- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- アジア金融・資本市場の現状-シンガポール・香港二大市場を中心として
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
■見出し
はじめに
1.香港・シンガポール金融センターのこれまでの成り立ち
2.90年代の潮流
おわりに
■introduction
1.アジアの経済発展と金融市場
日本を除くアジア諸国の金融資産残高は94年現在で、3兆4911億米ドルと過去5年間で約2倍と格段の成長を遂げている。アジアの金融資本市場がここまでにいたる背景には、過去30年間、ほぼ順調に発展してきた同地域の経済成長が一般的に挙げられる。60年代までの輸入代替工業化、それ以降の直接投資に支えられた輸出指向工業化といった成長プロセスの過程で、域内経済は確実に成長を持続した。この期間、アジア諸国は、高成長持続上必要な国内投資を賄うに足る国内貯蓄を持ち得ておらず、不足額を海外に依存せざるをえない構造を抱えてきた(投資・貯蓄ギャップ問題)。このギャップを埋めてきたのが、直接投資を始めとする海外からの資金流入である。
90年代に入り、アジアの高成長への関心の高まりから海外投資家のアジア投資も活発化し、債券発行、株式発行による資本の調達等、直接投資以外の調達経路が多様化しつつある。こういった資金調達手段の多様化を背景に、域内金融資本市場は著しい発展を遂げた。
2.都市国家(シンガポール・香港)への金融資本機能の集積
アジア各国の対名目GDP比銀行資産残高をみた場合、香港とシンガポールの比率が突出している。都市国家として、限られた国家資源(国土面積は、香港が東京の半分程度、シンガポールが淡路島程度。人口では、各々、6百万人、4百万人)等の物理的な制約を持つ両国は、金融立国に国家存続の活路を見出してきた。前述の金融機関総資産の対名目GDP比では、香港が7.2倍、シンガポール1.6倍と他のアジア諸国と比べ高い水準となっており、両国の金融セクター依存の度合いが伺い知れる。
香港、シンガポールの2都市が、今日のような金融立国を行えた背景には、(1)他国に先駆けて70年代にはオフショア市場制度を導入し、自由度の高い金融市場を設立したこと、に他ならないが、更に、これら市場が軌道に乗った決定的な要素として、(2)資金需要が旺盛な周辺諸国に囲まれていたこと、並びに(3)それら諸国の金融市場が、未成熟であったり、厳しい監督規制下に置かれていた為、自由な金融資本取引が行えなかったこと、が挙げられよう。換言すれば、他国の金融自由化の遅れをにらみつつ、名実ともに自由闊達な市場環境をいちはやく整備し、域内の資金調達運用需要を一気に引き受けたことにある。
ここでは、アジアの金融センターとして称されるシンガポールと香港の金融資本市場に焦点を置き、(1)これまでの発展過程、並びに(2)90年代に台頭してきた新興金融センターとの関係を踏まえた上での両市場の今後の方向、の2点について考察を行いたい。
(1996年08月01日「調査月報」)
このレポートの関連カテゴリ
管野 友人
清水 勘
新着記事
-
2025年03月19日
日銀短観(3月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント低下の12と予想、トランプ関税の影響度に注目 -
2025年03月19日
孤独・孤立対策の推進で必要な手立ては?-自治体は既存の資源や仕組みの活用を、多様な場づくりに向けて民間の役割も重要に -
2025年03月19日
マンションと大規模修繕(6)-中古マンション購入時には修繕・管理情報の確認・理解が大切に -
2025年03月19日
貿易統計25年2月-関税引き上げ前の駆け込みもあり、貿易収支(季節調整値)が黒字に -
2025年03月19日
米住宅着工・許可件数(25年2月)-着工件数(前月比)は悪天候から回復し、前月から大幅増加、市場予想も上回る
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【アジア金融・資本市場の現状-シンガポール・香港二大市場を中心として】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
アジア金融・資本市場の現状-シンガポール・香港二大市場を中心としてのレポート Topへ