2014年03月18日

中国保険市場の最新動向(6)銀行系生保の台頭と窓販規制の強化

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 片山 ゆき

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■要旨


中国において、銀行による保険会社への出資は、2008年に関連の規制が緩和されたことに端を発する。5年が経過した2013年末時点では、銀行による保険会社への出資は6社まで増加しており、そのうち4社は外資系生保となっている。2013年はそういった銀行系生保の販売が急速に伸展しており、生保市場は構造的な変化を迎えているといえよう。

銀行による保険会社への出資規制緩和のタイミングは、世界的な金融危機前の2008年1月であった。直前の2007年は中国経済が最も活況を呈していた時期であり、急速に膨れ上がった個人所得は預金のみならず、銀行を通じて投資性の高い保険へ流れた。銀行窓販は2008年には販売チャネル別の収入保険料規模(シェア)で49%を占めるにまで拡大し、保険販売における銀行の重要性は一気に高まっている。

このような背景の下、発表された規制緩和策であったが、直後には世界的な金融危機が発生し、外資生保の外資出資側の出資比率の縮小や撤退などが発表され、外資が抜ける分を国内の大手銀行が代わって出資を申請するという動きが見られた。これが外資系生保が急速に増えた理由である。

2013年の生保市場をみると、上位20社には工銀安盛(12位)、農銀(15位)、建信(16位)の3社の銀行系生保がある。各社が抱える事情や経営上の戦略は異なるものの、結果としてこの5年間で中国の4大国有銀行のうち、中国銀行を除く3行(建設、農業、工商)や大手銀行を中心に保険会社への出資が進んでいる。

中国における銀行での保険販売は、既に主要チャネルとして一定の存在感を維持している。銀行を管轄するのは中国銀行業保険監督管理委員会(銀監会)であるが、当の銀監会は出資規制の緩和以降、各社が収入保険料の拡大を目指す中で、急速な販売の増加やそれにともなって発生する誤導販売に対して、保険会社との販売契約や銀行での販売行為について規制を強化している。



(2014年03月18日「保険・年金フォーカス」)

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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

片山 ゆき (かたやま ゆき)

研究・専門分野
中国の社会保障制度・民間保険

経歴
  • 【職歴】
     2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
     (2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
     ・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
     (2019~2020年度・2023年度~)
     ・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
     ・千葉大学客員教授(2024年度~)
     ・千葉大学客員准教授(2023年度) 【加入団体等】
     日本保険学会、社会政策学会、他
     博士(学術)

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