1996年10月01日

東京と東アジアの国際的都市連携の進展

  長田 守
  川村 雅彦
金融研究部 不動産市場調査室長   竹内 一雅

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<要旨>

  1. 東京をはじめ現代の大都市の役割は、周辺の後背地との関係よりも外界のネットワークとの関係で決まる傾向が強まっている。これは都市活動が脱地域化を進展させ、多様な機能的な連携ネットワークを拡大しているからである。この機能的な連携が個々の都市の役割や都市化プロセスに大きな影響を与える可能性がある。特に一層の都市化の進展が予想される東アジア各都市との機能的連携の進展は、東京や他の日本の都市のこれからの都市経営にとって重要性を増すことは間違いない。
  2. 東アジアでは経済活動は貿易や海外投資の増大を通じてボーダレス化が進んでいる。日本、中国、アジアNIES、アセアン8カ国の輸出額が世界貿易に占める比率は27.4%に達し、世界の一大経済圏となっている。特にアジアNIESの経済成長が東アジア内の相互の投資活動を活発化させており、これがサービス・財や資金をはじめとする経済活動だけではなく、人や文化の交流を含んだ地域内の都市間の機能連携を促進させる基盤となっている。
  3. 東アジアの大都市の都市化を人口増加と産業特性から比較してみると、その状況は様々で異なる都市化レベルの都市が併存しながら、機能連携が進展していることが分かる。経済発展段階の異なる国々が連関を強めながら経済成長を遂げてきた東アジアの経済発展は、日本を先頭とする雁行型発展形態と呼ばれた。特に80年代から90年代初期頃までは、日本からは製造業の国際垂直分業を軸とした経済連携が東アジア諸都市との間で強まった。しかし、近年この雁行形態に変化の兆しがあり、製造業の垂直分業のみならず、水平分業も活発化しつつあり、さらにより広範な分野で、従来とは異なる多面的な機能連携が進展する可能性が出てきている。
  4. 都市間の機能的連携の影響を東京とジャカルタのケースで見ると、先ず東京の都市機能は都市活動の脱地域化と共に空間的および機能的な分化が進み、中枢管理機能および関連するサービス機能への特化を強め、一方製造業や住民関連サービスは他地域へ流出させた。これは脱工業化社会に入ったニューヨーク等、先進工業国の大都市にも共通する特性変化である。東京で非特化業種となった製造業の一部が国内の他地域ばかりでなく東アジア等へ流出したのである。
  5. 一方、ジャカルタでは最近の30年間に人口が約3倍になるという急激な都市化が進展している。その都市化を支えた経済発展にとって、外国投資は国内の貯蓄不足を補い、雇用や所得を創出するばかりでなく、技術移転を促進し産業の高度化に寄与する等、重要な役割を果たしてきた。
    日本はジャカルタへの最大の投資国である。ジャカルタ市(ジャカルタ首都特別区)に立地する日系製造業99社の事業活動は、試算によればインドネシア国内に2兆3,300億ルピア(約1,170億円)と大きな生産波及効果をもたらしている。日本の都市活動の脱地域化がもたらした産業構造変化は、この様に遠く離れたジャカルタの地域経済、そして地域経営の重要な要素としてしっかりと組み込まれている。決して一過性の現象ではなく、その意味では非可逆的プロセスの可能性が高く、いったん流出した機能が日本の都市へ逆戻りする可能性は低い。
  6. 国際的な都市の機能連携は経済的連携が中心であるが、同時に運輸通信のインフラストラクチャー、地政学的条件に基づく多様な地域経済圏、そして地球環境問題に関わる生態学的連関等とも多様な相互作用をしながら、多層的な構造を形成している。東京一極集中構造の影響力が弱まる中、日本の都市もこの多層的な国際的機能構造が各地域の経営に与える新たな影響を十分に考察することが求められている。

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