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1.
90年代前半の世界経済は、大陸欧州や日本の景気停滞、市場経済移行国のマイナス成長などから、ブーム期であった80年代後半に比べて低成長にとどまった。90年代後半は、世界的な物価の安定傾向、先進諸国の財政赤字抑制、国際金融市場の安定などの中、前半よりは良好なパフォーマンスを期待できよう。
2.
米国経済は、91年3月の景気底入れの後6年以上に及ぶ拡大局面を続けている。活発な企業間競争の下で旺盛な設備投資とリストラが実施され、生産性上昇を通じた高成長と低インフレの共存が可能となっている。クリントン政権下で財政赤字は縮小し、長期金利の低下が投資を活性化させてきた。3月下旬にFRBは2年2ヵ月振りにFFレートを引き上げた。追加利上げが予想され、予防的引き締めから景気は98年頃にかけてやや減速しよう。その後2001年にかけては消費、設備投資中心に拡大過程に向かい、97年~2001年の平均成長率は、2.4%(91~96年、2.0%)となろう。
3.
EU経済は東西ドイツ統合、EU市場統合を背景とした90年代初頭にかけてのブームの反動、インフレ抑制を目指したドイツの金融引き締めから、92、93年と景気が後退したが、その後の金融緩和転換から回復傾向が続いている。景気回復力の弱さ、失業増大により各国財政赤字は拡大する状況にあるものの、EMU(欧州経済通貨統合、99年1月スタート)実現に向けた各国の政治的意志は固い。EMU開始後も混乱の可能性はあろうが、為替リスクと取引コスト低減などから、EU経済は活性化しよう。また経済政策運営の安定化も域内経済成長に寄与することから、長期的には、欧州は大ユーロ圏として飛躍しよう。その途上となる97~2001年は、平均2.4%(91~96年、1.8%)の成長となろう。
4.
東アジア経済は、域内外と貿易拡大などを通じた相互依存関係の高まりの中、高成長を実現してきた。今後は、ASEANが好調なものの、韓国、中国等の鈍化から、東アジア全体では、97~2001年の成長率は平均7.0%(91~96年、8.4%)とやや低下しよう。
5.
日本経済は、バブル崩壊の後遺症などから脆弱さを抱えた状況が続いており、21世紀には高齢社会が到来する。このため、バブル崩壊の後遺症克服と高齢社会への備えのために各種の構造改革を進める必要があり、その進行途上となる97~2001年度は平均1.6%(91~96年度、1.5%)と、2%台半ばとみられる潜在成長率を下回ろう。
6.
21世紀には日本人の人口は急速に高齢化し、経済、社会に大きな変化をもたらそう。高齢社会の到来前に構造改革を成し遂げることが重要な課題である。改革は痛みや調整コストを伴うが先送りは許されない。今後5年間が正に正念場の時期である。
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