コラム
2024年09月10日

モンティ・ホール問題とベイズ推定-追加情報に応じて取るべき行動をどう変えるか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也

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(参考) 一般化したモンティ・ホール問題の命題が成り立つことの説明

以下、命題の成立を説明していく。なお、細部の条件等での厳密さは追求せず、あくまで概要の“説明”にとどめる。その意味で、数学的な“証明”とは異なるものであることをご了承いただきたい。
 
(一般化したモンティ・ホール問題)
設定:ドアN個(うちアタリW個)、追加情報:司会者はドアn個(うちアタリw個)を開ける
事前確率 W/N → 事後確率 P
 
[命題]
(W/N + (N-n-1)×P) / (N-n) = (W-w) / (N-n)
つまり、P = (N-1-N×w/W)/ (N-1-n) × W/N
 
(説明)
解答者は、最初にドア(1)を選択するものとする。

AiやBjなどの事象の記号の意味は、本文のものと同様とする。また、括弧書きは、場合の数を表すものとする。
 
P(A1) =  … = P(AN) = W/N
P(Ai∩…∩Aj)=1/ (Ai∩…∩Ajは、W個のA*の「かつ」事象)
 
P(Bs∩…∩Bt | Ai∩…∩Aj) (Bs∩…∩Btは、n個のB*の「かつ」事象)について考えてみる。

Ai∩…∩AjのA*の中にA1が含まれている場合、A1∩Ap∩…∩Aqとなり、Ap∩…∩Aqの(W-1)個のA*の添え字と、Bs∩…∩Btのn個のB*の添え字が、ちょうどw個一致しているときに、

P(Bs∩…∩Bt | Ai∩…∩Aj)=1/{}となり、それ以外のときは0となる。
 
Ai∩…∩AjのA*の中にA1が含まれていない場合、Ai∩…∩AjのW個のA*の添え字と、Bs∩…∩Btのn個のB*の添え字が、ちょうどw個一致しているときに、

P(Bs∩…∩Bt | Ai∩…∩Aj)=1/{}となり、それ以外のときは0となる。
 
ベイズの定理を使って、P(A1| Bs∩…∩Bt)と、P(Ak| Bs∩…∩Bt) (kは1やB*の添え字以外)を計算して、その比を取りたい。
 
まず、P(A1| Bs∩…∩Bt)について。

P(A1| Bs∩…∩Bt)=∑P(A1∩Ap∩…∩Aq| Bs∩…∩Bt) (Ap∩…∩AqのA*の数は(W-1)個)のように、個の項の足し算の形に分解できる。さらにベイズの定理を用いて、次のように変形できる。



(ただし、Ap∩…∩Aq 、Au∩…∩Av 、Ai∩…∩AjのA*はA1以外。また、Ap∩…∩Aq とAu∩…∩Avは(W-1)個のA*の「かつ」事象。Ai∩…∩AjはW個のA*の「かつ」事象。)
 
このうち、P(Bs∩…∩Bt| A1∩Au∩…∩Av)の部分については、Au∩…∩Avの(W-1)個のA*の添え字と、Bs∩…∩Btのn個のB*の添え字がちょうどw個一致している項だけが残り、それ以外は0となって消える。
 
残る項は、すべて同じ値となるため、1つの項の値に項数を掛け算することで計算できる。0にならない項の数は、次のように表せる。

Bs∩…∩Btのn個のB*の添え字のうち、w個がアタリ(つまり、Au∩…∩AvのA*の添え字と一致)となる必要があり、そのような選び方の場合の数は通りある。そして、その各場合に、Au∩…∩Avの(W-1)個のA*の添え字のうちBs∩…∩BtのB*の添え字以外のものが、((W-1)-w)個ある。それらは、1以外の添え字全体から、Bs∩…∩Btのn個のB*の添え字を除いた、((N-1)-n)個の中から選ぶことになるので、選び方の場合の数は通りとなる。この2つの場合の数を掛け算することで、0にならない項数は、と計算できる。

同様に、P(Bs∩…∩Bt| Ai∩…∩Aj)の部分については、0にならない項数は、となる。
 
これらを用いることで、P(A1| Bs∩…∩Bt)は、次の通りとなる。


 
この式は、次のように計算してW/Nに等しいことが確かめられる。

次に、P(Ak| Bs∩…∩Bt)  (kは1やB*の添え字以外) について。

P(Ak| Bs∩…∩Bt)=∑P(Ak∩Ap∩…∩Aq| Bs∩…∩Bt) (Ap∩…∩AqのA*の数は(W-1)個)のように、個の項の足し算の形に分解できる。さらにベイズの定理を用いて、次のように変形できる。



(ただし、Ax∩…∩Ay 、Ag∩…∩Ah のA*はAk、A1以外。Au∩…∩Av 、Ai∩…∩AjのA*はA1以外。また、Ax∩…∩Ayは(W-2)個のA*の「かつ」事象。Ag∩…∩Ah とAu∩…∩Av は(W-1)個のA*の「かつ」事象。Ai∩…∩AjはW個のA*の「かつ」事象。)
 
このうち、P(Bs∩…∩Bt| Ak∩A1∩Ax∩…∩Ay)の部分については、Ax∩…∩Ayの(W-2)個のA*の添え字と、Bs∩…∩Btのn個のB*の添え字がちょうどw個一致している項だけが残り、それ以外は0となって消える。(その他も同様。)
 
そこで、次のように計算できる。

 
そこで、P(A1| Bs∩…∩Bt)と、P(Ak| Bs∩…∩Bt) (kは1やB*の添え字以外)の比をとる。

この2つの式の分母は同じであるから、分子どうしの比をとればよい。



このようにして、命題のPの式の中の、事前確率W/Nに掛け算される分数部分であることが示される。

(2024年09月10日「研究員の眼」)

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保険研究部   主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1992年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員

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