2024年06月26日

中国経済:景気指標の総点検(2024年夏季号)

経済研究部 主任研究員 三浦 祐介

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4.その他の4指標と景気の総括

以上で概観した供給面3指標と需要面3指標に、電力消費量、道路貨物輸送量、工業生産者出荷価格、通貨供給量(M2)の4指標を加えた10指標に関して、それぞれ3ヵ月前と比べて上向きであれば“○”、下向きであれば“✖”、横ばいなら“-”として一覧表にしたものが図表-13である。なお、3ヵ月前比とした理由はGDP成長率(前期比)を予測するためだ。その四半期に“○”が多ければ景気が加速したことを、“✖”が多ければ景気が減速したことをそれぞれ示唆している。
(図表-13)景気評価総括表(○×表、3ヵ月前と対比)
まず評価点(〇の数)を見ると、24年1~3月期は、1月が5点、2月が3点、3月が5点と、23年末からやや上向いており、実質GDP成長率(前期比)は加速した。これに対して、24年4~6月期については、4・5月がそれぞれ3点、6点と、分岐点(5点)前後で推移している。実質GDP成長率(前期比)は横ばい推移か減速となることが予想される。

需要面に焦点を当てると、輸出については、23年9月以降、24年3月・4月を除き“〇”が続いており、概ね改善傾向にある。他方、小売売上高および固定資産投資は、23年に入ってから “✖” と“〇”が繰り返されており、内需の改善は一進一退の状況にあることが示唆される。

供給面を見ると、鉱工業生産は、23年10月以降、24年2月・3月の除き概ね“〇”が続いている。また、製造業PMIは、23年11月以降、24年2月にかけて “✖”が続いてきたが、24年3月以降は“〇”が続いており、その持続性が注目される。非製造業PMIについては、24年に入り、4カ月連続で“〇”が続いてきたが、5月に“✖”へと転じており、先行きがやや懸念される。

その他の指標を見ると、電力消費量(図表-14)は、直近3カ月連続で“✖”となっているほか、道路貨物輸送量(図表-15)も24年に入り “✖”が続いている。工業生産者出荷価格(PPI)については、24年に入り、“〇”が目立つようになってきた。通貨供給量(M2、図表-16)は、23年4月以降、24年5月にかけて“✖”が続いている。総じて、景気は依然として力強さを欠く状態が続いていることを示唆している。

最後に、鉱工業生産、サービス業生産、建築業PMIの3つを説明変数として、GDP成長率(前年比)を月次で推計した「景気インデックス」を確認しておこう。推計結果は、24年4~5月期で前年同期比+4.6%である(図表-17)。24年1~3月期の実質GDP成長率は前年同期比+5.3%であり、そこから減速となる。24年7月15日に公表される24年4~6月期の実質GDP成長率(前年同期比)は、6月の景気次第で振れるとは言え、同+4%台後半まで低下する可能性が高い。なお、現在の市場コンセンサスは+5.3%前後となっている。
(図表-14)電力消費量/(図表-15)道路貨物輸送量
(図表-16)M2・社会融資総量/(図表-17)景気インデックス(月次GDP)
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年06月26日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   主任研究員

三浦 祐介 (みうら ゆうすけ)

研究・専門分野
中国経済

経歴
  • 【職歴】
     ・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
     ・2009年:同 アジア調査部中国室
     (2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
     ・2020年:同 人事部
     ・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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