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■見出し
はじめに
2.アメリカの戦略的管理貿易
3.管理貿易に係る経済論議
4.輸入自主拡大のマクロ経済効果
5.結び
■introduction
世界経済が停滞色を強めるなかで、アメリカ経済は順調な拡大を続け、世界経済の牽引力となっている。その背景には、財政赤字削減計画の明示による期待金利の低下が大きく作用しており、政府のマクロ政策運営によるところが大きいと考えられる。しかしながら、財政赤字削減は、長期的にアメリカ経済にデフレ効果が作用することを意味している。このためアメリカにとっては、中長期的に財政によるデフレ効果を外需(輸出)で補うことが必要であり、ここから、従来以上に強力な通商政策の必要性が生じている。
こうした状況のなかでクリントン政権は、日本に対し数量目標を明示した、管理貿易的色彩の強い要求を行なってきた。具体的に、従来の輸出自主規制に代わり、日米半導体協定の類の輸入自主拡大(VIE)の必要性が強力に主張されているのである。しかし、世界のGNPの4割を占める日本とアメリカ二国間で管理貿易が強化されれば、それはとりもなおさず世界の自由貿易体制が大幅に後退することを意味する。したがって、包括経済協議等を通して交わされる日米間交渉において、日本がどのような対応を採るか、世界から大きな注目が集まっている。今回の日米首脳会談は、この点についての合意がえられず物別れに終わったが、これは問題がさらに複雑化して先送りされたことを意味するものである。
本論では、アメリカの管理貿易要求の背景を検討し、そのマクロ経済効果について計量的な分析を行なう。まず最初に、クリントン政権の通商政策の背景にあるタイソン(1993)、さらに具体的な対日政策提言であるバーグステン=ノランド(Bergsten=Noland(1993))の主張を検討する。その上で、小型世界モデルを用いたシュミレーション分析により、輸入自主拡大のマクロ経済効果を計測する。分析を通して、こうした政策措置は、アメリカの国内経済(とりわけ雇)に関してほとんど有意な効果をもたらさず、自由貿易の原則を曲げてまで行なうメリットの乏しいことを明らかにしたい。
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