1996年06月01日

アジアの豊かさと環境意識-アジア4都市のライフスタイル比較調査から-

  栗林 敦子
  朴 奎相 東京大学 大学院人文社会系研究科
  須藤 修 東京大学 社会情報研究所

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<要旨>

  1. 東京、ソウル、上海、ジャカルタの4都市において、国と個人の経済状況についての認識を調査した結果、5年前と比べ経済的に成長し、豊かになり、これからも期待できそうだという回答は、ジャカル夕、上海、ソウル、東京の順に多い。また、個人の経済状況への満足度はジャカルタを除いてかなり低い。
  2. ライフスタイルについては、経済発展が進んでいる都市ほど、物質的な満足を求める生活から生活の質や精神的な満足を求める生活へと、重点が変化していることがわかった。特に、ここ5年間では、東京の人々が自分なりのスタイルの生き方を追求するように変化したことが特徴的である。経済状況の満足にもそのような生き方が関係を持っている。
  3. 認識している環境問題は、4都市とも身の回りの環境汚染が中心であり、東京を除けば、飲み水、ゴミ、大気汚染が3大問題となっている。東京の人々がオゾン層の破壊の破壊を2番目の深刻な問題としたのをみれば、経済発展が生活の関心をより広くしているとも考えられる。
  4. 環境に対する考え方については、4都市とも「今後環境問題が深刻化する」、「経済成長よりは優先すべき」という考えを支持する人が多かった。ソウルでは、どの考えに対しても支持する人が一番多かったが、これは最近の一連の社会問題と大型事故が主に大手企業や政府傘下機関によるもので、社会的不満や、特に企業に対する不満が多かったからではないかと思われる。
  5. 行っている環境保全行動は国の制度や商品の流通、生産の有無との関連で異なる面がみられ、国によっては行動に移す環境に置かれていないともいえる。しかし、4都市ともに環境運動の参加や環境団体への寄付などの実施が少ないこと、身近な環境問題だけを見ている姿勢があることから、積極的な意志や意識を持っているとはいえない。「行動のための環境未整備」よりも「意識面での遅れ」の方が大きな要因となっているようだ。
  6. 経済発展段階による人々のライフスタイルの変化は、今後も継続的な調査が必要であると思われるが、本調査ではライフスタイルに経済発展段階の影響がある程度はあるということを確認できた。それは、もちろん、国の制度や環境にもよるが、物質的な満足を追求した結果、生活の質の面にライフスタイルの重点を移すことになることも確かである。経済発展とともに物質的な満足の経済成長を追求する過程は、様々な社会問題を惹起し、それが人々の意識に少なからぬ影響を与えている。

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