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- 2023・2024年度経済見通し(23年8月)
2023年08月16日
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1. 2023年4-6月期は前期比年率6.0%のプラス成長
2023年4-6月期の実質GDPは、前期比1.5%(前期比年率6.0%)と3四半期連続のプラス成長となった。
輸出が前期比3.2%の増加となる一方、輸入が同▲4.3%の減少となったことから、外需が前期比・寄与度1.8%(年率7.2%)と成長率を大きく押し上げた。輸出は、供給制約緩和の影響で自動車を中心に財が前期比3.3%の増加となったことに加え、水際対策の緩和・撤廃に伴うインバウンド需要の回復を主因としてサービスも同2.9%の増加となった。
一方、物価高の影響などから、民間消費が前期比▲0.5%と3四半期ぶりに減少し、設備投資が同0.0%の横ばいにとどまったことなどから、国内需要は前期比▲0.3%と2四半ぶりの減少となった。
2023年4-6月期は外需の上振れを主因として予想を大きく上回る高成長となった。ただし、輸出の増加は1-3月期の反動による部分が大きく、輸入の大幅減少は内需の低迷を反映したものと捉えることができる。成長率が示すほど景気の実勢は強くない。
輸出が前期比3.2%の増加となる一方、輸入が同▲4.3%の減少となったことから、外需が前期比・寄与度1.8%(年率7.2%)と成長率を大きく押し上げた。輸出は、供給制約緩和の影響で自動車を中心に財が前期比3.3%の増加となったことに加え、水際対策の緩和・撤廃に伴うインバウンド需要の回復を主因としてサービスも同2.9%の増加となった。
一方、物価高の影響などから、民間消費が前期比▲0.5%と3四半期ぶりに減少し、設備投資が同0.0%の横ばいにとどまったことなどから、国内需要は前期比▲0.3%と2四半ぶりの減少となった。
2023年4-6月期は外需の上振れを主因として予想を大きく上回る高成長となった。ただし、輸出の増加は1-3月期の反動による部分が大きく、輸入の大幅減少は内需の低迷を反映したものと捉えることができる。成長率が示すほど景気の実勢は強くない。

2023年4-6月期の実質GDPの水準はコロナ禍前のピーク(2019年7-9月期)を0.6%上回った。また、名目GDPは2022年10-12月期(前期比年率4.9%)、2023年1-3月期(同9.5%)、4-6月期(同12.0%)と3四半期連続で実質の伸びを大きく上回り、2023年4-6月期はコロナ禍前のピーク(2019年7-9月期)を5.2%上回った。
(輸出が景気の牽引役となることは期待できず)
2023年4-6月期は輸出が高い伸びとなり、成長率の押し上げ要因となったが、輸出回復の持続性には疑問が残る。
日本銀行の実質輸出は2023年4-6月期に前期比2.7%と3四半期ぶりの増加となった。財別には、供給制約緩和の影響で自動車関連が高い伸びとなったが、世界的な半導体関連需要の低迷を背景に情報関連が減少を続けているほか、資本財、中間財も弱めの動きとなっている。世界の企業景況感を示すグローバルPMIは、非製造業は中立水準の50を上回っているが、ペントアップ需要の一巡などから低下しており、製造業は2022年9月以降、50を下回る水準で推移している。日本の輸出への影響が大きい世界の製造業循環は下降局面が続いている。
2023年4-6月期は輸出が高い伸びとなり、成長率の押し上げ要因となったが、輸出回復の持続性には疑問が残る。
日本銀行の実質輸出は2023年4-6月期に前期比2.7%と3四半期ぶりの増加となった。財別には、供給制約緩和の影響で自動車関連が高い伸びとなったが、世界的な半導体関連需要の低迷を背景に情報関連が減少を続けているほか、資本財、中間財も弱めの動きとなっている。世界の企業景況感を示すグローバルPMIは、非製造業は中立水準の50を上回っているが、ペントアップ需要の一巡などから低下しており、製造業は2022年9月以降、50を下回る水準で推移している。日本の輸出への影響が大きい世界の製造業循環は下降局面が続いている。
当研究所では、米国は累積的な金融引き締めの影響で、2023年10-12月期が前期比年率0.3%、2024年1-3月期が同▲0.4%とほぼゼロ成長まで減速し、ユーロ圏はマイナス成長とはならないものの、2023年後半から2024年初めにかけては年率ゼロ%台の低成長が続くと予想している。また、中国はゼロコロナ政策の終了を受けて、2023年の実質GDP成長率は2022年の3.0%から5%台へと高まるが、2024年には4%台へと低下するだろう。
また、インバウンド需要はコロナ禍でほぼ消失した状態が続いていたが、水際対策が2022年10月から段階的に緩和され、2023年4月末に撤廃されたことを受けて、急回復が続いている。2023年6月の訪日外客数は207万3300人、2019年同月比▲28.0%、当研究所による季節調整値では、コロナ禍前(2019年平均)の9割強の水準まで回復した。
コロナ禍前には全体の約3割を占めていた中国からの訪日客数は2019年同月比24%の低水準にとどまっている。しかし、8/10に中国政府が日本への団体旅行を解禁したため、今後は中国からの訪日客数が急増する可能性が高い。
インバウンド需要がコロナ禍前の水準に戻るなかで、今後より深刻となる恐れがあるのが人手や宿泊施設の不足など供給体制の問題だ。経済産業省の「第3次産業活動指数」によれば、宿泊業の活動指数は緊急事態宣言が最初に発令された2020年4-6月期にコロナ禍前の2割程度の水準まで急速に落ち込んだ後、徐々に持ち直し、足もとではコロナ禍前の水準を上回っている。一方、宿泊業の就業者数は、需要の落ち込みを受けて大幅に減少した後、横ばい圏の動きが続いており、2023年4-6月期時点でも2019年比で8割程度の水準にとどまっている。供給制約によって需要の回復が阻害されるリスクがあることに加え、すでに上昇が顕著となっている宿泊料のさらなる高騰につながる可能性もある。
コロナ禍前には全体の約3割を占めていた中国からの訪日客数は2019年同月比24%の低水準にとどまっている。しかし、8/10に中国政府が日本への団体旅行を解禁したため、今後は中国からの訪日客数が急増する可能性が高い。
インバウンド需要がコロナ禍前の水準に戻るなかで、今後より深刻となる恐れがあるのが人手や宿泊施設の不足など供給体制の問題だ。経済産業省の「第3次産業活動指数」によれば、宿泊業の活動指数は緊急事態宣言が最初に発令された2020年4-6月期にコロナ禍前の2割程度の水準まで急速に落ち込んだ後、徐々に持ち直し、足もとではコロナ禍前の水準を上回っている。一方、宿泊業の就業者数は、需要の落ち込みを受けて大幅に減少した後、横ばい圏の動きが続いており、2023年4-6月期時点でも2019年比で8割程度の水準にとどまっている。供給制約によって需要の回復が阻害されるリスクがあることに加え、すでに上昇が顕著となっている宿泊料のさらなる高騰につながる可能性もある。
訪日外客数以上に回復が顕著なのが、訪日外国人の旅行消費額だ。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によれば、2023年4-6月期の訪日外国人旅行消費額は2019年同期比▲4.9%の1兆2052億円となった。同時期の訪日外国人旅行者数の同▲26.7%に比べて減少幅が小さいのは、一人当たり消費額が20.5万円と2019年同期比32.0%の大幅増加となっているためだ。これはコロナ禍で一時中止されていた訪日外国人消費動向調査の調査・公表が再開された2021年10-12月期から続く傾向である。
一人当たり消費額が膨らんでいる理由としては、為替レートがコロナ禍前に比べて円安水準になっていること、滞在日数が比較的短い観光客が激減した結果、滞在日数が長いビジネス等の割合が上昇したことが挙げられる。このうち、平均滞在日数については、観光客の急増によって短くなることが想定されるが、円安による消費額の押し上げ効果は今後も残る。
水際対策の終了に伴い、先行きも訪日外客数の回復が続き、2023年中には瞬間風速(月次の年率換算値)でコロナ禍前の水準(2019年の3188万人)を突破する可能性が高い。訪日外客数が年間で過去最高を更新するのは2024年になると予想するが、円安による一人当たり消費額の押し上げが続くため、訪日外国人旅行消費額を5兆円にするという政府目標は2023年に達成されるだろう。
一人当たり消費額が膨らんでいる理由としては、為替レートがコロナ禍前に比べて円安水準になっていること、滞在日数が比較的短い観光客が激減した結果、滞在日数が長いビジネス等の割合が上昇したことが挙げられる。このうち、平均滞在日数については、観光客の急増によって短くなることが想定されるが、円安による消費額の押し上げ効果は今後も残る。
水際対策の終了に伴い、先行きも訪日外客数の回復が続き、2023年中には瞬間風速(月次の年率換算値)でコロナ禍前の水準(2019年の3188万人)を突破する可能性が高い。訪日外客数が年間で過去最高を更新するのは2024年になると予想するが、円安による一人当たり消費額の押し上げが続くため、訪日外国人旅行消費額を5兆円にするという政府目標は2023年に達成されるだろう。
(春闘賃上げ率は30年ぶりの高水準)
厚生労働省が8/4に公表した「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」によれば、2023 年の賃上げ率は3.60%となり2022年の2.20%を1.40ポイント上回った。また、連合が集計している定期昇給分を除くベースアップに相当する「賃上げ分」は、2.12%(2022年:0.63%)となった。
厚生労働省が8/4に公表した「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」によれば、2023 年の賃上げ率は3.60%となり2022年の2.20%を1.40ポイント上回った。また、連合が集計している定期昇給分を除くベースアップに相当する「賃上げ分」は、2.12%(2022年:0.63%)となった。

春闘の結果との連動性が高い一般労働者の所定内給与は、2023年1-3月期の前年比1.3%から4-6月期には同1.7%へと伸びを高めた。2023年春闘でベースアップが前年の0.5%程度から2%程度へと大きく高まったことからすれば改善幅が小さいが、これは改定後の賃金が初めて支給される月が年度替わりの4月ではなく、5月以降となる企業も多いためである。
一般労働者の所定内給与は、2023年7-9月期には2%台まで伸びが高まる可能性が高い。また、企業の人手不足感の高まりを反映し、パートタイム労働者の時間当たり所定内給与は高い伸びが続くことが見込まれる。ただし、パートタイム労働者比率が上昇していることが引き続き労働者全体の平均賃金の押し下げ要因となるだろう。
所定外給与は経済の正常化が進展することを背景に増加が続くことが見込まれる。一方、特別給与は2022年には前年比4.6%(このうち、賞与として支給された給与は2022年夏が前年比2.4%、2022年末が同3.2%)の高い伸びとなったが、このところ企業収益の改善が足踏みとなっていることを反映し、2023年には伸びが鈍化するだろう。所定内給与に所定外給与、特別給与を合わせた現金給与総額は2023年度から2024年度にかけて2%台の伸びが続くことが予想される。
実質賃金は消費者物価の上昇ペース加速を主因として2022年4月以降、前年比でマイナスが続いている。今後、名目賃金の伸びは高まるものの、消費者物価上昇率が高止まりするため、実質賃金の下落はしばらく続く可能性が高い。実質賃金上昇率がプラスに転じるのは、消費者物価上昇率の鈍化が見込まれる2024年入り後と予想する。
実質賃金は消費者物価の上昇ペース加速を主因として2022年4月以降、前年比でマイナスが続いている。今後、名目賃金の伸びは高まるものの、消費者物価上昇率が高止まりするため、実質賃金の下落はしばらく続く可能性が高い。実質賃金上昇率がプラスに転じるのは、消費者物価上昇率の鈍化が見込まれる2024年入り後と予想する。
今回の見通しでは、2024年の春闘賃上げ率は3.40%と2023年に比べれば伸びは若干鈍化するが、3%台を確保することを想定している。輸出の低迷を受けて製造業を中心に企業収益の伸びが低下するものの、消費者物価上昇率の高止まりが賃上げ率の底上げに寄与するだろう。
2022年度の名目雇用者報酬は前年比2.0%と2年連続の増加となったが、消費者物価の上昇ペースが加速したことから、実質雇用者報酬は同▲1.7%と減少に転じた。2023年度は物価上昇率の高止まりが続くものの、名目雇用者報酬が前年比3.0%の高い伸びとなることから、実質雇用者報酬は前年比0.1%と小幅ながら増加に転じるだろう。2024年度は、名目雇用者報酬が前年比3.2%と高い伸びが続くもとで、物価の上昇ペースが鈍化することから、実質雇用者報酬は同1.6%と伸びを高めることが予想される。
1 1965年の調査開始以降では、第一次石油危機のインフレ期にあたる1974年に前年差12.8%(1973年:20.1%→1974年:32.9%)が最高となっている。
2022年度の名目雇用者報酬は前年比2.0%と2年連続の増加となったが、消費者物価の上昇ペースが加速したことから、実質雇用者報酬は同▲1.7%と減少に転じた。2023年度は物価上昇率の高止まりが続くものの、名目雇用者報酬が前年比3.0%の高い伸びとなることから、実質雇用者報酬は前年比0.1%と小幅ながら増加に転じるだろう。2024年度は、名目雇用者報酬が前年比3.2%と高い伸びが続くもとで、物価の上昇ペースが鈍化することから、実質雇用者報酬は同1.6%と伸びを高めることが予想される。
1 1965年の調査開始以降では、第一次石油危機のインフレ期にあたる1974年に前年差12.8%(1973年:20.1%→1974年:32.9%)が最高となっている。
(2023年08月16日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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