2024年09月25日

中国:24年7~9月期の成長率予測-引き続き減速。追加金融緩和を発表するも、通年「+5%」の達成は困難

経済研究部 主任研究員 三浦 祐介

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(不動産市場)
不動産市場については、不況が継続している。販売動向に関して、住宅販売面積の伸びは、依然として前年同月比で2ケタの減少が続いているが、6月以降は、マイナス幅が縮小を続けている(図表-13)。住宅販売価格(70都市平均)の伸びは、22年4月以降、29カ月連続でマイナスとなっている。

供給側の動向に関して、住宅着工面積の伸びは、8月にマイナス幅が縮小した(図表-14)。住宅竣工面積の伸びは、マイナス幅が拡大している。住宅完成在庫面積は依然増加しているものの、5月をピークに増勢に歯止めがかかっており、住宅在庫買い取り支援策の効果が表れている可能性がある。また、不動産開発資金の伸びは、春先以降、徐々にマイナス幅が縮小しつつある。開発の資金繰りは依然として厳しいが、足もとでは改善が続いている。
(図表-13)住宅販売面積・価格/(図表-14)住宅供給関連指標
(財政)
財政の動向について、一般会計の主要科目の歳出の伸びは年初来、低下傾向にあり、政府消費による下支えが弱まっていることを示唆している(図表-15)。国債・地方専項債の発行ペースに関して、年初来累計発行額の推移をみると、8月になり23年を上回る水準となった(図表-16)。24年に入り、国債の発行が先行した一方、地方専項債の発行が遅れていたが、徐々にペースを取り戻しつつある。4月に開催された中央政治局会議で発表された発行ペース加速の方針を受けた動きとみられる。
(図表-15)財政支出/(図表-16)国債・地方専項債による資金調達額

3.物価・金融

3.物価・金融

(物価)
物価の動向について、消費者物価指数(CPI)の推移をみると、低調が続いている(図表-17)。7月から8月にかけて小幅に上昇しているが、豚肉価格や生鮮野菜等の食品価格上昇によるところが大きい。食品・エネルギーを除くコアCPIは、低下傾向にある。工業生産者出荷価格(PPI)の伸びは、22年10月以降、23カ月連続でマイナスとなっている(図表-18)。24年初来、マイナス幅が縮小傾向にあったが、前年要因がはく落したこともあり、8月にはマイナス幅が再び拡大した。
(図表-17)CPI/(図表-18)PPI
(金融)
金融の動向について、M2は、7月から8月にかけて横ばいで推移した一方、社会融資総量(政府債券を除く)は、8月も減速を続けた(図表-19)。金融政策に関しては、8月に中期の政策金利(MLF)が引き下げられた(図表-20)。一方、貸出金利のベンチマークとなるLPRは、1年物、5年物とも7月から据え置きとされた。

なお、中国人民銀行の潘功勝総裁は、9/24の記者会見において、今後、預金準備率と短期の政策金利(リバースレポ・オペ、7日)などを引き下げる旨、事前にアナウンスした。当面の引き下げ幅は、それぞれ0.5%pt、0.2%ptの引き下げとされた。コロナ禍以来の下げ幅であり、金融による下支え強化の姿勢が示されたといえよう。米国をはじめ主要国で利下げが相次ぐなか、足もとでは人民元安圧力が解消しており、金融緩和を実施しやすい環境になったことが背景にある。記者会見では、オーソドックスな金融緩和のほか、不動産市場や株式市場に対する金融支援を強化する考えも示された。もっとも、不動産市場対策に関しては、依然として小出しにとどまっている印象であり、市況を顕著に改善させるほどの効果はないとみている。
(図表-19)社会融資総量/(図表-20)政策金利・LPR
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年09月25日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   主任研究員

三浦 祐介 (みうら ゆうすけ)

研究・専門分野
中国経済

経歴
  • 【職歴】
     ・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
     ・2009年:同 アジア調査部中国室
     (2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
     ・2020年:同 人事部
     ・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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