1997年07月25日

民間シルバーサービスと消費者保護問題 -在宅介護サービスを中心として-

岸田 宏司

法政大学 社会学部 長沼 建一郎

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1.
民間の在宅介護サービスは、高齢社会に向けて重要な役割が期待される一方、提供されるサービスをめぐって様々な消費者トラブルも発生しつつある。従来、福祉サービスは一方的に「与えられるもの」という性格が強かったが、公的介護保険の創設等を通じて利用者がサービスをみずからの選択する場面の一般化が予想され、消費者保護の観点からシルバーサービス提供のあり方を見直す必要がある。
2.
シルバーサービスにかかる契約関係においては、取引内容の重大性、取引類型としての新しさ、高齢者が利用者・対象者となること等から、消費者保護の要請が強く働く。これらに加えて住宅型サービスは「ホームヘルプサービス」、「入浴サービス」においては、サービスの純粋役務性、利用者の生活との直接的な接触度合の高さ、サービス提供の属人性等に特徴を有している。
3.
実際これら「ホームヘルプサービス」や「入浴サービス」の提供に際しては、サービスの提供範囲やサービスの質、またサービス提供に付随する問題等をめぐって多様な苦情・トラブルが発生している。
4.
消費者保護の観点からは、単に規制緩和のもとでの利用者の自己責任を問うだけではなく、その前提として自己責任のための環境整備が重要である。具体的には、契約プロセス(契約締結段階~サービス提供段階~紛争処理段階)の各局面に即した取引の適正化を図っていく必要がある。
5.
すなわち契約締結段階においては適正かつ主体的な判断に資する実効的な情報提供が、サービス提供段階においては各事業者の経営努力の尊重と同時に最低限のサービスの質の確保が、苦情・紛争処理段階については事業者自信の努力とともに第三者機関による苦情・相談窓口の利用者への周知が求められる。また、契約の標準化を通じて契約内容の適正さを担保することが必要である。
6.
あわせて契約プロセスを通じて高齢者・利用者をサポートし、サービス提供へのモニタリング機能・オンブズマン機能を果たすべき“総合的かつ専門的な第三者機関”の構想が今後求められよう。

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