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コラム
2004年11月22日
堅調な拡大が続くフランチャイズ・ビジネス フランチャイズ(FC)は、コンビニ、ファーストフード、サービス業など、小規模な事業を中心に利用されているビジネス・システムである。コンビニを例にとると、本部と開業者(加盟店)がフランチャイズ契約を結ぶ。本部は、例えば「セブンイレブン」という商標の使用を認めると同時に、加盟店の営業に関するノウハウ提供や商品供給などの経営指導、広告、新製品開発などを担当する。加盟店は加盟金や保証金といった一時金を支払った上で店舗経営に専念し、本部からの経営指導の対価としてロイヤルティ(売上や粗利の一定割合が多い)と呼ばれる金銭を定期的に支払う。 開業者にとって、フランチャイズ加盟のメリットは、事業経験のない人でも本部の経営指導によって開業が可能になり、事業リスクも低下する点にあると考えられている。一方、本部には、(1)加盟店に開業資金を負担させることができる、(2)広い範囲から人材を集めることができる、という不足する経営資源を補完できるメリットが生じる。フランチャイズ・ビジネスは、本部と加盟店というお互いに独立した経営体が、お互いの強みを活かしつつ協力して事業を行う点においてユニークなシステムといえる。 フランチャイズ産業の動向はどうだろうか。日本フランチャイズチェーン協会が毎年発表している「JFAフランチャイズチェーン統計調査」をみると、チェーン数(1983年度の512チェーンから一貫して増加し、2002年度には1,065チェーンとなる)、店舗数、売上高のいずれについても増加が続いている。GDP成長率と比較してもその増加率は高く、フランチャイズ産業は堅調な拡大を続けているといえるだろう。
しかし、フランチャイズ産業が成長していることが、フランチャイズ加盟店が事業で成功することを直ちに意味するわけではない。フランチャイズ加盟店が事業に失敗し廃業しても、それを上回る人が新たにフランチャイズに加盟するならば、フランチャイズ・ビジネスは産業として成長していることになるからである。 では、フランチャイズ加盟店の廃業状況はどうなのだろうか。国民生活金融公庫が最近発表した新規開業企業のパネル調査によると、フランチャイズ加盟店の廃業率が予想以上に高いことが明らかとなった。調査によると、2001年に開業した企業が2003年までに廃業した割合は、フランチャイズ非加盟企業は7.8%なのに対し、フランチャイズ加盟企業は14.4%という高い数字になっている。また、筆者は、日本フランチャイズチェーン協会のホームページに掲載されている各チェーンの開示資料から、フランチャイズ加盟店の廃業率を算出してみた。それによると、コンビニは一般事業者並みの廃業率にとどまっているが、残りの3業態の廃業率は一般事業者の廃業率を上回っている。こうした調査結果から判断する限り、フランチャイズ加盟店の廃業率は思った以上に高いことがわかる。
望まれる慎重な判断と情報開示の充実 一般の事業者よりもフランチャイズ加盟店の廃業率が高いという事実が、何らかの是正策が必要であるという結論を直ちに導くものではない。しかし、加盟前の調査不足など不用意な廃業が回避できるのであれば、資源の損失を回避する上でそれに越したことはない。その類の方策としては次のようなものが考えられる。 まず、フランチャイズ加盟者には、加盟への慎重な判断が求められる。手掛けようとするビジネスの内容、本部の経営状況、既加盟者の経営状況、加盟後の労働条件など、フランチャイズ・ビジネスに関する重要な項目を詳細に調査した上で、自分の適性を踏まえ加盟を決定すべきである。 次に、本部は、廃業率が高いことは長期的に経営上の大きなマイナスになることを認識する必要がある。加盟者の廃業率が高いことは、本部収入の減少に直結すると同時に、新規加盟者の足を遠のかせることにもなる。ビジネス基盤の確立、業務のマニュアル化や加盟店の支援体制の整備など、フランチャイズ・ビジネスを展開できる十分な準備が整った上で加盟店募集を始めることが望まれる。募集に当たっては入念な審査を行い、有能な加盟者の発掘に注力することも肝要であろう。 なお、フランチャイズ加盟希望者が本部を的確に評価するためには、正確な情報が必要である。わが国の情報開示制度は徐々に充実されてきているが、情報開示を定める中小小売商業振興法がサービス業をカバーせず、違反した場合の罰則も勧告・公表に留まるなど、不十分な点は依然として多い。情報公開制度の更なる充実によって、加盟希望者が正確な情報を容易に入手できる体制の確立が求められる。 上記のような取り組みを通じて、不用意・不必要な廃業が回避され、フランチャイズ・ビジネスが健全に成長していくことが期待されるところである。 |
(2004年11月22日「エコノミストの眼」)
小本 恵照
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