2024年10月15日

インド消費者物価(24年9月)~9月のCPI上昇率は前年同月比5.5%、9ヵ月ぶりの高水準に

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インド統計・計画実施省が10月14日に公表した消費者物価指数(以下、CPI)によると、24年9月のCPI上昇率は前年同月比5.5%と、前月の同3.7%から上昇し(図表1)、事前の市場予想1(同5.1%)を上回る結果となった。


地域別のCPI上昇率をみると、都市部が前年同月比3.1%(前月:同3.0%)、農村部が同4.2%(前月:同4.1%)となり、それぞれ小幅に上昇した。


10月のCPIの内訳をみると、主に食品の上昇が全体を押し上げた。

まず食品は前年同月比9.2%となり、前月の同5.7%から上昇した(図表2)。食品のうち、野菜(同36.0%)が大きく上昇したほか、豆類(同9.8%)や果物(同7.5%)、穀物製品(同6.8%)も高めの伸びが続いた。また食用油(同2.5%)は輸入関税引き上げの影響により増加に転じた。他方、肉・魚(同2.7%)や牛乳・乳製品(同3.0%)、加工食品(同3.6%)は落ち着いた伸びが続いており、香辛料(前年同月比▲6.1%)は引き続き減少した。

燃料・電力は前年同月比▲1.4%となり、13ヵ月連続でマイナス圏での推移となった。

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比3.5%で落ち着いた伸びが続いているが、前月から小幅に上昇した。カテゴリー別にみると、教育(同3.8%)や住宅(同2.8%)、輸送・通信(同2.8%)、衣服・靴(同2.7%)、家庭用品・サービス(同2.5%)、娯楽(同2.3%)は落ち着いた伸びが続いたものの、パーソナルケア(同9.0%)が上昇した。7月の国家予算で発表された輸入関税の引下げにより金の消費量が増加して価格が高騰したことがコアCPIを押し上げた。
(図表1)消費者物価上昇率/(図表2)食品価格指数の要因分解
インフレ率(CPI上昇率)は、今年7-8月にはインド準備銀行(RBI)の物価目標の中央値である+4%を下回って推移したが、9月は野菜と油脂が値上がりして前年同月比5.5%まで上昇した(図表3)。10月は足元の食品価格の上昇により5%台で推移するとみられるが、今年の南西モンスーンの降雨量は全国的にみると平年を+8%上回り、カリフ作の総播種面積が前年比+2.2%増加しているため、10月以降にカリフ作物が市場に出回るようになると食品インフレが落ち着いていき、インフレが再び4%台に低下するだろう。RBIは10月の金融政策委員会(MPC)で足元の食品価格が上昇しているにもかかわらず、今年度のインフレ予測を4.5%に据え置き、金融政策のスタンスを「緩和策の撤回(引き締め的)」から「中立」に変更した。今後は食品インフレの緩和を待って金融緩和策に踏み切るだろうが、12月の会合では金融政策が据え置かれることとなりそうだ。
 
インド準備銀行(RBI)が隔月で公表する家計のインフレ期待調査によると、24年9月の家計のインフレ期待2(中央値)は3ヵ月先と1 年先がそれぞれ9.2%(7月から0.2%ポイント低下)、10.0%(7月から0.1%ポイント低下)となり、それぞれ小幅に低下した(図表4)。家計のインフレ期待は今年度、食品インフレ上昇を予想する世帯の割合が緩やかに増加していたが、9月の調査では緩和した。また家計のインフレ期待は3ヵ月先が一年先を依然下回って推移しており、短期的なインフレ警戒感は和らいでいる。
(図表3)消費者物価上昇とインフレ目標/(図表4)インフレ率と家計のインフレ期待
 
1 Bloomberg集計の中央値。
2 実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年10月15日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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