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東京都心部の成約賃料データ分析に基づく個別ビル賃料の推計方法 -精度の高い市場賃料推計モデルとその応用可能性について-

竹内 一雅
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1.
不動産価格の低迷が続く中、オフィスなどの商業不動産投資では、収益性を重視した投資スタンスが広まりつつあり、収益性評価のために必要な成約賃料や売買価格などの不動産情報に対するニーズが高まっている。成約賃料情報などは、プライバシーや守秘義務の問題から入手が困難であるものの、最近ではそれを補うように相次いで様々なオフィス賃料指数が開発・公表されている。しかし、個別性の強い商業不動産の属性が反映されていないなど、投資家からみて実用面での課題も少なくない。
2.
そこでニッセイ基礎研究所では、東京都心部で新規に成約したオフィス賃料データにもとづく賃料指数を開発した。この指数の特徴は、(1)成約賃料をもとにした、(2)規模別の指数で、(3)オフィスビルごとの物件属性の違いを調整しており、(4)市況変化をタイムリーに反映できる四半期データである点にある。また、マクロ経済環境とオフィス市場の需給関係をもとに、都心3区については新規成約賃料指数の将来値の試算も可能にした。
3.
特に、指数の開発過程で推計した賃料関数の当てはまりは高く、これを応用することにより、個別のオフィスビルについて、その立地条件や築年数、規模などの属性にもとづく新規成約賃料を算出することが可能になった。さらに、都心3区については、上記将来予測手法と組み合わせて、賃料の将来予測も行うことができる。この推計モデルを用いて、投資対象となるビルが本来得られるであろう市場賃料を試算できるため、これをベンチマークとして実際の賃料とのかい離度合いが測定できる。また、東京都心部の様々な条件のビルについて、収益還元法による不動産価格の簡易査定も可能である。このため、投資家の不動産収益の最大化を目的とするアセット・マネジメント業務での応用も期待できる。
4.
本賃料推計モデルは、対象地域の全国への拡大や、将来予測の精緻化などに課題は残るものの、市場実態に基づく精度の高い賃料情報の提供を可能にした意義は大きいと思われる。これを契機に、情報整備や情報開示方法などについて多くの議論が起こり、新たな指標が開発されるなど、不動産投資市場の健全な発展や活性化に少しでも貢献できれば幸いである。
(1999年12月25日「ニッセイ基礎研所報」)
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