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コラム
2010年06月17日
2008年の洞爺湖サミット、 2009年の東京都改正環境確保条例の施行、国連での「温暖化ガス25%削減」表明などを経て、この4月に改正省エネ法が施行され、グリーンビルディング(環境配慮型不動産)への社会的な関心がこれまでになく高まっている。たとえば、最近の不動産会社による大型ビル開発や企業の自社ビル建設では、省エネ性能の高さや環境への配慮をアピールすることがごく普通となっている。建設会社も、ビルの省エネ性能を高める新しい技術やシステム、素材、設備の開発・導入にしのぎを削っている。では、建物の利用者であるテナントにとって、グリーンビルディングをあえて借りることのメリットは何だろうか。
改正省エネ法は、従来の工場・事業所単位に加えて、企業単位でのエネルギー管理義務を導入したため、対象となった企業がオフィスを賃借する場合、当該オフィスでのエネルギー使用状況を把握・管理し、削減する義務が生じる。このような企業がグリーンビルディングを賃借する利点は明確である。すなわち、グリーンビルディングのオーナーは、環境配慮への意識が他のビルオーナーに比べて高いと思われ、テナントの省エネ努力に対して積極的な協力が期待できるからだ。そもそも、ビル全体のエネルギー使用量は、ビルの利用時間やシステム負荷などで大きく異なることから、オフィスビルの省エネ化を進めるには、ビルオーナーによる建築・設備面での対策だけでは十分でなく、運用面でテナントの理解と協働による省エネ努力も欠かせないという事情がある。
また、言うまでもないことだが、CSR(企業の社会的責任)やSRI(社会的責任投資)を標榜する企業にとっても、グリーンビルディング賃借の意義は大きい。最新鋭のAクラスビルの条件が「近・新・大・エコ」となった現在、このようなビルへの入居は、企業の先進性や高い社会性をアピールするという点で、大きな広告宣伝効果が期待できるだろう。特に、環境報告書を毎年作成している企業であれば、グリーン・プレミアム(賃料への上乗せ)を支払っても最新のグリーンビルディングにオフィスを構えるべきである。もちろん、グリーンビルディングは省エネ性能が高いので、一般的なビルよりも水光熱費が削減できるという直接的なメリットもある。
ただし、このような議論で注意しなければならないのは、省エネ性能の高さは不動産価値の一部にすぎないことである。究極の省エネビルは窓が小さい(いわゆるポツ窓の)ビルであり、自動ドアやエレベーター、空調のないビルといえるが、利用者であるオフィスワーカーに時代錯誤の禁欲や苦行を強いて生産性を下げるようでは本末転倒であろう。たとえば、室温のムラや稼動音の少ない空調システム、赤外線だけでなく有害な紫外線(UV)もカットする窓ガラス、タスクライトやLEDの活用で効率よく照明された落ち着いた室内、緑豊かで風が通る庭園や歩道、自転車通勤者のための駐輪場やシャワールームなど、優良なグリーンビルディングには、高い環境性能と同時に快適なオフィス空間が求められるのである。
実際、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)など、行政や専門家が行う建築物の環境性能評価手法おいても、エネルギー効率や資源は重要なカテゴリーのひとつだが、室内環境や緑も評価すべきカテゴリーである。「エコは快適である」と主張できるビルこそ、利用者であるオフィスワーカーの満足度も高く、結果としてオフィスの生産性が高まるビルであり、企業がプレミアムを支払っても借りる意味のあるグリーンビルディングといえよう。それだけに、テナントや投資家が、ビルの環境性能を客観的かつ簡易に評価できる指標の整備やラベリング制度の確立が急がれる1。
1 松村徹『投資対象としてのグリーンビルディング(環境配慮型不動産)~投資指標としてみた環境性能情報の課題』ニッセイ基礎研究所 不動産投資レポート、2009年10月16日
改正省エネ法は、従来の工場・事業所単位に加えて、企業単位でのエネルギー管理義務を導入したため、対象となった企業がオフィスを賃借する場合、当該オフィスでのエネルギー使用状況を把握・管理し、削減する義務が生じる。このような企業がグリーンビルディングを賃借する利点は明確である。すなわち、グリーンビルディングのオーナーは、環境配慮への意識が他のビルオーナーに比べて高いと思われ、テナントの省エネ努力に対して積極的な協力が期待できるからだ。そもそも、ビル全体のエネルギー使用量は、ビルの利用時間やシステム負荷などで大きく異なることから、オフィスビルの省エネ化を進めるには、ビルオーナーによる建築・設備面での対策だけでは十分でなく、運用面でテナントの理解と協働による省エネ努力も欠かせないという事情がある。
また、言うまでもないことだが、CSR(企業の社会的責任)やSRI(社会的責任投資)を標榜する企業にとっても、グリーンビルディング賃借の意義は大きい。最新鋭のAクラスビルの条件が「近・新・大・エコ」となった現在、このようなビルへの入居は、企業の先進性や高い社会性をアピールするという点で、大きな広告宣伝効果が期待できるだろう。特に、環境報告書を毎年作成している企業であれば、グリーン・プレミアム(賃料への上乗せ)を支払っても最新のグリーンビルディングにオフィスを構えるべきである。もちろん、グリーンビルディングは省エネ性能が高いので、一般的なビルよりも水光熱費が削減できるという直接的なメリットもある。
ただし、このような議論で注意しなければならないのは、省エネ性能の高さは不動産価値の一部にすぎないことである。究極の省エネビルは窓が小さい(いわゆるポツ窓の)ビルであり、自動ドアやエレベーター、空調のないビルといえるが、利用者であるオフィスワーカーに時代錯誤の禁欲や苦行を強いて生産性を下げるようでは本末転倒であろう。たとえば、室温のムラや稼動音の少ない空調システム、赤外線だけでなく有害な紫外線(UV)もカットする窓ガラス、タスクライトやLEDの活用で効率よく照明された落ち着いた室内、緑豊かで風が通る庭園や歩道、自転車通勤者のための駐輪場やシャワールームなど、優良なグリーンビルディングには、高い環境性能と同時に快適なオフィス空間が求められるのである。
実際、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)など、行政や専門家が行う建築物の環境性能評価手法おいても、エネルギー効率や資源は重要なカテゴリーのひとつだが、室内環境や緑も評価すべきカテゴリーである。「エコは快適である」と主張できるビルこそ、利用者であるオフィスワーカーの満足度も高く、結果としてオフィスの生産性が高まるビルであり、企業がプレミアムを支払っても借りる意味のあるグリーンビルディングといえよう。それだけに、テナントや投資家が、ビルの環境性能を客観的かつ簡易に評価できる指標の整備やラベリング制度の確立が急がれる1。
1 松村徹『投資対象としてのグリーンビルディング(環境配慮型不動産)~投資指標としてみた環境性能情報の課題』ニッセイ基礎研究所 不動産投資レポート、2009年10月16日
(2010年06月17日「研究員の眼」)
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