2024年11月26日

新NISA、積立投資と一括投資、どっちにしたら良いのか~なぜ米国株式型が強かったのか~

金融研究部 研究員 熊 紫云

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3――なぜ米国株式型が良いパフォーマンスだったのか

なぜ米国株式型が最も良いパフォーマンスだったのか、結果論になるが、米国企業が結局一番元気だったからである。

投資商品の連動指数として有名なMSCIシリーズを簡単に説明してみたい(図表4)。株式指数を構築するMSCI社は業績が優良で時価総額が大きく、将来の業績が見込める銘柄を選んでいる。2023年の米国のGDPは国別で首位にあるが、世界のGDPに占める割合は25.8%で、4分の1程度に過ぎない。一方、全世界株式型の連動指数であるMSCI ACWIは先進国23か国と新興国24か国の株式で構成されているが、そのうち米国株式が63.82%を占めている。自由で競争が厳しい米国の環境で育った米国企業は、競争に打ち勝つことで世界的にビジネスを成功させており、より収益を挙げ、業績面や将来性、時価総額において、日本企業を含めて、他の先進国や新興国の企業を圧倒していると言える。
図表4. 世界GDP・MSCI ACWI・MSCIコクサイの国別構成
ちなみに、先進国株式型の連動指数であるMSCIコクサイは日本を除く22か国の先進国株式が組み入れられており、米国株式が75.53%も占めており、残りのイギリスやフランスやカナダなどの  先進国企業のウェイトは4分の1程度に過ぎない。

2024年3月末時点、トヨタは時価総額が62兆円で日本企業では最大だが、S&P500の構成銘柄で最大のマイクロソフトの時価総額は473 兆円もあり、米国企業の規模の大きさがよく分かる(図表5)。

例えば、S&P500に組み入れられている時価総額上位企業を見てみると、マイクロソフト、アップル、エヌビディア、アルファベット(Googleの親会社)、アマゾン、メタ(旧Facebook)などは人々の生活や企業に欠かせない商品やサービスを提供し、各種インフラ、DX、人工知能、流通、自動運転等で欠かせない企業である。このように、米国企業は今後も技術革新とイノベーションを通して持続的な成長が期待できる。さらに、米国では高等教育が充実しており、世界で最も多くの外国人留学生を受け入れている等、優秀な人材を育成する環境が整っている。米国企業も優秀人材を高給で採用し、そうした人材が活躍して、米国のイノベーションに更なる力を注いでいる。

以上のような理由から、当面の間は、米国企業に代わる存在がそう簡単に現れることはないと考えている。政治や経済状況からの影響はあると思われるが、米国企業の競争力が強いという状況が今後もしばらく持続するのではないかと見ている。
図表5. S&P500とナスダック100の時価総額上位20企業(2024年3月末時点)

4――まとめ

4――まとめ

このレポートでは、10年および20年という投資期間を設定し、過去のデータを用いて試算を行い、同じ元本での積立投資と一括投資の投資結果を比較した。結果として、積立投資と一括投資とのリターンにあまり差はないが、実質的な投資金額×投資期間が大きい一括投資の方が資産形成のスピードが速く、最終時価残高が大きくなる可能性が高いことが分かった。

投資初心者は少額でも良いので、高いリターンが期待できる米国株式型等の市場インデックス型の 投資対象に無理のない範囲内で積立投資をコツコツと長期的に継続することが大切である。積極的に リスクを取ることで、資産形成が速く進むことになる。なお、株式暴落時に慌てて売ったりしない方が良い。さらに、資産形成が順調に進み、資金的に余裕が出てきたら、あまりタイミングを気にせずに一括投資すれば、将来の資産形成や資金使途についての選択肢拡大につながると思う。

いずれにせよ、投資期間は長い方が良いので、なるべく早めに時間を味方に付けることが重要である。実際に新NISA等の税制優遇制度を積極的に活用して、今すぐにでも投資をスタートしてみてはどうだろうか。
 
 

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(2024年11月26日「ニッセイ景況アンケート」)

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金融研究部   研究員

熊 紫云 (ゆう しうん)

研究・専門分野
資産運用・資産形成

経歴
  • 【職歴】
     2020年   日本生命保険相互会社入社
     2021年4月 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

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