1992年04月01日

新たな高齢者社会参加システムの模索 ―「名老100選」等にみる高齢者の活動ステージづくり ―

  丸茂 恭敬
  岸田 宏司

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<要旨>

  1. 本稿では、高齢者の願望・ニーズ分析に基づきながら、今後、重要性を増すであろう「就業によらない高齢者の社会参加」の新たな方向性を模索し、その事例を紹介する。
  2. 高齢者の願望・ニーズは大きく「老後生活の不安解消願望・ニーズ」と「人生充実願望・ニーズ」に整理できる。「老後生活の不安解消願望・ニーズ」は、老化等によって発生する日常生活上での問題点を克服するための願望・ニーズであり、収入確保や健康保持等の願望が含まれる。一方、「人生充実願望・ニーズ」は、自己実現や楽しさ追求等のいわゆる「生きがい増進」願望であり、最近とみにその充足が叫ばれているものである。今後高齢化が進展するに従い、「老後生活の不安解消」への対応だけでなく、この「人生充実」を側面から支援する対応も社会として一層重要となってこよう。
  3. この「人生充実願望・ニーズ」充足を考えるとき、この願望は、高齢者が社会と繋がりを持って初めて充足される願望であり、現役生活引退後も現役時代と遜色無く社会と接触し、社会との関係において自分自身の生活を位置づけることが重要であることに気づく。そして、「高齢者の社会参加」の推進がこれらの願望に応える方法として重要な役割をもつことが理解できるのである。特に、現在進められつつある「高齢者就業(雇用)の推進」だけでなく、高齢者の特性を活かした「就業によらない広角度の社会参加方法」も社会として多様に備えていくことが重要である。
  4. 今後高齢化が進行し、高齢者の就業を離れた社会参加による人生充実願望が高まりをみせた時、その社会参加方法は、個人の願望に沿うものであることは勿論、社会が必要とするニーズとも合致し、社会がより潤うものであることが望まれる。そのために求められるのは、「高齢者の社会参加」に対する社会のニースーと高齢者側のニーズそのものを顕在化、鮮明化するための「場(ステージ)作り」である。現在、この方向に沿った高齢者の社会参加のステージ作りが、自治体等を中心に模索されつつある。
  5. 自治体での活動方法は、伝統技術から一般的な趣味まであらゆる分野において知識、経験、技術を持つ高齢者を発掘、組織化し、その能力を講演会や講習会などの催し物を通じて地域住民に還元するとともに、活動を通じて高齢者自身の人生充実感を高めようとするものである。つまり、高齢者にとっては持てる能力を発揮(パフォーマンス)しうる場(ステージ)が提供されることで社会との関係を持ち続ける方法であり、ボランティアとも趣味活動とも少し異なる「パフォーマー」とでも呼ぶべき新たな社会参加方法であると言えよう。

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