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- 介護ボランティアポイント制度に思う~保険制度のサステナビリティと地域力~
コラム
2009年05月19日
わが国の介護保険制度は、平成12年に導入されるやいなや、瞬く間に浸透した。介護保険制度を導入している国は、ドイツ・日本・韓国、オランダ、ルクセンブルグと世界を見ても少数派だが、その中でもわが国の介護保険制度は、突出して、受給者範囲が広く、国の財源負担も大きくなっている。制度比較の中で「国の守備範囲」を考えた場合、いわゆる日本的な、「サービス精神旺盛」ともいえる特色を有する制度のサステナビリティが問われてくるのは、当然の帰結とも言えなくない。
国の財源負担だけでなく、高齢者(65歳以上、第1号被保険者)の介護保険料も上昇を続けている。平成12年度の全国平均は月額2911円だったが、平成21年度から3年間適用される介護保険料は4160円になり、全国最高額の青森県十和田市では5770円と、既に5000円を超えている。高齢者の増加に伴い、保険料は益々上昇していくだろう。
こうした中、一つの試みとして、65歳以上の高齢者が地域で介護支援のボランティアをすることで介護保険料を軽減できる「介護ボランティアポイント制度」が導入され、2年が経過した。市町村によって制度内容は多少異なるようだが、全国の先陣を切って導入した稲城市の場合、ボランティア活動は、レクリエーションの指導、食堂の配膳・下膳、散歩の補助、話し相手などの7区分で成り、自由に選択できるようだ。1時間の活動を1回とカウントし、10回を超えるとポイントが蓄積されはじめ、年間50回の活動で5000ポイントになる。1000ポイントから交付金(1ポイント1円)を受給できるが、上限は5000円となっている。また、評価ポイント活用申し出を前提とした給付の佇まいを残しており、ボランティア活動としての意味合いは維持されている。
2009年3月末現在、稲城市では、299人のボランティア登録があり、約2割は年間のポイント制限(5000円)まで達しているようだ。稲城市の高齢者人口は約1万2500人であり、ボランティア登録率は2.4%くらいということになる。稲城市の事前想定では、他のボランティア活動参加状況から0.5~1%(100人程度)であったが、口コミ等から想定以上集まりつつある。299人の内訳は女性が78%、男性が22%、65~74歳が75%を占めるが、最高齢の登録者は93歳と、何とも頼もしいお年寄りも存在する。ボランティア者に対する施設側の見方も概ね好意的で、「助かる」「続けて欲しい」といった声が大半のようだ。
稲城市に始まった本制度は、残念ながら、都内でみても、千代田区・世田谷区・品川区・足立区、八王子市、豊島区、清瀬市とまだ採用が限られているほか、導入のスピード感は区々のようだ。オーストラリアのようなボランティア先進国では高齢者のボランティア率は2~3割に達する。そこまで到達するのはなかなか難しいだろうが、介護現場での人手不足も深刻な中、介護ボランティアは一つの大きな可能性を有す。自助・共助の中間にあるボランティア活動をもっと推進していけないものだろうか。サービスの質改善に向けた努力も必要ではあるが、保険制度のサステナビリティに向けて、地域力向上に向けた早急な取り組みが問われている。
国の財源負担だけでなく、高齢者(65歳以上、第1号被保険者)の介護保険料も上昇を続けている。平成12年度の全国平均は月額2911円だったが、平成21年度から3年間適用される介護保険料は4160円になり、全国最高額の青森県十和田市では5770円と、既に5000円を超えている。高齢者の増加に伴い、保険料は益々上昇していくだろう。
こうした中、一つの試みとして、65歳以上の高齢者が地域で介護支援のボランティアをすることで介護保険料を軽減できる「介護ボランティアポイント制度」が導入され、2年が経過した。市町村によって制度内容は多少異なるようだが、全国の先陣を切って導入した稲城市の場合、ボランティア活動は、レクリエーションの指導、食堂の配膳・下膳、散歩の補助、話し相手などの7区分で成り、自由に選択できるようだ。1時間の活動を1回とカウントし、10回を超えるとポイントが蓄積されはじめ、年間50回の活動で5000ポイントになる。1000ポイントから交付金(1ポイント1円)を受給できるが、上限は5000円となっている。また、評価ポイント活用申し出を前提とした給付の佇まいを残しており、ボランティア活動としての意味合いは維持されている。
2009年3月末現在、稲城市では、299人のボランティア登録があり、約2割は年間のポイント制限(5000円)まで達しているようだ。稲城市の高齢者人口は約1万2500人であり、ボランティア登録率は2.4%くらいということになる。稲城市の事前想定では、他のボランティア活動参加状況から0.5~1%(100人程度)であったが、口コミ等から想定以上集まりつつある。299人の内訳は女性が78%、男性が22%、65~74歳が75%を占めるが、最高齢の登録者は93歳と、何とも頼もしいお年寄りも存在する。ボランティア者に対する施設側の見方も概ね好意的で、「助かる」「続けて欲しい」といった声が大半のようだ。
稲城市に始まった本制度は、残念ながら、都内でみても、千代田区・世田谷区・品川区・足立区、八王子市、豊島区、清瀬市とまだ採用が限られているほか、導入のスピード感は区々のようだ。オーストラリアのようなボランティア先進国では高齢者のボランティア率は2~3割に達する。そこまで到達するのはなかなか難しいだろうが、介護現場での人手不足も深刻な中、介護ボランティアは一つの大きな可能性を有す。自助・共助の中間にあるボランティア活動をもっと推進していけないものだろうか。サービスの質改善に向けた努力も必要ではあるが、保険制度のサステナビリティに向けて、地域力向上に向けた早急な取り組みが問われている。
(2009年05月19日「研究員の眼」)
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丸尾 美奈子
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