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再び過熱しはじめた不動産投資マーケット
大都市では商業地や住宅地の地価の上昇傾向が強まる中、将来のさらなる値上がりを見込んだ投資マネーの動きが活発になっています。上場リート(不動産投資信託)は昨年の大型不動産取引を主導しましたが、最近は強気の買い取り価格を提示する私募ファンドや私募リートに競り負けるケースが多いといいます。東京オリンピック開催決定や円安などを背景に海外投資マネーの存在感が再び高まっていますが、今回の特徴はアジアからの資金流入が目立つことです。また、相続課税強化による節税目的の資金流入がマーケットの過熱感や加速感をより強めているようにも思えます。
今回の不動産ブームがいつまで続くのかはわかりませんが、長期的にみればオリンピック景気の反動に加えて、団塊の世代といわれる戦後のベビーブーマーが後期高齢者1になる2020年代前半が心配です。
超高齢社会でも不動産は値上がりするか
結論からいえば、超高齢社会でも不動産は値上がりします。なぜなら、そこに人やお金が集まれば、需給関係で土地や不動産の価格は上昇するからです。例えば、高度経済成長期から土地バブルといわれた1980年代まで、全国の地価は物価上昇率をはるかに上回る勢いで上昇を続けました。これは、総人口の増加、経済の高度成長、人口の都市集中によって、大都市圏では住宅や工場、業務・商業施設の用地が慢性的に不足したためです。
今世紀に入って総人口が減少に転じ、経済成長率も低下し、工場の海外移転も進んだため、国内の土地需要は大幅に縮小していますが、人やお金が集まる魅力のある地域や土地・不動産ならこれからも値上がりが期待できます。ただし、不動産需要全体が縮小しているので、利用されず収益も生まない地域や土地・不動産には人もお金も回ってこず、どこまでも値下がりしていくでしょう。
また、大都市は値上がりして地方は値下がりするという単純なものでなく、人口流入が続く東京圏でも、値上がりが期待できる地域とそうでない地域に明暗が分かれると思われます。利用価値や敷地形状が全く違う土地でも、同じ道路に面して隣り合っているだけで同じように地価が上がった高度経済成長時代と違い、不動産がその個別性によって明確に選別される時代になっているからです。
永遠の値上がりは約束されていない
さらに、値上がりした地域や土地・不動産でも、将来にわたって値上がりが約束されているわけではありません。これは、不動産が値上がりする理由と逆の状況を考えれば明らかです。例えば、景気の悪化や賃貸経営の失敗、あるいは物件の経年劣化などで利用者が減る、収益性が落ちる、値上がりし過ぎて買い手がいなくなる、このような状況になれば当然値下がりすることになります。
このことは、ある程度なら不動産の価値を上げることが人為的に可能であることも意味します。バリューアップといわれる手法では、古くなって収益力が落ちたオフィスビルや商業施設、賃貸住宅などを安く買い、改修工事で外観や内装を一新して稼働率を引き上げたり、投資適格となるよう適切な耐震補強工事を施したりして資産価値を引き上げます。
つまり、オフィスビルや商業施設、賃貸住宅などの収益不動産では、立地条件や物件の良し悪しだけでなく、経営力次第で資産価値が変わる可能性があるということです。このような特性を持つ不動産は、オペレーショナル・アセットといわれます。本来はホテルや商業施設など経営ノウハウが必要な資産をさす言葉でしたが、いまやオフィスビルはもちろん分譲マンション2も、維持管理の質によって資産価値が変わるオペレーショナル・アセットになったとみるべきでしょう。
不動産市場を活性化する観光立国戦略
今後も総人口が減少する中、年金や社会福祉に頼る高齢者の割合が増加していくトレンドが続けば、東京圏といえども住宅やオフィスビルの新規需要は早晩縮小に向かわざるをえず、地価上昇率の低下や上昇地点の減少は避けられません。住宅地価の長期的なサイクルをみると、ピーク時の高さ(対前年比)が低くなってきているのがわかります。市場の二極化で平均値が下がりやすくなっているのも理由ですが、高度成長経済から安定成長経済になったことも背景にあるでしょう。
ただし、総人口が減少しても、海外からの観光需要が大幅に増加すれば経済にプラスになると期待できます。2013年に外国人観光客数が初めて1千万人を超えましたが、政府は2020年の東京オリンピック開催時に2千万人、2030年には3千万人超と高い目標を設定しています。
外国人観光客が大幅に増加すれば、ホテルやサービスアパートメントなどの宿泊施設、百貨店や専門店、レストラン、アウトレットモールなどの商業施設の収益向上や投資の活発化による不動産価格の上昇も期待できます。また、国際的な観光地として人の往来が増えれば、外国人の新たな雇用機会もたくさん生まれ、また定住を希望する外国人も増えるでしょう。これにより、高級マンションからシェアハウス、別荘まで、さまざまな住宅系の不動産需要が喚起されるはずです。このように、観光立国戦略は日本経済の持続的成長だけでなく、不動産市場を活性化する意味でも重要な方策といえるのです。
(2014年10月06日「研究員の眼」)
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