1997年02月01日

信用リスクの計量化と管理手法

  室町 幸雄
  浅原 大介

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<要旨>

  1. 近年の規制緩和の流れや、不良債権問題、相次ぐ銀行・商社等の巨額損失事件などを通じて、金融機関を中心に、リスク管理の重要性が再認識されつつある。このような環境下で、金融工学の発達を受けて、市場リスクの評価・管理手法の研究・開発は進んだが、信用リスクの分野は一歩遅れている。本稿は、貸付など、長期保有を前提とする円金利資産への応用を念頭に、信用リスクの計量化に関する基本的な考え方を整理し、その手法や適用例について述べたものである。
  2. リスクの評価・管理の第一歩は資産の時価評価であるが、債券市場の情報をうまく活用することにより、市場性のない貸付の時価も算出可能になる。そこでの問題は、信用リスクを反映した理論スプレッドの設定であり、固定金利や変動金利、有担保など、貸付案件固有の条件を加味して、評価することになる。
  3. 貸付における最適な格付け毎の配分構成を求める擦、平均・分散アプローチに、信用リスクの概念を導入し、拡張することを考える。信用リスクのある貸付ポートフォリオにおいては、倒産確率だけでなく、格付け推移確率(ある格付けに属する企業群が、一定期間後に各格付けに変化する確率)も、最適資産配分に大きな影響を与える。この格付け推移確率の影響は、デュレーション(金利感応度)により異なるため、格付け毎にデュレーションをコントロールすることが望ましい。
  4. ただし、信用リスク関連の基礎データは未整備であり、理論的なモデル化が不充分な部分も残っている。また、複数リスクの総合評価に関しても、その研究途上にある。そこで、デー夕、リスク・ファクター、評価・管理ツールといった階層構造を意識しながら、個々の構成要素間の複雑な関連性を解き明かしていくことが、今後のリスク管理・評価の課題であろう。
  5. 生命保険会社の負債は、一般に超長期で、しかも死亡などの非金融的リスクや解約のようなオプション性を内包しているので、非常に複雑である。したがって、リスクの評価・管理手法の構築にあたっては、運用資産の抱えるリスクだけでなく、保険負債の抱えるリスクも十分考慮する必要があるだろう。

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