2024年03月01日

宿泊旅行統計調査2024年1月~延べ宿泊者数は5ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回る~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1.外国人延べ宿泊者数は7ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回る

観光庁が2月29日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2024年1月の延べ宿泊者数は4,788万人泊(12月:5,074万人泊)となった。前年同月比は21.2%(12月:同7.8%)、新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、12.2%(12月:同7.6%)と、5ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。

2024年1月の日本人延べ宿泊者数は3,601万人泊(12月:3,843万人泊)となり、前年同月比は7.7%(12月:▲6.7%)と4ヵ月ぶりにプラスとなり、2019年同月比は7.6%(12月:同1.3%)とコロナ禍前の水準を4ヵ月連続で上回った。

2024年1月1日に令和6年能登半島地震が発生し、石川県を中心に北陸地方全体に大きな被害がもたらされた。これにより被災地への旅行の取りやめが相次いだが、全体の延べ宿泊者数をみる限り、宿泊者数の落ち込みは見られなかった。

2023年の延べ宿泊者数全体に占める割合は富山県が0.7%、新潟県が1.9%、福井県が0.6%、石川県が1.5%となっている。2024年1月の地震発生以降、北陸4県の延べ宿泊者数は減少していることが予想される。2024年1月の都道府県別の延べ宿泊者数の実績は、2024年2月の延べ宿泊者数の速報公表時に併せて公表されるので、注目したい。

2024年1月の外国人延べ宿泊者数は1,187万人泊(12月:1,230万人泊)となり、2019年同月比は28.9%(12月:同34.0%)と伸び率は前月から縮小したが、7ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。
延べ宿泊者数の推移/客室稼働率の推移
2024年1月の客室稼働率は全体で51.7%(12月:同57.5%)、2019年同月差▲2.3%(12月:同▲1.2%)と、コロナ禍前の水準を下回っている。

宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は29.7%、2019年同月差▲4.2%(12月:同0.0%)、リゾートホテルは47.0%、2019年同月差▲4.6%(12月:同▲1.9%)、ビジネスホテルは63.1%、2019年同月差▲3.2%(12月:同▲1.9%)、シティホテルは63.4%、2019年同月差▲5.7%(12月:同▲4.7%)、簡易宿所は20.6%、2019年同月差▲4.9%(12月:同▲7.6%)であった。2019年同月差は旅館で4ヵ月ぶりのマイナスとなり、それ以外のタイプの宿泊施設でもマイナス圏での推移が続いた。

2.日本人延べ宿泊者数はコロナ禍前と同程度で推移を続ける見通し

2022年10月に開始された全国旅行支援はすでに終了している。現時点(2月29日)で2024年3月に旅行需要喚起策を実施する自治体は三重県(平日ゆったりみえ旅キャンペーン1)のみとなった。加えて、2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震の被災地支援のため北陸応援割が3月から開始される。対象となるのは富山県、新潟県、福井県、石川県の4県で、1泊の宿泊旅行代金の50%が最大2万円2まで補助される。

日本人延べ宿泊者数はコロナ禍前の水準を上回って推移しているものの、全国旅行支援の需要喚起効果が剥落したことで、前年比でみると2023年10月以降はマイナスでの推移が続いていた。2024年1月は4ヵ月ぶりにプラスとなったが、物価高による実質所得の低下とホテル代の高騰を背景に、日本人旅行者数は停滞が続くだろう。日本人延べ宿泊者数の先行きは、コロナ禍前と同程度で推移を続ける公算が大きい。
北陸応援割の概要/日本人延べ宿泊者数の推移(前年比)
 
1 平日宿泊する人に対してクーポンを配布。3月10日まで。クーポン金額は1泊あたりの金額に応じて2000~4000円
2 宿泊数や宿泊県数によって上限金額が変わる

3.外国人延べ宿泊者数は好調が続く見通し

国籍別外国人延べ宿泊者数 外国人宿泊者数のうち、国別が分かる従業者数10人以上の施設でみると、2024年1月の中国人延べ宿泊者数は2019年比▲47.3%(12月:同▲41.2%)と、韓国(同308.43%)、香港(同▲5.1%)、台湾(同29.7%)、アメリカ(同42.5%)など他の国・地域と比較すると回復が遅い状況が続いている。中国では、日中間の航空便数の回復が遅れていることや不動産市場の低迷による景気下押しの影響などから回復スピードが鈍いままとなっている。

中国人宿泊者数の回復にはまだ時間がかかる公算が大きいが、コロナ禍前に比べて為替レートが円安の水準にあることが追い風となって、外国人延べ宿泊者数は増加を続けるだろう。
 
3 2019年7~12月は日韓関係悪化のため訪日韓国人が大幅に減少していた
 
 

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

(2024年03月01日「経済・金融フラッシュ」)

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