2025年02月12日

ホテル市況は一段と明るさを増す。東京オフィス市場は回復基調強まる-不動産クォータリー・レビュー2024年第4四半期

金融研究部 主任研究員 佐久間 誠

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3.不動産サブセクターの動向

(1) オフィス
三鬼商事によると、2024年12月の東京都心5区の空室率は4.0%(前月比▲0.2%)、平均募集賃料(月坪)は20,296円(前月比+0.3%)となり、11カ月連続で上昇した。他の主要都市の空室率は、低い順に、札幌(3.7%)、大阪(4.0%)、名古屋(4.5%)、福岡(5.6%)、仙台(5.9%)、横浜(7.3%)と、新規供給が増加した都市では空室率の上昇または高止まりが見られる(図表-9)3
図表-9 主要都市のオフィス空室率
三幸エステート公表の「オフィスレント・インデックス」によると、2024年第4四半期の東京都心部Aクラスビル賃料(月坪)は28,489円(前期比+6.3%、前年同期比+12.9%)と5四半期連続で上昇し、空室率は5.7%(前期比▲0.7%、前年同期比▲1.2%)に低下した(図表-10)。三幸エステートは、「高価格帯の新築・築浅ビルで成約が進んでいることに加え、引き続き館内増床の事例も多く、足元のオフィス需要は力強さを見せている」としている。

また、日経不動産マーケット情報(2025年2月号)によると、東京ビジネス地区のオフィス成約賃料は22エリア中10エリアで賃料の上限または下限が半年前と比べて小幅に上昇した4。緩やかな賃料上昇が、中心エリアから周辺部に広がりを見せている。

東京のオフィス市場は、回復基調が一層鮮明になっている。2025年は大量供給を控えるなか、賃料上昇が一時的に停滞するのか、それとも新規供給が新たな需要を喚起し上昇基調が継続するのか、今後の需給動向を注視する必要がある。
図表-10 東京都心部Aクラスビルの空室率と成約賃料
 
3 いずれの都市も賃料は前年比プラスとなっている。2024年12月時点の平均募集賃料は、札幌(前年同月比+5.0%)・仙台(+1.0%)・横浜(+2.3%)・名古屋(+2.1%)・大阪(+1.6%)・福岡(+2.8%)となっている。
4 「東京駅周辺」の大規模ビルの成約水準の上限は5.2万円(半年前比+0.2万円)と、直近の最高水準である5.4万円に迫る水準となっている。
(2) 賃貸マンション
東京23区のマンション賃料は、全ての住居タイプが前年比で5%を超える上昇となった。三井住友トラスト基礎研究所・アットホームによると、2024年第3四半期はシングルタイプが前年同期比+5.4%、コンパクトタイプが+5.1%、ファミリータイプが+5.9%となった(図表-11)。
図表-11 東京23区のマンション賃料
総務省によると、2024年の東京23区の転入超過数は+ 58,804人(前年同期比+9.1%)となった。都市部への人口流入が賃料上昇の追い風となっている(図表-12)。
図表-12  東京23区の転入超過数
(3) 商業施設・ホテル・物流施設
商業セクターは、インバウンド消費が堅調を維持し、施設売上が増加している。商業動態統計などによると、2024年10-12月の小売販売額(既存店、前年同期比)は百貨店が+1.9%、スーパーが+2.2%、コンビニエンスストアが+0.7%となった。12月単月では、百貨店+2.8%(2カ月連続プラス)、スーパー+3.9%(2カ月連続プラス)、コンビニ▲1.2%(13ヶ月ぶりマイナス)となっている(図表-13)。
図表-13 百貨店・スーパー・コンビニエンスストアの月次販売額(既存店、前年比)
ホテル市場は、インバウンド需要の拡大を背景に一段と明るさを増している。宿泊旅行統計調査によると、2024年10-12月累計の延べ宿泊者数は2019年同期比で+16.7%増加し、このうち日本人が+6.0%、外国人が+61.0%となった(図表-14)。また、2024年の訪日外客数は約3,687万人と、過去最高であった2019年を約500万人上回った。STR社によると、12月のホテルRevPARは2019年同月比で全国が+54%(2024年9月+28%)、東京が+67%(+33%)、大阪が+60%(+35%)となり、9月時点と比較してさらに高い伸びを示している。
図表-14 延べ宿泊者数の推移(2019年同月比)
物流賃貸市場は、首都圏では新規供給の影響を受け、空室率が高止まりしている。シービーアールイー(CBRE)によると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率(2024年12月末)は9.8%(前期比▲0.3%)と、2022年第2四半期以来約2年ぶりに低下した (図表-15)。今期の新規供給(3棟5.7万坪)は小幅にとどまったが、来期は再び増加する見込みであり、今後のリーシング動向を注視したい。また、近畿圏の空室率は3.7%(前期比▲0.3%)に低下した。2025年の新規供給は41万坪と、過去最大だった2017年を4割強上回る見通しだが、足元の内定率は70%に達しており、空室率が大きく上昇することはないとのことである。

また、一五不動産情報サービスによると、2024年10月の東京圏の募集賃料は4,780円/月坪(前期比▲0.8%)で、2四半期連続の下落となった。
図表-15 大型マルチテナント型物流施設の空室率

(2025年02月12日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   主任研究員

佐久間 誠 (さくま まこと)

研究・専門分野
不動産市場、金融市場、不動産テック

経歴
  • 【職歴】  2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行)  2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX)  2015年9月 ニッセイ基礎研究所  2019年1月 ラサール不動産投資顧問  2020年5月 ニッセイ基礎研究所  2022年7月より現職 【加入団体等】  ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター  ・日本証券アナリスト協会検定会員

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