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新型コロナ感染拡大防止に向けた行動の自粛の状況~不安、行動の自粛、今後の展望で6つのグループに分けられる

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――使用したデータ
分析に使用した質問項目は図表1のとおりである。不安については、感染そのものに対する不安のほか、家計の不安、世界経済の不安、休校の子どもへの影響、高齢家族への影響を含み、感染の収束や経済回復等の展望には、マイナンバーカード取得、キャッシュレス、デジタル化などの新習慣の定着に関する展望を含む。
2――分析結果
クラス数は、情報量基準(BIC)を利用して6つとした。
各クラスの特徴を先に紹介すると、以下のとおりである(図表2)。
クラス1:あらゆる面で不安を感じており、デパート等での買い物や娯楽施設の利用の面では行動の自粛を行っている。ただし、就労世代が多いことから、移動やスーパーでの買い物の自粛度合いはやや低い。感染の収束や経済の回復には悲観的であるが、デジタル化、キャッシュレス決済等の新習慣等の定着への展望は明るい。
クラス2:クラス1と同様にあらゆる面で不安を感じており、買い物や移動等の行動を行っている。年齢層が高いことから、収入に対する不安はクラス1より低い。移動等の自粛はクラス1より徹底している。感染の収束や経済の回復には悲観的であるが、デジタル化、キャッシュレス決済等の新習慣等の定着への展望は明るい。
クラス3:もっとも不安を感じていないクラスで、移動や買い物、娯楽施設の利用等の行動の変化は少ない。デジタル化への展望は明るいが、感染の収束、経済の回復、新習慣等の定着には否定的である。
クラス4:各種不安は少なく、感染の収束や経済の回復への展望が明るい。移動等の行動については、減少している人と増加している人が混在している。デジタル化や新習慣等の定着には否定的である。
クラス5:不安の有無や行動について「該当なし」の回答が多く、年齢層が高いことから、普段から活動が少ないと思われる。感染の収束や経済の回復、デジタル化の進展、新習慣等の定着については否定的だった。
クラス6:不安の有無、行動の増減、将来展望いずれも「どちらともいえない」と回答しており、主な特徴は見いだせなかった。
属性別にクラス構成をみると、性別では、クラス3,4、6に男性が多く、クラス2、5に女性が多かった。年齢別では、クラス4、クラス1、クラス6、クラス2とクラス5の順に若い傾向があった。
未既婚でみると、未婚者はクラス3、4、5、6に多く、既婚者はクラス2に多かった。
不安の有無、行動や行動時間の増減、感染の収束や経済の回復、将来への展望のに対する詳細な回答を図表3~5に示す。
まず、クラス1とクラス2の不安の有無をみると、あらゆる不安項目に対して、不安を感じている割合が高い。ただし、クラス2は、「勤務先の業績悪化による収入減少、雇用の不安定化」「在宅勤務が増え、上司や部下、同僚とのコミュニケーションが取りにくくなる」「在宅勤務ができる仕事ではないため、感染リスクなどから仕事を継続しにくくなる」に関しては、不安を感じていない点でクラス1と異なる。また、「ネット通販やスマホ決済などのキャッシュレス決済サービスが、使いこなせない」に関しては不安を感じている。これらのことから、クラス1は比較的若い就労世代が多く含まれており、クラス2には高年齢者が多く含まれていると推測できる。
次に、クラス3とクラス4についてみると、他クラスと比べて「不安なし」の割合が高い。クラス3は、「不安なし」が特に高いのに対し、クラス4は、「どちらともいえない」も高くなっている。また、クラス4は、「ネット通販やスマホ決済などのキャッシュレス決済サービスが、使いこなせない」「SNSの投稿や閲覧が増えることで、ネット上のトラブルが増える」で不安を感じている点でクラス3と異なる。クラス4は、「勤務先への出社」「在宅勤務などのテレワーク」への不安が「どちらともいえない」が高い人を含んでいることから、クラス4の方は就労世代が多く含まれていると推測できる。
最後に、クラス5とクラス6についてみると、クラス6は「どちらともいえない」の割合が高く、クラス5は、「該当しない」の割合が高い。
行動や行動時間の増減をみると、クラス1とクラス2はいずれも「デパートやショッピングモールでの買い物」「電車やバスでの移動」「屋外のレジャー施設の利用」等は減少、「ネットショッピング」は増加しており、いわゆる「自粛」が行われている。さらに、クラス2は「スーパーでの買い物」「家族や友人との対面でのコミュニケーション」が減少、「家族や友人との非対面でのコミュニケーション」が増加しており、クラス1と比べて、より行動の自粛を徹底しているようだ。
クラス4も、買い物や電車やバスでの移動、各種施設の利用が減少した人の割合が、増加した人の割合を上回ってはいるが、他クラスと比べて増加した人の割合が高く、自粛度合が弱いようだ。
クラス3とクラス6は「どちらともいえない」の割合が高い。また、クラス5は「該当しない」の割合が高く、各種行動を通常から行っていない人が多いようだ。
感染の収束や経済の回復、将来への展望をみると、クラス1とクラス2は、感染の収束や経済の回復には悲観的だが、収束後は政治への関心が高まり、マイナンバーカード取得、デジタル化等の新習慣等の定着は進展すると考えている。クラス3は、クラス1やクラス2と同様に、感染の収束や経済の回復に対する展望が暗い。デジタル化は進展すると考えているが、新習慣等の定着についての展望は暗い。
一方、クラス4は、感染の収束や経済の回復に対する展望は明るいが、政治への関心の高まり、マイナンバーカード取得についての展望は暗い。また、クラス5は、感染の収束や経済の回復に対する展望はクラス1やクラス2と同様に暗く、マイナンバーカード取得、デジタル化等の新習慣の定着に対しては悲観的だ。クラス6は、感染の収束や経済の回復、将来展望についても「どちらともいえない」が高い。
3――結果のまとめ
買い物や移動、娯楽施設の利用は、不安に感じる割合が高いクラスほど行動を自粛している傾向があった。クラス1は、クラス2と同様に不安を感じているにもかかわらず、「スーパーでの買い物」「電車やバスでの移動」がクラス2ほど減少していないのは、クラス1が比較的若く、就労や子育てを行う必要があるからだと考えられる。
もっとも行動の自粛度合が弱いクラス4でも、買い物や電車やバスでの移動、各種施設の利用が減少した人の割合が、増加した人の割合より高かった。また、感染そのものに対する不安は感じていないが、感染リスクから各種施設を利用しにくくなることや、自粛ムードでぜいたくしにくくなることについては、クラス1やクラス2と同様に不安を感じている割合が高い。比較的若い人が多いため、もともとの生活や行動が広範囲にわたっており、不安は感じないが自粛を行っているものと推測できる。
不安を感じる割合が高いクラスほど、感染の収束や経済の回復には否定的だった。ただし、デジタル化や三密を避ける行動の習慣化、キャッシュレスの拡大等は感染の収束や経済の回復とは異なり、不安を感じる割合が高いクラスでも、進展すると考えられていた。不安や行動の増減で「どちらともいえない」と回答することが多かったクラス5は、デジタル化や三密を避ける行動の習慣化、キャッシュレスの拡大も進展しないと考えており、新型コロナウイルス感染が日々の生活に及ぼす影響を他クラスと比べ小さくみているようだった。
感染拡大の予防と経済活動の両立が求められる中、公共の場におけるマスクの着用有無や、自粛度合いの違いは、人それぞれの考え方に委ねられており、考え方の齟齬が、互いにストレスになっている可能性がある。
(2020年07月14日「基礎研レポート」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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