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- 1994年度改定経済見通し -脆弱さ抱える中、0.4%成長
<要旨>
以下は「1994年度改定経済見通し(3/4発表。以下、前回)」を見直したものである。米独英3ヵ国の成長率を上方修正し、日本も前回見通し後の推移を踏まえ、0.4%成長(前回:ゼロ)とわずかに上方改定した。ただし、景気実勢の脆弱さ等、基本認識に変更はない。直近の円一段高など先行き不透明要因が多い中、当面注視を怠れない状況が続こう。
I.海外経済~米国はソフト・ランディング、イギリスは拡大持続、ドイツもプラス成長に
- 米国経済は91年3月の底入れ後、リストラクチャリング・バランスシート問題等の制約下、弱々しい推移を辿っていたが、(1)大幅金融緩和(実質短期金利ゼロ)、(2)リストラ等の諸問題の調整進展-などを背景に投資主導で93年下期に景気拡大ピッチが高まった。こうした中、FRBは本年2月から予防的引締めに転じており、現下の最大ポイントは「その成功いかん」といえよう。この点、(1)FRBのインフレ防止スタンスが明確、(2)現実のインフレ・労働コストは依然落ち着いた推移-等から、94年10-12月期頃には「景気、物価とも安定的状況」にソフト・ランディングする可能性が高いとみたが、医療保険制度改革・中間選挙をめぐる状況、ドルレートの動向など不確定要素は多く、注視を要しよう。94年の実質GDP成長率はゲタが1.7%と高めなこともあり、3.7%(前回:3.1%)と93年3.0%から上昇しよう。金融政策では予防的引締めの強化として、いま一段の利上げとなろう(年末、公定歩合4%)。span>
- 欧州では、ドイツ(旧西独)は景気回復傾向が明確化し、イギリスは拡大傾向が強まろう。ドイツ景気は93年春頃に底入れし、緩やかな回復基調にある。世界経済改善を背景とした輸出増加がリード役の一方、内需の柱の個人消費、設備投資は停滞している。今後は輸出増加の持続に、金融緩和効果等による内需下げ止まりが加わり、94年の実質GDP成長率は1.2%(前回:▲0.1%)と93年▲1.9%からプラスに転じよう。インフレ率は賃金上昇率低下等から鈍化傾向を続けよう。景気動向等からみて金融緩和はほぼ最終局面で、追加利下げの有無は微妙な状況とみられる(公定歩合の現行水準、4.5%)。
イギリス経済は92年4-6月期に底入れし、個人消費の増加を背景に最気拡大傾向が続いている。93年は住宅市況改善等による貯蓄率低下などから個人消費が増加し、実質GDP成長率は2.1%となった。94年は、(1)低インフレ・低金利、失業率低下などの中、貯蓄率がさらに下がり消費拡大が持続、(2)景気拡大継続、企業業績改善等により設備投資の増加テンポが加速-等から、実質GDP成長率は30%(前回:2.4%)に上昇しよう。金融政策では、政策金利であるベース・レートは現行5.25%が維持される公算が高い。。
II.日本経済~脆弱さ抱える中、0.4%成長
- 景気は急速な円高進行、冷夏、ゼネコン疑惑の影響等が加わり、93年秋口から年末にかけて底割れ懸念も出るような状況であったが、94年初頃以降は生産統計、日銀短観、94年1-3月期のGDP統計などの改善、株価堅調等から景気回復期待が強まった。こうした景気改善の背景には、財政・金融政策の累積的効果、設備ストックの部分的な調整進展、海外景気の回復-等がある。
- しかし、以下のようなマイナス要因があり、当面、景気実勢の弱い状況が続こう。
○企業部門のリストラ → 資本効率は悪化、収益性も歴史的低位であり、人件費中心に固定費圧縮の動きが続く。
また、設備投資の抑制も持続する。
○外需依存と円高 → 日本の対外黒字は高水準。輸出に活路を求めると、円高リスクが高まる。
内需主導型成長パターンのミクロレベルでの模索が続く。
○低インフレと長期金利高 → 低インフレの一方、日本の長期金利は海外金利高等を映じて経済実態に比して高め。景気回復力を削ぐ要因に。 - こうした認識の下で、本改定見通しでは94年度経済を以下のように予測した。
○景気は、(1)設備投資減少が続く、(2)企業部門のリストラが続き雇用環境は厳しい状況、(3)円高等を背景に純輸出は減少傾向-等のマイナス要因はあるが、他方、これまでのプラス要因に「減税実施の効果」も加わることから、回復傾向となろう。ただし、本格回復にはほど遠く、「底這い圏内」ともいえる動きにとどまろう。
○実質GDP成長率は、減税効果による消費の伸び上昇、製造業等を中心とした設備投資の減少幅縮小等から、93年度0.0%が94年度0.4%(前回:0.0%)とかろうじてプラスに転じよう。ただし、為替面等での不確定要素は大きく、ゼロ成長のリスクも残る。
→ 5.5兆円の所得税・住民税減税:94年度の実質GDPを+0.5%押し上げ
なお、予測では9月末までの第8次利下げ実施(1.75→1.25%)前提 - 国際収支面では海外景気改善等による輸出増と、円高等を背景とした製品輸入拡大等の中、経常黒字は93年度1300億ドル(名目GDP比3.0%)が94年度1330億ドル(同2.9%:前回1390億ドル、3.1%)と高水準が続こう。円ドルレートは、(1)ファンダメンタルズ面での円高要因(日本の大幅黒字・景気改善、米国の対外赤字増加・景気鈍化)、(2)日米当局の「ドル安回避」、「円高進展回避」スタンス-等を勘案し、93年度平均108円が94年度平均103円(前回:105円)とみたが、当面、一層円高となるリスクを抱えた状況で推移しよう。
- 金融面は景気実勢の弱さ、円高リスクの高さ、物価鎮静等の中、短期金利の低め維持が続けられよう。さらに、短期金利の低め誘導、第8次利下げとなる可能性もあろう。長期金利は不確定要素が多いが経済実態からは弱含み横ばいとみられる。
世界経済はようやく回復傾向が見えてきた段階であるが、主要国金融・資本市場は弱さを抱え、為替も不安定な状況にある。世界経済の回復の芽を摘まないためにも、米国財政赤字の持続的削減とより明確なインフレ抑制スタンス、そして我が国には規制緩和・内外価格差是正の推進、減税継続と公共投資基本計画の早期見直し・着実な実行が望まれる。
(1994年08月01日「調査月報」)
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