- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 資産運用・資産形成 >
- 資産運用 >
- 新NISA、積立投資と一括投資、どっちにしたら良いのか~なぜ米国株式型が強かったのか~
2024年11月26日
2024年から、新NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」がスタートした。積立投資だけでなく、一括投資もできるなど使い勝手が良くなった新NISAで、私たちは積立投資と一括投資のどちらで老後資金等の資産形成をしていったら良いのだろう。
1――同じ元本で、積立投資と一括投資を行った場合、いくらになるのか
「国内債券型」、「外国債券型」、「日本株式型」、「全世界株式型」、「先進国株式型」、「米国株式型(S&P500)」、「米国株式型(ナスダック100)」の7つ代表的な市場インデックスに連動する商品にそれぞれ投資をした最終時価残高を確認する。また、積立投資と一括投資の特徴を明らかにするため、投資期間を10年と20年に分けて合計4パターンで検証する。
パターン(1) 投資期間10年、毎月2万円積立投資(毎月2万円×10年×12か月=240万円投資)
パターン(2) 投資期間20年、毎月1万円積立投資(毎月1万円×20年×12か月=240万円投資)
パターン(3) 投資期間10年、投資開始時一括投資(投資開始時に240万円投資)
パターン(4) 投資期間20年、投資開始時一括投資(投資開始時に240万円投資)
これら4パターンで、1989年10月末から1か月ずつ投資開始期間をずらしてシミュレーションを行い、その結果を確認する(図表1)。時価の下の( )内は元本に対する倍率である。
パターン(1) 投資期間10年、毎月2万円積立投資(毎月2万円×10年×12か月=240万円投資)
パターン(2) 投資期間20年、毎月1万円積立投資(毎月1万円×20年×12か月=240万円投資)
パターン(3) 投資期間10年、投資開始時一括投資(投資開始時に240万円投資)
パターン(4) 投資期間20年、投資開始時一括投資(投資開始時に240万円投資)
これら4パターンで、1989年10月末から1か月ずつ投資開始期間をずらしてシミュレーションを行い、その結果を確認する(図表1)。時価の下の( )内は元本に対する倍率である。
1|投資期間は長い方が良い
積立投資でも一括投資でも、投資期間が長ければ長いほど最終時価残高が大きくなる。図表1から、投資期間が10年でも20年でも、各投資対象全てで最終時価残高の平均値は投資元本を上回っているが、投資期間10年に比べて、投資期間20年の最終時価残高は元本に対する倍率が大きい。
例えば、米国株式型(S&P500)への一括投資だと、同じ投資元本240万円に対して、10年間での最終時価残高の平均値が670万円で元本の2.8倍にとどまっているが、20年間での最終時価残高の平均値は1,130万円で元本の4.7倍にもなっている。この結果から判断すると、投資期間は長い方が良い投資結果をもたらす可能性が高いと言える。
積立投資でも一括投資でも、投資期間が長ければ長いほど最終時価残高が大きくなる。図表1から、投資期間が10年でも20年でも、各投資対象全てで最終時価残高の平均値は投資元本を上回っているが、投資期間10年に比べて、投資期間20年の最終時価残高は元本に対する倍率が大きい。
例えば、米国株式型(S&P500)への一括投資だと、同じ投資元本240万円に対して、10年間での最終時価残高の平均値が670万円で元本の2.8倍にとどまっているが、20年間での最終時価残高の平均値は1,130万円で元本の4.7倍にもなっている。この結果から判断すると、投資期間は長い方が良い投資結果をもたらす可能性が高いと言える。
2|短期的な価格変動リスクが高くても、高いリターンが期待できる投資対象を選んだ方が良い
市場インデックスはある一定のルールに基づいて選択された銘柄群に投資するもので、銘柄分散されているが、株式インデックスはインカムを定期的にもらう債券インデックスよりも短期的な価格変動が大きい傾向にある。投資期間が10年と20年の場合、投資方法は積立投資でも一括投資でも、最終時価残高の平均値と最大値は、大きい方から概ね米国株式型(ナスダック100、S&P500)、先進国株式型、全世界株式型、外国債券型、国内債券型の順となっている。10年以上の長期投資なら、投資をいつ始めても、この順序はほとんど変わらないということだ。尚、日本株式型は例外なので、のちほど説明する。
具体的に平均値を見てみると、20年での一括投資(投資元本240万円)だと、米国株式型(ナスダック100)が1,392万円、米国株式型(S&P500)が1,130万円、先進国株式型が1,030万円、全世界株式型が876万円、外国債券型が649万円、日本株式型が433万円、国内債券型が393万円となっている。
10年とか20年以上の長期投資では、短期的な価格変動リスクが高くても、高いリターンが期待できる投資対象へ投資したほうが実際に高い最終時価残高を獲得する可能性が高いと言える。
尚、日本株式型(日経平均株価)は、1990年以降の「日本バブル崩壊」の長期低迷の影響を受け、試算した投資期間10年の最終時価残高の平均値は債券型とほぼ同じである。一方で、投資期間20年の場合は、2012年末からのアベノミクスによる量的・質的金融緩和政策などによって、価格上昇の恩恵を受けたケースが多くあり、外国債券型よりも最終時価残高の最大値が大きくなっている。日本株式の 値動きはアベノミクス以降に大きく変わったと見ることができる。
市場インデックスはある一定のルールに基づいて選択された銘柄群に投資するもので、銘柄分散されているが、株式インデックスはインカムを定期的にもらう債券インデックスよりも短期的な価格変動が大きい傾向にある。投資期間が10年と20年の場合、投資方法は積立投資でも一括投資でも、最終時価残高の平均値と最大値は、大きい方から概ね米国株式型(ナスダック100、S&P500)、先進国株式型、全世界株式型、外国債券型、国内債券型の順となっている。10年以上の長期投資なら、投資をいつ始めても、この順序はほとんど変わらないということだ。尚、日本株式型は例外なので、のちほど説明する。
具体的に平均値を見てみると、20年での一括投資(投資元本240万円)だと、米国株式型(ナスダック100)が1,392万円、米国株式型(S&P500)が1,130万円、先進国株式型が1,030万円、全世界株式型が876万円、外国債券型が649万円、日本株式型が433万円、国内債券型が393万円となっている。
10年とか20年以上の長期投資では、短期的な価格変動リスクが高くても、高いリターンが期待できる投資対象へ投資したほうが実際に高い最終時価残高を獲得する可能性が高いと言える。
尚、日本株式型(日経平均株価)は、1990年以降の「日本バブル崩壊」の長期低迷の影響を受け、試算した投資期間10年の最終時価残高の平均値は債券型とほぼ同じである。一方で、投資期間20年の場合は、2012年末からのアベノミクスによる量的・質的金融緩和政策などによって、価格上昇の恩恵を受けたケースが多くあり、外国債券型よりも最終時価残高の最大値が大きくなっている。日本株式の 値動きはアベノミクス以降に大きく変わったと見ることができる。
3|積立投資と一括投資の比較だと、一括投資の方が資産形成のスピードが速い
次に、積立投資と一括投資での最終時価残高の違いを確認してみよう(図表1)。
10年間投資した場合で国内債券型の最終時価残高の平均値では、積立投資だと元本に対する倍率が1.1倍、一括投資だと1.3倍に増えている一方で、米国株式型(ナスダック100)は積立投資だと2.0倍、一括投資だと3.4倍に増えている。20年間投資でも、一括投資の方が資産形成のスピードが速い。
最大値も平均値と同じ傾向にある。20年間投資した場合で国内債券型の最終時価残高の最大値では、国内債券型が積立投資だと元本に対する倍率が1.3倍、一括投資だと2.4倍に増えている一方で、米国株式型(ナスダック100)は積立投資だと7.8倍、一括投資だと14.4倍まで大きく増えている。
価格変動が大きい投資対象は、一般的に高いリターンが期待できるので、投資期間が長くなるほど、一括投資の方が積立投資より資産を形成するスピードが速くなることが分かる。
投資判断においては、試算した多くのケースを代表する最終時価残高の平均値を見れば良いのだが、極めてパフォーマンスが悪いケースである最終時価残高の最小値についても見てみよう。
米国株式型(ナスダック100)へ10年間投資した最終時価残高の最小値は、積立投資が136万円であるのに対して、一括投資が97万円となっている。この最悪のケース(2000年2月末投資開始~2010年2月末投資終了)は、投資開始時はITバブル崩壊直前、投資終了時はリーマン・ショック後の長期低迷期にあたり、回復期が訪れなかった最もタイミングが悪いケースである。
このように、10年間一括投資で最もパフォーマンスが悪いケースの場合の最終時価残高は、元本回復するまでに、S&P500は4年1か月、ナスダック100は7年7か月、日本株式は11年6か月もかかっている。最悪そのくらい待つことを覚悟する必要があるということになる。一括投資は投資開始時に 元本金額を投入し、元本の投入タイミングが分散できなくなるため、タイミングが悪い場合、一括投資は積立投資より最終時価残高が低くなる可能性がある。しかし、それは稀なケースと言える。また、投資期間が長い人や資金的に余裕がある人は、時価の回復まで待つこともできる。
次に、積立投資と一括投資での最終時価残高の違いを確認してみよう(図表1)。
10年間投資した場合で国内債券型の最終時価残高の平均値では、積立投資だと元本に対する倍率が1.1倍、一括投資だと1.3倍に増えている一方で、米国株式型(ナスダック100)は積立投資だと2.0倍、一括投資だと3.4倍に増えている。20年間投資でも、一括投資の方が資産形成のスピードが速い。
最大値も平均値と同じ傾向にある。20年間投資した場合で国内債券型の最終時価残高の最大値では、国内債券型が積立投資だと元本に対する倍率が1.3倍、一括投資だと2.4倍に増えている一方で、米国株式型(ナスダック100)は積立投資だと7.8倍、一括投資だと14.4倍まで大きく増えている。
価格変動が大きい投資対象は、一般的に高いリターンが期待できるので、投資期間が長くなるほど、一括投資の方が積立投資より資産を形成するスピードが速くなることが分かる。
投資判断においては、試算した多くのケースを代表する最終時価残高の平均値を見れば良いのだが、極めてパフォーマンスが悪いケースである最終時価残高の最小値についても見てみよう。
米国株式型(ナスダック100)へ10年間投資した最終時価残高の最小値は、積立投資が136万円であるのに対して、一括投資が97万円となっている。この最悪のケース(2000年2月末投資開始~2010年2月末投資終了)は、投資開始時はITバブル崩壊直前、投資終了時はリーマン・ショック後の長期低迷期にあたり、回復期が訪れなかった最もタイミングが悪いケースである。
このように、10年間一括投資で最もパフォーマンスが悪いケースの場合の最終時価残高は、元本回復するまでに、S&P500は4年1か月、ナスダック100は7年7か月、日本株式は11年6か月もかかっている。最悪そのくらい待つことを覚悟する必要があるということになる。一括投資は投資開始時に 元本金額を投入し、元本の投入タイミングが分散できなくなるため、タイミングが悪い場合、一括投資は積立投資より最終時価残高が低くなる可能性がある。しかし、それは稀なケースと言える。また、投資期間が長い人や資金的に余裕がある人は、時価の回復まで待つこともできる。
結論から述べると、積立投資でも一括投資でも投資対象が同じであれば、リターンは似たようなものである。積立投資か一括投資かより、投資対象の違いによるリターンの差の方が大きい。
最初に株式型の平均値に着目してみよう。投資期間にもかかわらず短期的な価格変動が大きい株式型の平均値では、積立投資は一括投資よりもリターンが高くなっている。
投資対象の価格変動が大きい場合、安値局面では積立投資は一括投資よりも同じ投資元本で、より多くの購入口数を買うことができるので、平均購入単価が低くなる。長期的に値上がりする場合、最終時価残高の平均値における利回りが高くなる。
次に株式型の最小値と最大値を見てみよう。積立投資は、実質的な投資期間が一括投資に比べ半分になる一方で、一括投資は投資開始時から期間全体で高いリターンを享受できる。高いリターンが期待できる投資対象は短期的な価格変動も大きいが、投資期間が長くなるにつれ、リターンが安定していく傾向にある。実質的な投資期間は一括投資の方が積立投資より長いので、長期の投資だと一括投資の方が積立投資よりリターンの変動が小さくなる。
10年だと投資期間が比較的短いので、積立投資と一括投資のリターンはやや不安定で、まだ一定の 傾向が見て取れないが、20年の投資期間だと、一括投資の最小値のケースでリターンが積立投資より 高く、最大値のケースでは積立投資より低くなる傾向にあることが図表2から見てわかる。
しかし、結局のところ、積立投資と一括投資のリターン、どちらが高くなるかは市況によるが、平均的なリターンに大きな違いはないと言えよう。
実のところ、積立投資か一括投資かより、投資対象の選択の方が、より重要と言える。国内債券型の年率利回りが平均で2%程度にすぎないのに対して、米国株式型(ナスダック100、S&P500)、先進国株式型、全世界株式型の年率利回りは平均で6%~13%もある。
最初に株式型の平均値に着目してみよう。投資期間にもかかわらず短期的な価格変動が大きい株式型の平均値では、積立投資は一括投資よりもリターンが高くなっている。
投資対象の価格変動が大きい場合、安値局面では積立投資は一括投資よりも同じ投資元本で、より多くの購入口数を買うことができるので、平均購入単価が低くなる。長期的に値上がりする場合、最終時価残高の平均値における利回りが高くなる。
次に株式型の最小値と最大値を見てみよう。積立投資は、実質的な投資期間が一括投資に比べ半分になる一方で、一括投資は投資開始時から期間全体で高いリターンを享受できる。高いリターンが期待できる投資対象は短期的な価格変動も大きいが、投資期間が長くなるにつれ、リターンが安定していく傾向にある。実質的な投資期間は一括投資の方が積立投資より長いので、長期の投資だと一括投資の方が積立投資よりリターンの変動が小さくなる。
10年だと投資期間が比較的短いので、積立投資と一括投資のリターンはやや不安定で、まだ一定の 傾向が見て取れないが、20年の投資期間だと、一括投資の最小値のケースでリターンが積立投資より 高く、最大値のケースでは積立投資より低くなる傾向にあることが図表2から見てわかる。
しかし、結局のところ、積立投資と一括投資のリターン、どちらが高くなるかは市況によるが、平均的なリターンに大きな違いはないと言えよう。
実のところ、積立投資か一括投資かより、投資対象の選択の方が、より重要と言える。国内債券型の年率利回りが平均で2%程度にすぎないのに対して、米国株式型(ナスダック100、S&P500)、先進国株式型、全世界株式型の年率利回りは平均で6%~13%もある。
(2024年11月26日「ニッセイ景況アンケート」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1856
経歴
- 【職歴】
2020年 日本生命保険相互会社入社
2021年4月 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
熊 紫云のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/11/26 | 新NISA、積立投資と一括投資、どっちにしたら良いのか~なぜ米国株式型が強かったのか~ | 熊 紫云 | ニッセイ景況アンケート |
2024/11/06 | 過去のデータから学ぶ長期投資 | 熊 紫云 | ニッセイ年金ストラテジー |
2024/07/19 | 長期投資におけるリターンとリスク-長期投資では年率リターンと年率リスクで判断してはいけない | 熊 紫云 | ニッセイ基礎研所報 |
2024/07/18 | 老後に資産運用を止める必要があるのか-毎月定額を引き出しつつも投資継続で経済的により豊かな老後生活ができるかも | 熊 紫云 | 基礎研レポート |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2025年01月16日
iDeCo(個人型確定拠出年金)を有効活用する方法と注意点-拠出限度額引き上げで税制優遇の恩恵も大きく -
2025年01月16日
ロシアの物価状況(24年12月)-前年比伸び率は9%台半ばまで上昇 -
2025年01月16日
若い世代が結婚・子育てに望ましいと思う制度1位は?-理想の夫婦像激変時代の人材確保対策を知る -
2025年01月16日
企業物価指数2024年12月~エネルギー価格への支援策縮小などから、国内企業物価の先行きは高止まり~ -
2025年01月15日
インド消費者物価(24年12月)~12月のCPI上昇率が2カ月連続で低下、食品インフレ和らぐ
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【新NISA、積立投資と一括投資、どっちにしたら良いのか~なぜ米国株式型が強かったのか~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
新NISA、積立投資と一括投資、どっちにしたら良いのか~なぜ米国株式型が強かったのか~のレポート Topへ