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- コロナ禍における移動の現状~移動総量は最大1割減で推移。20歳代は外出のハードルが益々高く~
2022年12月27日
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3――移動手段の利用状況
次に、移動手段の利用状況について、ニッセイ基礎研究所の継続調査「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」から、年代別の結果をみていきたい。
これまでのレポートでも報告してきた通り、移動手段については、コロナ禍の全体的な傾向として、不特定多数が乗り合せる電車やバス、時間差で他の乗客と車両をシェアするタクシーなどの公共交通の利用から、自家用車や自転車などのパーソナルな移動手段へとシフトが見られる(図表7)。特に、高齢層でその傾向が強い。
ただし、過去3年間の推移を見ると、2022年9月時点では、電車やバスの利用の減少層(「減少」と「やや減少」の合計)は、1年前(2021年9月時点)と比べると、いずれの年代でも10ポイント近く縮小した点が、大きな変化だと言える。タクシーについても1年前より若干、減少層の幅が縮小傾向にある。仕事や私用などの活動再開に、定期的なワクチン接種や、基本的な感染対策の浸透を背景として、公共交通への利用控えが緩和したものとみられる。
ただし、70歳代については、電車・バスの減少層が依然約5割に上っている。これに対して、徒歩や自家用車など、パーソナルな移動手段の増加層は2~3割に限られており、外出自体の減少を示唆しているだろう。
パーソナルな移動手段の代表である自家用車については、1年前(2020年9月)の調査では、全体に比べて20歳代の増加層が多かったが、2022年9月時点では年代ごとの目だった差は見られなかった。ただし自動車の場合は、コロナ禍以降の部品調達の遅れなど、供給制約が消費者の利用の妨げになっている可能性もあるため、消費者意識として、自家用車への選好がどう変化しているかについては、引き続き動向を見ていく必要があるだろう。
これまでのレポートでも報告してきた通り、移動手段については、コロナ禍の全体的な傾向として、不特定多数が乗り合せる電車やバス、時間差で他の乗客と車両をシェアするタクシーなどの公共交通の利用から、自家用車や自転車などのパーソナルな移動手段へとシフトが見られる(図表7)。特に、高齢層でその傾向が強い。
ただし、過去3年間の推移を見ると、2022年9月時点では、電車やバスの利用の減少層(「減少」と「やや減少」の合計)は、1年前(2021年9月時点)と比べると、いずれの年代でも10ポイント近く縮小した点が、大きな変化だと言える。タクシーについても1年前より若干、減少層の幅が縮小傾向にある。仕事や私用などの活動再開に、定期的なワクチン接種や、基本的な感染対策の浸透を背景として、公共交通への利用控えが緩和したものとみられる。
ただし、70歳代については、電車・バスの減少層が依然約5割に上っている。これに対して、徒歩や自家用車など、パーソナルな移動手段の増加層は2~3割に限られており、外出自体の減少を示唆しているだろう。
パーソナルな移動手段の代表である自家用車については、1年前(2020年9月)の調査では、全体に比べて20歳代の増加層が多かったが、2022年9月時点では年代ごとの目だった差は見られなかった。ただし自動車の場合は、コロナ禍以降の部品調達の遅れなど、供給制約が消費者の利用の妨げになっている可能性もあるため、消費者意識として、自家用車への選好がどう変化しているかについては、引き続き動向を見ていく必要があるだろう。
4――まとめ
これまでみてきたことをまとめると、政府のコロナ対策が「社会経済活動との両立」に重点が移り、厳しい行動制限が行われなくなった2022年夏ごろから、マクロの移動総量は、1~2年前に比べると減少幅が縮小している。社会経済活動の回復基調に伴うものだと考えられる。しかし、依然コロナ禍が継続していることや、消費者のライフスタイルが変容したことから、コロナ前と比べると最大1割ほどの範囲でマイナスが続いている。個人単位で見ても、ほぼ毎日外出する活発な人は減り、閉じこもりが増えている。
この「マイナス1割」は、行動制限が無くても個人の判断で外出を抑制している層と、インターネットの利用等でライフスタイルが変わったために、外出する習慣(必要)が無くなった層に分けられる。言い換えれば、コロナ禍の長期化によって、閉じこもりや外出自粛などの「不活発層」と、外出せずに用事を済ませる「バーチャル活動層」が増えたと言える。長期的には、人の移動は緩やかに減少していたが、コロナ禍によって、不活発層とバーチャル活動層が増加したと言える。
また移動手段に関しては、1年前に比べればコロナ前に近づいているものの、公共交通からパーソナルな移動手段へのシフトが見られる。個人単位で見れば、移動の回数だけでなく、規模や単位が縮小し、「小さな移動」が増えている。
2で報告したように、特に20~30歳代の若い世代は近年、外出率が低下していたが、コロナ禍により、益々外出へのハードルが上がったと言える。筆者の基礎研レター「年代別に見たコロナ禍の行動・意識の特徴~不安・心理編~偏見への不安は高年齢で強い傾向。従来の消費行動への欲求は全年代に広がる~」(2020年)で報告したように、20歳代では感染不安が比較的弱いことを考えると、20歳代の外出率低下の要因は、「不活発層」よりも「バーチャル活動層」の増加によるものと推測できる。若者にとって、実際に外出して自分の目でモノを見たり、他人と交流したりすることに対し、メリットとデメリット(感染リスクや手間暇、煩わしさ)を比較する傾向、言い換えれば、人間関係や社会活動にもコストパフォーマンスを求める傾向が強まっているのではないだろうか。
このような消費者の移動の現状に対して、対面型サービス業や観光業など、人に移動を求める業態にとっては、これまで以上に、現場やその地域でしか味わえない体験や楽しさ、「移動の価値」や「移動による感動体験」を提示することが求められていると言えるだろう。また高齢者の閉じこもりについては、フレイルや要介護状態、認知症への進行が懸念されるため、地域で様々な対策が必要であるが、その点については筆者のこれまでのレポートを参照されたい3。
3 坊美生子(2022)「高齢化と移動課題(下)~打開策編~」(基礎研レポート)、坊美生子(2022)「コロナ禍における高齢者の移動の減少と健康悪化への懸念~先行研究のレビューとニッセイ基礎研究所のコロナ調査から~」(同)など。
この「マイナス1割」は、行動制限が無くても個人の判断で外出を抑制している層と、インターネットの利用等でライフスタイルが変わったために、外出する習慣(必要)が無くなった層に分けられる。言い換えれば、コロナ禍の長期化によって、閉じこもりや外出自粛などの「不活発層」と、外出せずに用事を済ませる「バーチャル活動層」が増えたと言える。長期的には、人の移動は緩やかに減少していたが、コロナ禍によって、不活発層とバーチャル活動層が増加したと言える。
また移動手段に関しては、1年前に比べればコロナ前に近づいているものの、公共交通からパーソナルな移動手段へのシフトが見られる。個人単位で見れば、移動の回数だけでなく、規模や単位が縮小し、「小さな移動」が増えている。
2で報告したように、特に20~30歳代の若い世代は近年、外出率が低下していたが、コロナ禍により、益々外出へのハードルが上がったと言える。筆者の基礎研レター「年代別に見たコロナ禍の行動・意識の特徴~不安・心理編~偏見への不安は高年齢で強い傾向。従来の消費行動への欲求は全年代に広がる~」(2020年)で報告したように、20歳代では感染不安が比較的弱いことを考えると、20歳代の外出率低下の要因は、「不活発層」よりも「バーチャル活動層」の増加によるものと推測できる。若者にとって、実際に外出して自分の目でモノを見たり、他人と交流したりすることに対し、メリットとデメリット(感染リスクや手間暇、煩わしさ)を比較する傾向、言い換えれば、人間関係や社会活動にもコストパフォーマンスを求める傾向が強まっているのではないだろうか。
このような消費者の移動の現状に対して、対面型サービス業や観光業など、人に移動を求める業態にとっては、これまで以上に、現場やその地域でしか味わえない体験や楽しさ、「移動の価値」や「移動による感動体験」を提示することが求められていると言えるだろう。また高齢者の閉じこもりについては、フレイルや要介護状態、認知症への進行が懸念されるため、地域で様々な対策が必要であるが、その点については筆者のこれまでのレポートを参照されたい3。
3 坊美生子(2022)「高齢化と移動課題(下)~打開策編~」(基礎研レポート)、坊美生子(2022)「コロナ禍における高齢者の移動の減少と健康悪化への懸念~先行研究のレビューとニッセイ基礎研究所のコロナ調査から~」(同)など。
(2022年12月27日「基礎研レポート」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1821
経歴
- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
坊 美生子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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