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- 1989年の経済見通し -主要国の経済見通し-
1988年12月01日
<要旨>
○米国経済――'89年、上期は景気の堅調さが持続するが、下期にかけて減速か。
('88年の現況)
- 1988年の米国経済は、年初、'87年10月の株価暴落により景気の低迷が予想されていたが、FRBが景気の落ち込みを阻止すべく機動的に金融を緩和したこと、輸出が順調に増加したこと、輸出に支えられて設備投資が回復したこと、消費が堅調であったことなどから、内需が回復しリセッションの恐れは消え、むしろ景気過熱不安が高まりつつ推移した。
('89年の見通し)
- '89年の米国経済は1-3月期までは'88年に引き続き景気の堅調さが持続し、それによってインフレ懸念再燃が予想される。財政政策は抜本的なものが期待しがたく、その結果、FRBは金融引き締め政策を続け、金利は上昇し1-3月期にピークを迎えよう。
- 年後半には設備投資、消費が鈍化し、'89年の景気は成長率2.5%と減速傾向に移るものの、リセッションには至らないであろう。
○英国経済――'89年、インフレ抑制のための金融引き締めが続き、景気減速へ。
('88年の現況)
- '88年の英国経済は、個人消費と設備投資が景気拡大の原動力となり、過熱気味に推移した。個人消費は雇用者増や、高水準の賃上げ等による実質可処分所得の増加や、消費者信用の拡大により上昇基調を続けると共に、設備投資は企業利益の着実な増加や稼働率の上昇、年初から年央にかけての金利低下を背景に、好調を持続した。
- '88年の実質GDP成長率は4.5%増となる見通しである。
('89年の見通し)
- '89年の英国経済はインフレ抑制のための金融引き締め政策が続くため、内需が鈍化し、3.0%程度へ成長率は低下しよう。ただ、物価面ではなかなか鎮静化がみられず、小売物価指数は'88年の前年比6%の上昇から'89年同5%の上昇に若干下がろうが、依然高い上昇率であり、また賃金上昇率はさらに高まる可能性があると言えよう。
- 国際収支面において、貿易収支は欧州諸国の景気が鈍化気味になるため、輸出が'88年程には見込めないとともに、輸入も大幅な改善が期待できないので、'88年に比べ悪化していくであろう。又、旅行収支の経常収支改善への貢献度が減っていくため、経常収支も大幅赤字の状態が続くと見込まれる。
- 財政収支は、引き続き好調に推移するであろう。
○西独経済――'89年、個人消費の鈍化等から、景気減速へ。
('88年の現況)
- '88年の西独経済は近年にない好調さで推移した。これは、(1)記録的な暖冬により建設投資が例年になく盛り上がった、(2)所得税減税による個人消費の堅調、(3)マルク安、他西欧先進諸国の景気拡大による輸出増と、これに伴う企業の設備投資の拡大、等の背景による。
- '88年の実質GNP成長率は3.7%となる見通しである。
('89年の見通し)
- '89年の西独経済は、消費税増税の影響による個人消費の鈍化等から成長率は2.4%へ低下しよう。
- しかし、貿易黒字は、依然として高水準な輸出と、西独内需の鈍化より輸入も伸びが縮小するものと考えられるため、'88年を上回り、対外不均衡が拡大しよう。
- 消費者物価上昇率は消費税増税の影響から2.3%へ上昇しよう。
○カナダ経済――'89年、米国経済の減速、金融引き締めの影響から景気鈍化。
('88年の現況)
- '88年のカナダ経済は、'87年における企業業績の回復、高水準な設備稼働率等を背景に設備投資が大幅な伸びを記録し、個人消費も底固い動きを示す等極めて好調に惟移した。
- 国際収支は、米国景気の堅調さを背景に輸出が増加している一方で、設備投資の盛り上がりから資本財の輸入が伸びており、貿易黒字は昨年の水準をやや下回り、経常赤字は旅行収支の改善、移転収支の黒字拡大等から昨年より縮小しそうである。
- '88年の実質GDP成長率は4.2%を見込んでいる。
('89年の見通し)
- '89年のカナダ経済は米国経済の減速、1年にわたる金融引き締めの影響等から'88年に比べ全般的に減速するものと思われ、成長率は2.5%へ低下しよう。
- 貿易黒字は、米国を始めとして世界経済の減速により輸出の伸びが鈍化しようが、カナダ内需の減速による輸入の伸びの鈍化の度合いの方が大きいとみられることから'88年よりは増加しよう。
- 物価は、'89年前半に、前年夏北米を襲った旱ばつの影響で食料品価格の上昇圧力が顕現化し、一時的に物価上昇圧力が強まろう。年後半には落ち着いてくるとみられるが、年平均の消費者物価上昇率は'88年よりも高い水準になるものと予想している。
○オーストラリア経済――'88/'89年度、設備投資を中心に順調に景気拡大へ。
('87/'88年度の動向)
- '87/'88年度のオーストラリア経済は、個人消費、住宅投資、設備投資といった内需が好調に推移し、実質GDP成長率は政府の当初見通しの2.75%を大きく上回り、3.6%となった。
- 一次産品市況の上昇を受けて輸出が増加し、恒常的に赤字となっている経常収支は前年度より若干改善した。
('88/'89年度の見通し)
- '88/'89年度のオーストラリア経済は、前年度に引き続いて、設備投資を中心に順調に拡大するものと思われる。過熱気味である住宅部門は、中央銀行の金融引き締めの影響により緩やかにピークアウ卜していくものと見込んでいる。
- 経常収支は、今年度3ヵ月の赤字幅が予想以とに大きかったことから政府見通しの95億豪ドルの赤字の収まるのは難しいであろう。
- 消費者物価は前年度よりは低下するものの、政府見通しの年度平均5.5%を越える水準となろう。
(1988年12月01日「調査月報」)
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