- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- '90年主要産業見通し
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
<はじめに>
1989年は「昭和」の終わりと「平成」のはじまりといった時代の大きな区切りだったが、わが国の経済・産業活動は若干の程度の差こそあれ良好なパフォーマンスを示した年であった。すなわち、国内の景気は力強い内需に支えられて投資が投資を呼ぶ環境を生んだし、円高定着に対する企業の合理化努力も奏功、両々相まって主要企業の業績も増収・増益が見込まれる状況にある。
'89年はまた、年度初めに消費税の導入があったにもかかわらず個人所得の増加や週休2日制の定着などが個人消費の増大に拍車をかけ、自動車販売や小売売り上げ、レジャー関係支出などを大きく伸ばして関連産業の好調を支えた。
'90年の産業界を展望すると、輸出は現地生産の進展や米国景気の減速などから前年に比して伸び悩むと見込まれるものの、内需は引き続き堅調と予測され、全産業を通して目立った落ち込みはないものと予想される。
ただ、全産業にわたって深刻化してきた労働力不足や、これまでの設備投資に伴う償却負担増、原油価格の動き、為替の動向、すでに現実のものとなっている金利の上昇などいくつかの懸念材料もあり、企業経営にとって必ずしも明るいとばかりはいえない。こうしたこともあって、環境変化への対応力や新事業進出の成否などが一段と企業間格差を鮮明にすることとなろう。
目を外に転じれば'90年代初頭の世界情勢は混迷の度を加速しているかのようにみえる。しかし確実に言えることは、潮流はかつての不信と対決の時代から、共存・共生、対話にもとづく建設の時代に向かっているということである。
最も効率的な工業化社会を築き上げたわが国産業界が、来るべき21世紀に向けてリーダーシップを取りうるか否かは、従来の上下、支配・被支配関係に基づかない形での国際分業をいかに構築できるか、またそれを地球的な規模で推進することができるかどうかにかかっている。この目的のためには、目先的な利潤追求にとらわれない大局的な観点に立った戦略の立案とそれにもとづく行動が、今まさに切望されているのである。
(1990年03月01日「調査月報」)
このレポートの関連カテゴリ
山村 浩
松尾 良秋/窪谷 治/小野 正人/小川 則道
新着記事
-
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く -
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【'90年主要産業見通し】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
'90年主要産業見通しのレポート Topへ