優良なメーカーにとっては成長の余地が高まると言っていいだろう。しかし、そのためには、当然のことながらこれまで以上の経営努力が必要になってくる。
そこでのポイントとしては次のような点が挙げられる。調達先の絞り込みに当たっては、提供される部品の品質、環境問題への配慮、納期などが重要な基準となっているケースが多く、こうした基準を満たすためには、環境問題に対する取り組みを示す国際標準化機構(ISO)の認証取得、サプライチェーン・マネジメント(SCM)への取り組みなど、時流に遅れをとらない経営が不可欠となる。しかし、そのためには、経営者の経営手腕に加え、取り組みを実行するために必要な相応のコストが負担できる企業体力も求められるなど、資金調達力に劣る中堅・中小企業にとってはクリアすることが難しい課題も少なくないと予想される。こうしたことを踏まえると、中堅・中小企業が生き残りを目指すためには、同業者との合従連衡などによって経営力の強化を図ることが、これからの有力な経営戦略になってくると思われる。
 

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