1994年08月01日

米国保険業界の自己資本比率規制 -生保のRBCを中心に-

  小松原 章
  鈴田 雅也

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<要旨>

  1. 米国の銀行、保険業界は、1980年代後半から1990年代初頭にかけて大きな経営危機に直面することとなった。危機の要因としては、業界の相違から生じる固有事情の他、金融自由化に伴う競争激化の下での過度な経営拡大指向を共通点として指摘することができる。両業界とも経営危機を克服すべく、これまで人員・経費削減、不良債権・資産の整理、不採算部門の統廃合等の大胆なリストラを実施してきた結果、一時の混乱状態から脱却し、業績は回復基調にある。
  2. 一方、両業界の監督当局サイドもこのような経営危機に対し、預金者・契約者保護の観点から一連の監督制度改革に着手することとなった。制度改革にあたっての共通の発想は、銀行・保険会社の健全性を測定する尺度として、リスクとの関連における自己資本の水準を重視し、このレベルに応じて規制の強弱をリンクさせ倒産による損失を軽減しようとするものである。
  3. 保険業界のRBC(Risk Based Capital)と称する自己資本比率規制は、保険会社に内在するリスクに対応した必要自己資本額と会社が実際に保有する自己資本額との比率によって、監督当局が所要の措置を講じるべく行政介入する画期的なシステムである。RBCは、保険会社が当面支払不能の恐れがあるか、それに近い状態にあるかどうかを客観的基準によって判定する目的で、保険監督用に開発されたシステムである。この限りにおいて、米国で普及している民間格付機関による保険会社の格付とはその性質・目的は異なるものである。
  4. RBCは事業継続のための最低限の自己資本レベルを測定するものであり、会社の相対的な優劣を決定する手段ではないが、RBC比率が財務諸表上で判明してしまうため、各社とも比率引き上げを狙った行動に出ることが予想される。例えば、ア)資産・負債両面にわたってのポートフォリオの改善・リスクの圧縮、イ)自己資本の強化、ウ)契約者配当率の引き下げによる内部蓄積の充実等が行われる可能性がある。
  5. RBCは一連の制度改革の過程で誕生した監督システムであり、これによって行政介入措置を伴った早期警戒システムが整備されることとなった。RBCは生保は1993年決算、損保は1994年決算から適用されることとなっており、まだ緒についたばかりである。RBCの実施にあたっては、業界の健全化に資するとの意見や、一方、経営が保守的になる等、種々の意見もあることから、監管当局の実際の制度運営、会社側の経営行動が今後どのように推移していくかを注目していきたい。

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