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健康無関心層へのアプローチ

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――健康増進を阻む要素として、「健康への無関心層」がクローズアップされている
人生100年時代を迎えつつある今、健康維持・増進が課題となっている。
国は、高齢者人口がピークを迎え、現役世代が急激に減少する2040年頃を見据えて、多様な就労・社会参加ができる環境整備を進めることを必要としている。その前提として、予防・健康づくりを強化して、健康寿命の延伸を図ることを2019年の「健康寿命延伸プラン」で掲げている1。健康寿命延伸プランでは、これまで健康増進に向けた各種取組みが届きにくかった「健康無関心層」を含めて効果的なアプローチを構築していくことが重要とされている。
これまで、国の健康増進に向けた働きかけは、国全体の健康状態の底上げを狙って、疾病リスクの有無にかかわらず、集団全体に介入して、集団全体のリスクを下げようとするもの(ポピュレーションアプローチと言われる)や、疾病リスクが高い人に向けて早期に介入しようとするもの(ハイリスクアプローチ)があった。しかし、前者では、健康意識が高い人の健康状態や健康習慣の改善は見込めるものの、疾病リスクがある人に伝わるとは限らず、むしろ健康状態の格差が拡大してしまいかねない。また、後者は、すでにリスクが顕在化した人へはアプローチできるが、将来的にリスクがある人に伝わるとは限らない。
そこで、健康無関心層へのアプローチが注目されるようになった。
1 厚生労働省「健康寿命延伸プラン(2019年5月)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000514142.pdf)。
健康無関心層と総称されるが、健康維持に向けた活動や生活の改善を行わないという点では共通するが、健康維持に向けた活動や生活の改善を行わない背景は様々で、例えば、健康診断に行かないことで、健康状態が悪化していることに気づかない人や、食生活や運動習慣の見直しを行わない人、健康状態を維持することに関心がない人、健康状態を改善することに関心があってもそのための時間や知識がない人など、様々な人がいると考えられる。健康無関心層に対して、効果的に健康政策を届けるためには、どういった人で、どういった要因が健康行動の実施を阻害しているのか知る必要がある。そこで、健康無関心層を特定するために、例えば、小澤他2は、30~60代のデータから健康無関心を「健康への意識」「健康への意欲」「健康への価値観」の3因子を定義する試みを行っている。厚生労働省では、2019年から「国民健康・栄養調査」で、運動習慣と食習慣について、改善してみようと考えているかを尋ねている3。
しかし、一般に、健康状態の悪化は、生活習慣の改善だけで解決できるものばかりではない。そこで、本稿では、健康への関心を、「自分の健康状態を把握している」ことと考えてみることにした。加齢や体質により、健康状態が芳しくなくても、自分の健康状態を把握していることで、適切な対処をとれることが重要だと考えた。使用したデータは、ニッセイ基礎研究所が2023年6月に実施した「生活に関する調査」の結果である。調査は、学生を除く全国に住む20~79歳の男女を対象とするインターネット調査で、有効回答 4,131(男性2,051、女性2,080)である。
2 小澤千枝、石川ひろの、加藤美生、福田 吉治「「健康無関心層」の把握に向けた健康関心度尺度の開発」日本健康教育学会誌29巻(2021) 3号
3 2019年調査「国民健康・栄養調査(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf)」の結果は下図のとおり。「改善することに関心がない」と「関心はあるが改善するつもりはない」は、食習慣、運動習慣について男女いずれも35~40%程度となっていた。

2――「自分の健康状態を常に把握している」は23%
(2024年03月28日「基礎研レポート」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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