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マイナンバーカード取得状況と使途・今後利用したいサービス
保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
1――はじめに
ニッセイ基礎研究所が2022年9月末に行ったインターネット調査2では、マイナンバーカードを取得する予定がない人は18.7%にのぼった。また、取得者のこれまでの利用経験では「マイナポイントの取得」がもっとも高く、既に取得していてもマイナポイントの取得を含めてまだ何にも使ったことがない人が18.9%いた。そのうち、67.4%が今後も使う予定がないと回答しており、マイナンバーカードの利用イメージを持っていない人もいるようだ。
本稿では、上記調査の結果からマイナンバーカード取得者の属性と、取得時期やこれまでにマイナンバーカードを使って利用したサービスや場面を紹介し、既にカードを取得している人の特徴をみる。さらに、今後申請予定の人を含めて、利用したいサービスや場面をみることで、今後の普及を展望したい。
なお、本稿で使用する調査は、2022年9月27日~10月3日に実施したインターネット調査である。マイナンバーカードを保険証として医療機関を受診する場合に初診料・再診料の負担が重くなる「逆インセンティブ」が10月以降解消されることが報道された後、現在の保険証廃止の議論が出る前に行ったものである。
1 2022年10月16日 日本経済新聞「マイナカード交付5割超す 22年度末目標達成遠く」等。
2 ニッセイ基礎研究所「第10回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」。全国の20~74歳の男女を対象に2022年9月27日~10月3日に実施。有効回答数2,557。詳細はニッセイ基礎研究所「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=64814?site=nli)」をご参照ください。
2――マイナンバーカード取得状況
4 例えば、同調査で「オンライン化やキャッシュレス化が進むことで様々なサービスが利用しにくくなる」に対して、「あまり不安ではない」または「全く不安ではない」と回答した人の取得率は72.3%と対象者全体を上回る。
3――取得率と、これまでにカードを使用したサービスや場面
性別、年齢別、および職業別の取得率、および取得者の取得時期は図表3のとおりだった。
性別にみると、取得率に大きな差はないが、男性の取得時期は「2019年以前」が高く、早い時期に取得した人が多かった。女性は「現在申請中・今後申請予定」が高い。年齢別にみると、年齢が高いほど取得率が高いほか、「2019年以前」が高く、早い時期に取得していた。また、「今後申請する予定はない」は、年齢が低いほど高い傾向があり、49歳以下では2割を超えていた。職業別にみると、取得率は公務員が76.8%と高かった。「2019年以前」が高かったのは自営業・自由業で、37.1%にのぼった。世帯年収別にみると、取得率は800万円以上で高かった。取得時期は800万円以上と400万円未満で「2019年以前」が高く、取得時期が早かった。400~800万円未満は、「2020~2021年」と「現在申請中・今後申請予定」が全体と比べて高かった。
次に、既にカードを取得している1765人(全体の69.0%)に対して、これまでにマイナンバーカードを使って利用したサービスや場面を尋ねたところ、全体で高い順に「マイナポイントの取得」で61.0%、次いで「身分証明書として提示(34.6%)」「行政手続き・各種証明書の発行(31.0%)」「マイナポータルを使ったサービス5(16.7%)」だった(図表4)。「健康保険証として医療機関や薬局で使用」は5.4%にとどまった。一方、「いずれもなし」も18.9%を占めた。
以下、比較的利用経験があった項目について全体との差をみる。まず、性別にみると、男性は「マイナポータルを使ったサービス」が高かった。マイナポータルを使ったサービスの中では、「年末調整や確定申告」や「行政からのお知らせの閲覧」を利用している割合が高かった。女性は、「身分証明書として提示」が高かった。年齢別にみると、20~34歳では「身分証明書として提示」のほか、マイナポータルを使ったサービスのうち「行政からのお知らせの閲覧」等、および「健康保険証として医療機関や薬局で使用」が高かった。50~64歳では「マイナポイントの取得」が高かった。「マイナポイントの取得」は65~74歳でも比較的高く、中高年で高い傾向がみられた。また、若年ほど「いずれもなし」が高く、利用した経験が低かった。職業別にみると、自営業・自由業で「行政手続き・各種証明書の発行」や「マイナポータルを使ったサービス」、特に「年末調整や確定申告」が高く、無職・専業主婦(夫)で「マイナポイントの取得」が高かった。また、公務員では「いずれもなし」が高かった。世帯年収別にみると、400万円未満で「身分証明書として提示」が高く、400万円以上で「行政手続き・各種証明書の発行」が高かった。400~800万円で「健康保険証として医療機関や薬局で使用」、800万円以上で「マイナポータルを使ったサービス」、特に「年末調整や確定申告」も、それぞれ高かった。年収が高いほど「いずれもなし」が低く、何らかのサービスを利用している傾向があった。
5 「年末調整や確定申告」「行政からのお知らせの閲覧」「受診歴、予防接種歴、健康診断結果の閲覧」「年金の相談や照会」「児童手当や保育所入所の申請」「障害福祉サービス、介護サービス利用の申請」のいずれかを使っている場合とした。
6 現在の暮らし向き(経済状況)について、「ゆとりがある」または「ややゆとりがある」と回答した場合を「ゆとりがある計(全体の25.7%)」、「あまりゆとりがない」または「ゆとりがない」と回答した場合を「ゆとりがない計(全体の43.5%)」とした。
7 現在、「心疾患・脳血管疾患・糖尿病・高血圧・呼吸器疾患などの持病がある」または「免疫系の持病(治療中の悪性腫瘍を含む)がある、または、免疫の機能を低下させる治療(ステロイドなど)を受けている」または「上記以外の持病がある」と回答した場合を「持病あり(全体の19.2%)」、「妊娠中である・授乳中である」と回答した場合を「妊娠中・授乳中(全体の1.4%)」、「これまで食品や薬物にアレルギー反応を起こしたことがある」と回答した場合を「アレルギーあり(全体の4.2%)」、これらいずれもあてはまらない場合を「あてはまるものはない(全体の40.9%)」とした。
8 「オンライン化やキャッシュレス化が進むことで様々なサービスが利用しにくくなる」について、「非常に不安」または「やや不安」と回答した場合を「不安あり計(全体の17.4%)」、「あまり不安ではない」または「全く不安ではない」と回答した場合を「不安なし計(全体の28.0%)」とした。
マイナンバーカード取得率や取得時期と、取得者がこれまでに使用したサービスや場面をあわせてみると、マイナポイント事業が始まる前(2019年以前)に取得していた人は、身分証明書として、あるいは行政手続き、年末調整や確定申告等に利用していた。高年齢者や自営業・自由業者が多いのはこういった行政手続きを自分で行う必要があるからだと考えられる。また、マイナポイントは、ポイント事業が始まった2020年ごろに取得した人で特に多い。それ以外のサービスや場面では、取得時期によらず、あまり利用されていなかった。公務員は、職場を通じてカード取得を促進していたことから取得している人が多い可能性があ9。
マイナポイントは、マイナンバーカード取得者の61.0%がもらっており、マイナンバーカード普及促進にも効果があったとされる10が、中高年層、無職・専業主婦(夫)、暮らし向きにゆとりがある人、オンライン化やキャッシュレス化が進むことで様々なサービスが利用しにくくなることへの不安がない人で特に取得している人が多く、受け取った人には偏りがあるようだ。
9 2019年8月20日 東京新聞「全公務員、マイナンバーカード 年度内取得 事実上強制」等
10 清水仁志「マイナポイント等がマイナンバーカード取得に与えた効果と、普及に向けた課題」ニッセイ基礎研究所 基礎研レター(2021年5月7日)
(2022年11月16日「基礎研レポート」)
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2003年 ニッセイ基礎研究所入社
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