2021年06月11日

所有者不明土地への諸対策 (2)-共有制度の見直し

保険研究部 常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長・ジェロントロジー推進室研究理事兼任   松澤 登

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2|所在等不明共有者の持分の取得
不動産が共有されている場合において、所在等不明共有者がいるときには、共有者は自己に所在等不明共有者の持分を取得させる旨の裁判をすることができる(改正民法第262条の2第1項、課題3・課題4への対応)。これをケース1でいえば、共有者Aが裁判によって所在等不明共有者であるC,Dの持分を取得することができるというものである(図表9)。この場合、共有者AはC,Dの持分相当の金額を供託することになる。共有者が他の共有者持分を直接取得する制度を認めたものである。この制度で注意すべきは、相手方となる共有者は所在等不明者に限定されている点である。この裁判を行ったうえでBの持分を取得すれば、Aは単独での所有権を取得できる。なお、BがAに対して、持分の譲渡も、不動産の現物分割のいずれも拒んだ場合は、次に述べる債務負担による共有持分の取得が利用可能である4
【図表9】所在等不明共有者の持分を裁判により取得するケース(Bの持分は合意により取得)
 
4 つまり、所在等不明共有者の持分を裁判により共有者Aが取得した以降は、AとBという所在の明確な共有者だけが存在することとなって、共有物の分割訴訟が可能になるということである。
3共有物の分割(債務負担による共有持ち分の取得)
改正民法では、共有物分割の方法として、現行法にある現物の分割、競売による分割に加えて、「共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部または一部を取得させる方法」が認められた(改正民法第258条、課題5への対応)。この方法は、判例では特段の事情がある場合に認められるとしてきた、共有者が裁判により一定の金銭支払いにかえて、他の共有者の持分を取得できるという全面的価格賠償による分割を制度化したものである。

ケース1において、Aが不動産の共有を止めたいと考え現物分割をしようとしたが、Bが現物分割に反対しているとする。改正前ではBが現物分割に反対する場合は競売しか方法はなかった。改正法の下では、Aはまず前項で述べた所在等不明共有者の持分を取得する訴訟により、所在等不明共有者C、Dの持分をAに帰属させる(ステップ1)。そのうえで共有者Bの持分を、共有物分割の訴訟により取得する(ステップ2)ことができる。裁判所はBの持分についてAからの債務負担(=金銭の支払い)を条件としてAに帰属させることができる(図表10)。ステップ1をまず踏むのは、このことにより共有者の所在が全員、明らかになり、共有物分割訴訟が可能になるためである。
【図表10】共有者Bが分割に反対したケース(裁判による債務負担を条件とした分割)
4|所在等不明共有者の持分の譲渡
不動産が共有されている場合において、所在等不明共有者がいるときには、共有者は特定の者に対して、所在が明らかな共有者の同意を得ることを条件として、所在等不明共有者の持分を譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる(改正民法第262条の3、課題6への対応)。ケース1でいえば、共有者Aが譲受人に土地を譲渡するにあたって、共有者Bの同意を得て、共有者C,Dの持分を譲受人に譲渡する権限を自分に付与する旨の裁判をすることができる(図表11)。
【図表11】所在等不明共有者の持分を裁判により譲渡するケース(Bの持分は合意により譲渡)
裁判により譲渡の権限を取得したAは単一の所有権を譲受人に取得させることができる。
 
以上をまとめると図表12のようになる。
【図表12】上記まとめ
5|相続財産についての特則
上記の共有財産の分割、所在等不明共有者の持分の取得、所在等不明共有者の持分譲渡について、相続人間で遺産分割すべき財産に関しては、相続開始後10年経過までは利用できないとされている(改正民法第258条の2、262条の2第3項、262条の3第2項)。

別稿(シリーズ4回目を予定)で詳しく説明するが、遺産分割にあたっては、相続人のうちで遺産を増加させることに特別に寄与をした分(寄与分)、あるいは被相続人から生前贈与などを受けている分(特別受益)を勘案して分割することになっている。しかし、改正法では、相続開始後10年経過すると相続人は寄与分や特別受益を勘案した遺産分割の利益を受けることができないこととされた。つまり10年経過すると各相続人の持分が法定相続分で原則として確定することとなるため、以降は分割を共有者である相続人が主張することが容認される。
 

4――おわりに

4――おわりに

本文の通り、共有物の変更・管理・処分などにあたっては全員あるいは過半数の共有者の同意が必要となる。この点、実際には、共有者の所在等が不明な場合は、占有者である共有者が勝手に変更・管理をしているケースも多いと思われる。しかし、このようなことは法律的には正しくない。今回の改正内容により、法律的にも有効に変更・管理が行えるようになる。

共有者の所在等が不明の場合、最も困るのが土地・建物を処分するときであろう。登記移転を含めて、不動産の売却にあたって、行方の分からない共有者の同意を取得できるとは思えないからである。

したがって、本稿で解説した範囲で重要なのは、共有者不明で相続した不動産を単独登記に変更して、次代への相続を簡易にするとか、あるいは第三者に売却するとかのケースを実現可能とならしめたことであろう。

次回は相続財産の管理制度の整備について解説を行う。
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保険研究部   常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長・ジェロントロジー推進室研究理事兼任

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

(2021年06月11日「基礎研レター」)

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